ガバナンス

リスク管理態勢

リスク管理に関する基本的な考え方

銀行は、日常的に、信用リスクや市場リスクといった様々なリスクにさらされております。また、こうしたリスクは、規制緩和の進展や業務の高度化に伴い、さらに多様化、複雑化しております。このため、リスクをいかに適切に管理していくかが、銀行経営における重要な課題となっております。
一方、銀行にとって、リスクは収益の源泉にほかなりません。相応のリスクを取ってこそ、適切な収益を上げることが可能となります。リスクと収益の間には、そのような関係があります。
したがって、銀行は適切な収益目標を定め、そのために発生すると思われるリスクを想定し、適切な管理を行いながら、リスクを取っていくことが必要になります。
こうした中、当行では、リスク管理を経営の最重要課題として位置づけ、期毎に取締役会においてリスク管理計画を定め、より一層のリスク管理態勢の強化とリスク管理水準の向上に全力で取り組んでおります。

リスク管理態勢の整備の状況

当行のリスク管理態勢は、大きく次の4つに分けられます。①コンプライアンス会議のもとにおける法令等遵守管理、②ALM委員会における収益の源泉となるリスクの管理、③信用リスク管理委員会における信用リスクに重点を絞ったリスクの管理、④オペレーショナル・リスク管理委員会における事務リスク、システムリスク等の極小化すべきオペレーショナル・リスクの管理であります。
ALM委員会では、市場リスクや信用リスクの計量化により当行のリスク量を把握し、最適な運用・調達構造の実現と、中長期的な安定収益の確保を目指しております。
また、信用リスク管理委員会では、信用リスク管理、内部格付制度に係る制度設計および検証、バーゼル規制に係る課題対応に取り組んでおります。
一方、オペレーショナル・リスク管理委員会では、オペレーショナル・リスクの実態を特定、評価、モニタリングの上、重要課題について組織横断的に対応を策定する等、オペレーショナル・リスク管理の高度化に取り組んでおります。組織的対応では、オペレーショナル・リスクである事務リスク、システムリスク、法務リスク、人的リスク、有形資産リスクについて、各リスクの主管部署を定め、厳正なリスク管理を行うと同時に、統括部署としてリスク統括部を定め、管理態勢の整備を行っております。
また、リスク管理全般の統括部署である「リスク統括部」は、各リスク主管部署が担当しているリスク管理に関する検証の統括を行っております。
なお、当行のリスク管理体系図は、次のとおりであります。

リスク管理体系図

信用リスク

融資を主たる業務とする銀行にとって、信用リスクの管理が健全性のみならず収益性に関する戦略目標の達成に重大な影響を与えると認識しております。
信用リスクにかかる管理態勢として、リスク統括部を営業関連部門から完全に独立した信用リスク管理部署として定め、「内部格付制度」を当行における信用リスク管理の根幹の制度と位置付け、個社別の与信管理、業務運営等に活用しております。
リスク統括部では、内部格付制度の設計・基準制定および変更、内部格付制度の検証および運用の監視等を所管しており、内部格付制度の適切な運営や格付の正確性・一貫性の確保に責任を負う態勢としております。
一方、審査関連部門は個別与信にかかる審査等を担当しており、営業推進部門から分離し審査の独立性を確保するとともに、融資に関する基本原則を遵守し、お取引先の財務状況や資金使途、返済能力等を勘案した厳正かつ総合的な審査を実施しております。
なお、審査関連部門は、審査関連業務の企画やお取引先の与信にかかる審査を担当する審査部、海運・造船等の審査に特化したシップファイナンス部、企業再生のための経営相談機能をもつ企業コンサルティング部、問題債権を担当する融資管理室の4部室体制としております。
資産の自己査定につきましては、査定基準の制定等をリスク統括部が所管した上で、営業店による1次査定、本部各部による2次査定ののち、リスク統括部による検証を実施する等、厳正な運用体制を確保しております。
また、信用リスク管理強化のためには人材育成が不可欠との観点から、階層別研修の実施等、行員の信用リスク管理能力の向上にも努めております。

市場リスク

銀行のバランスシート(資産・負債)は、その大半が預金や貸出金、有価証券等の金融商品で占められておりますが、これらの金融商品には、金利や価格、為替相場等の変動によりその価値が変動し、損失を被るリスク(市場リスク)があります。こうした市場リスクは、場合によっては損失をもたらしますが、収益が増大する可能性も持ち合わせております。したがって、収益獲得のためには、許容範囲内で一定のリスクを取っていくことが必要になります。ただし、予期せぬ市場変動によりリスクが顕現化し、銀行に多額の損害を与えるようなことがあってはなりません。そのためには、リスクを適正にコントロールし、収益性と健全性を両立させていくことが必要になります。

市場リスク管理態勢

当行では、市場リスクを適正にコントロールし、収益性と健全性を両立させていくため、ALM委員会を中心とする管理体制のもとで市場リスクの統合管理を行っております。
ALM委員会では、ギャップ法や時価評価分析、期間損益シミュレーション、VaR(バリュー・アット・リスク)(注)等の多面的な手法を活用して、適時・的確にリスクの把握を行っております。これらの手法によるリスク分析に加え、収益構造分析、経済環境・市場予測等に基づいて、運用・調達の基本方針やリスク管理計画、ヘッジ戦略を検討しております。また、市場取引部門については、取引を執行する部署および決済等の事務を行う部署から独立したリスク管理部署であるリスク統括部を設置し、相互牽制を図っております。

(注)VaR(バリュー・アット・リスク)
VaR(バリュー・アット・リスク)とは、金利や為替相場、株価等の将来の変動を、統計的手法を用いて推計することによって、一定の期間において一定の信頼性のもとで顕現化する可能性のある「時価ベースの最大損失額」を算出するリスク管理手法です。当行では、いわゆる「政策的に保有している株式」も含めた市場リスクについて、保有期間240日(※)、信頼水準99.9%を前提としてVaRを算出しております。ALM委員会等では、VaRによって把握した「潜在的なリスク」が、自己資本や収益力と比較して、過大になっていないかどうかを常にチェックしております。
(※)2018年度より保有期間を120日としております。

流動性リスク

流動性リスクとは、市場環境の悪化等により必要な資金が確保できなくなったり、または、著しく高い金利での資金調達を余儀なくされるといった、いわゆる「資金繰りリスク」、および市場の混乱等により市場において取引ができなくなる場合や、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされるといった、いわゆる「市場流動性リスク」の2つを意味しております。
当行では、地域における信頼性を背景にした安定的な資金調達力が、流動性確保のための基盤となっております。流動性リスク管理につきましては、半期毎に運用・調達のバランスに配慮した資金計画を策定するとともに、月次ベースで予想・実績を作成し、計画との差異を検証しております。また、市場における取引状況に異変が発生していないかチェックを行い、毎月ALM委員会に報告することにより、市場流動性リスクの顕現化による多額の損失発生を未然に防止する体制としております。
さらに、運用・調達ギャップや資金化可能な有価証券残高等を、ALM委員会および取締役会等へ報告する体制としております。外貨資金につきましては、通貨スワップ等を利用した長期資金調達等によって流動性を確保し、お客さまの外貨資金調達ニーズにお応えしております。

オペレーショナル・リスク

オペレーショナル・リスクとは、当行およびグループ会社の業務プロセス、役職員の行動もしくはシステムが不適切であること、または外生的な事象により損失を被るリスクのことをいいます。
当行では、オペレーショナル・リスクを網羅的かつ効率的に管理するため、①事務リスク、②システムリスク、③法務リスク、④人的リスク、⑤有形資産リスクの5つのリスクカテゴリーに区分し、各リスク主管部署が専門的な立場からそれぞれのリスク管理を行い、リスク統括部がオペレーショナル・リスク統括部署としてオペレーショナル・リスク全体の把握・管理を実施しています。顕現化したリスクのみならず潜在的なリスクの特定にも努め、オペレーショナル・リスク管理委員会を中心にオペレーショナル・リスク管理の高度化に取り組んでおります。

事務リスク

事務リスクとは、役職員が正確な事務を怠ること、事故や不正等を起こすこと、あるいは事務に関連する外部不正が発生することにより損失を被るリスクのことをいいます。取扱商品の多様化やお客さまとの取引量の増加等により、事務リスクも増大する傾向にありますが、当行では、お客さまの信頼にお応えする第一歩は正確な事務処理にあるとの基本的な考え方に立って、堅確な事務処理体制確立のため全力で取り組んでおります。
具体的には、営業店事務のレベルアップを図るため、各種事務規程、マニュアル類を整備し、正確な事務の取扱いに努めるとともに、事務統括部を中心とした本部各部による臨店事務指導を行っております。さらに、営業店自身による自店検査を各店に義務づける一方で、各種研修会を通じて行員の事務管理能力の向上を図る等、事務管理態勢の強化に取り組んでおります。
また、お客さまに関する情報を安全に管理するため、「情報セキュリティ管理規程」をはじめ、より具体的な取扱方法を定めた「情報セキュリティ基準(共通編)」を制定する等、セキュリティ管理態勢の強化に取り組んでおります。

システムリスク

システムリスクとは、コンピュータシステムのダウン・誤作動といったシステムの不備、コンピュータの不正使用、あるいは情報の漏洩・改ざん等に伴い損失を被るリスクのことをいいます。銀行業務の多様化やネットワーク化の進展に伴い、システムリスクはますます増大しております。当行では、システム障害の発生を未然に防止するとともに、万一発生した場合の影響を極小化し、早期の回復を図るため様々な対策を講じております。
具体的には、当行グループの重要システムにつきましては、定期的な点検を実施し、システム障害発生の未然防止に取り組んでおります。また、万が一の障害発生に備え、ホストコンピュータ等の重要機器の代替機設置、営業店とコンピュータセンターを結ぶ通信回線の二重化により、バックアップ態勢を確保しております。さらに、コンピュータセンター自体が災害等により使用できなくなる場合に備えた災害対策システム(バックアップセンターの設置)については、2001年11月より本格運用を開始しております。
また、データの厳正管理、不正使用の防止等、情報システムを安全に管理するため、「情報セキュリティ管理規程」、「情報セキュリティ基準(共通編)・(システム部編)」を制定しております。

法務リスク

法務リスクとは、当行およびグループ会社または役職員による法令等違反行為、訴訟、その他の法的な原因により損失を被るリスクのことをいいます。当行では、法令等遵守について、啓蒙活動や研修により、その徹底に努めております。また、本部・営業店等で発生する法的対応を要する事案、および適法性の確認を要する事案につきましては、法律専門家との連携によるリーガルチェック等により、適切な管理に努めております。

人的リスク

人的リスクとは、人事運営上の不公平・不公正、差別的な行為、または不適切な職場の安全環境により損失を被るリスクのことをいいます。当行では、行員からパートタイマーまで適切な人事管理に基づく公平・公正な人事運営や労務管理を行っております。また、各階層別研修や職場指導等の実施により、その徹底に努めております。

有形資産リスク

有形資産リスクとは、自然災害や犯罪をはじめとする事件・事故等に起因して、店舗等の建物、システム機器、什器等の有形資産が毀損することにより損失を被るリスクのことをいいます。当行では、店舗設備点検を定期的に行うことにより、有形資産に起因する事故の未然防止に取り組んでおります。また、自然災害や事件・事故の発生時に適切な対処ができる体制を確立するため、防犯・防災設備の充実に努めるとともに、訓練・研修等を実施しております。

レピュテーショナルリスク

レピュテーショナルリスクとは、風評の流布等によって銀行が損失を被るリスクです。レピュテーショナルリスクにつきましては、その発生源である各種リスクについての管理強化はもとより、倫理、法令、行内の規定等を遵守する企業風土の醸成に向けて、全行挙げた取り組みを行っております。また、お客さまからの苦情等に対しては、お客さまサービス向上部で対応を行うとともに、速やかな経営陣への報告、さらには関連各部間での緊密な連絡・協議体制を構築し、地域の皆さま方の声をスピーディーに業務に反映させる体制を整備しております。また、総合企画部、広報CSR室を中心とし、対外的な広報活動やディスクロージャーの充実にも努めております。

業務継続体制

以上のリスク管理態勢に関わらず、大規模地震などの自然災害や感染症の大流行など、当行の業務継続を脅かすような緊急事態が発生した場合に備え、緊急時における「業務継続方針」を定め、この方針に基づき、「業務継続計画」を策定しております。
「業務継続計画」では、主に「預金のご入金やご出金」、「お振込」、「ご融資」など、お客さまの資金確保や資金決済に密接に関わる業務を優先的に再開させることとしております。これらの業務については、緊急時に暫定的な手段により即日再開させることを目標とし、あわせて、本格復旧に向けて早急な対応を図ります。また、関連するステークホルダーの皆さまに向けた適時の告知・周知体制を整備することで、緊急時においても説明責任を果たすこととしております。
また、「業務継続計画」の実効性を向上させるため、総合企画部担当役付取締役を「業務継続マネジメント統括責任者」とし、その指揮・監督のもと、「通信手段の多様化」や「サイバー攻撃に対する備え」など、平常時から様々な対策を講じるとともに、定期的な訓練を通じて「業務継続計画」の有効性を検証し、継続的な改善につなげる「業務継続体制」を整備しております。
今後、四国においては、南海トラフ巨大地震の発生が懸念されておりますほか、近年は業務継続を脅かすリスクが多様化・複雑化しております。緊急時における業務継続は私ども銀行の使命であり、CSRの観点からも非常に重要な取り組みと考え、引き続き「業務継続体制」のレベルアップに取り組んでまいります。