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ふるさとの文化を訪ねて
受け継がれる愛媛の行事、今どき風に変化も

2017/01/17

今も残る愛媛ならではの行事

東西南に広がる愛媛県の地形。そのせいか地域独特の行事が存在している。派手さはないものの、ずっと続く昔ながらの行事や、少しずつ現代のニーズに歩調を合わせながら変化を遂げているものなどさまざまである。合理化や効率化などで姿を消して行くものもあるが、いくつか愛媛らしい暮らしの文化を紹介しよう。

結婚式の縁起菓子「パン豆」

愛媛県の東予地方の結婚式では、パン豆が引き出物として出されることがある。初めての人は少し驚くが、この地域では昔から伝わる風習である。パン豆は、お米と砂糖を使ったお菓子で、ポン菓子、お嫁さん豆、嫁入り豆、おいり※などと言われ、地元の人たちにとっては馴染み深い駄菓子感覚の懐かしい味わいがある。
※香川県で用いられるおいりはカラフルな餅菓子

お米と砂糖が貴重な時代、お嫁入りの際に米菓子を持ってゆく習慣があり、元気でまめに暮らしてほしいとの意味が込められていたようだ。「えひめ、その食とくらし」(愛媛県教育委員会)によると、新居浜市に嫁いだ女性(昭和3年、大正7年生まれ)の言葉として「ほかのものはともかく『おいり』だけは持ってきてくださいと言われました」と語っているところから、結婚式にはなくてはならないものであったということが伺える。

口に含むと軽い食感とほのかな甘みが広がり、ついつい手が伸びてしまう素朴な味わい。かつては、幸せのおすそわけの意味でも、婚礼の際には近所に配られていたこのパン豆は、現在は、結婚式だけでなく縁起ものということで、新築祝いや出産、還暦など、人生のお祝い事の引き出物としても重宝されている。サイズも多様化、好みの味が選べるギフト用商品などもあり、新しいブームにもなっている。

いいことがある日は、ばら寿司

花見や節分、お祭りだけでなく、お祝い事など親戚が集まる日には、なぜか「ばら寿司」がある。別名「ちらし寿司」ともいうが、愛媛県では「ばら寿司」のほうがぴったりくる。今では、20~30歳代の家庭では作ることはしないようだが、「子どものとき作ってもらった」とか「おばあちゃんの家で食べた」という思い出深い味でもある。

愛媛県の「ばら寿司」は、たいていが甘めの味付けで、具だくさん。家によって多少異なるが、ニンジン、ゴボウ、シイタケなど定番のほかに、レンコン、かまぼこ、サヤインゲンなどが用いられる。なぜ、甘いのかというと、味付けに使われるイリコ出汁と甘みは相性がいいという説や、昔は砂糖が貴重なものであったところから、甘くすることでもてなしぶりを表現したのではないかという説などがある。おせったい文化の残る愛媛県らしい所以ではなかろうか。

そんなばら寿司は食卓には大皿で華やかに、持ち帰り用には折り詰めで振る舞われるが、錦糸玉子や紅ショウガ、キヌサヤなどのトッピングで、お祝い気分をさらに盛り上げる。ばら寿司は県内でも地域性があり、山間の地域では、春はタケノコやフキを入れたり、秋はクリを入れたりと季節感もプラス。一方、海が近いところでは、海老などの魚介類がふんだんに使われたりする。

松山市では小魚で出汁をとったすし酢を使い、刻んだアナゴを混ぜ込んだり、トッピングに酢じめの魚や刺身をのせたりする。これが近年は、夏目漱石が松山を訪れた際に、正岡子規の母・八重がふるまった「松山鮓」として注目を浴び、観光客向けに提供する店やホテルもある。

愛媛県のユニーク年中行事

転勤などで訪れた人がその地で「知らなかった行事」はよくあるもの。愛媛県にもそんなユニークな行事や風習が残っている。

秋になると、河川敷のあちこちで提灯を灯して、にぎやかな声が…。「あれは何ですか?」と県外者から聞かれるのは、秋の風物詩「いもたき」。サトイモや鶏肉、ニンジン、ゴボウ、油揚げなどを煮込んで食べる。地域によって地元の特産品が入って、その地ならではの味わいが人気だ。

七五三の行事は全国的だが、七五三のシーズンに0歳の子どもが初めての冬を迎える「綿着の祝い」は珍しい。「着るものに困らないように」と、お詣りするもので、綿の入った服を着て行くのが習わし。最近では、キルティングの洋服などですませることも。メジャーな行事ではないものの、お年寄りのいる家庭では昔の習わしとして伝承しているところもある。

また、「みんま」は、県内でも中予・南予地方でよくみられる風習。由来は戦国時代、戦で亡くなった人にお正月を迎えさせたいとの気持ちから生まれた愛媛独自の行事で、お寺の行事とは直接関係はない。具体的には、12月の巳の日に仏様のお正月の準備をして墓参りをする。みんま用のしめ飾り、杖、笠、ワラジにみんま餅という大きな餅を用意し、お墓の前で、しめ飾りを燃やし、餅を焼き、ちぎって食べる。南予地方では11月に行うところもあるなど、地域により異なる。最近では、親族が集まりやすい日が選ばれる場合もあるが、意外に根強い風習でもある。

愛媛県には、まだまだたくさんの伝承行事や地域文化が息づいている。その一つひとつに触れるたび、日本ならではの四季がめぐる喜びや、人々が歩んできた歴史や生活の知恵にも触れる。ともすると忙しさに追われる現代の暮らしだが、上手に取り入れてみてはいかがだろうか。

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