古くて新しい方言ワールド
知っとるかな?愛媛の方言

地域を想像させる「方言力」
最近、地域の自治体が方言を使っていろいろなキャンペーンを行って話題を呼んでいる。岡山県では「もんげー」(すごいの意味)を使って観光PRをしたり、宮崎県小林市の移住促進では「ンダモシタン」(おや、まあ、とか驚きの言葉)で地元をアピールしたりしている。確かに標準語よりも、その土地ならではの言葉のほうが人情味深くて、すぐに引き込まれる。
例えば「いらっしゃい」とか「来なさい」のシーンで使う言葉は、愛知県「おいりゃぁす」、京都府「おこしやす」、山口県「おいでませ」、香川県「おいでまい」、愛媛県なら松山市の「おいでたなもし」というところだろう。実際には、「おいでたなもし」というのは死語に近いのだが、伊予の風情を表現する代表としては、健在そのもの。「おいでたなもし」や「◯◯するぞなもし」などの「なもし言葉」は、伊予弁の伸びやかでのんびりした調子が城下町・松山を彷彿とさせ、ドラマや映画などにも登場する。時折、地元の人が「今どき、あんな言葉は使ってない」と言ったりするが、松山を想起させるアイテムとして欠かせない強力な存在である。
この意味、分かる?方言クイズ
ところで、次の愛媛県の方言を訳せるだろうか?
「この机、かいてや」
「ボタンがのいてしもた」
「風邪ひいてたごるけん、しんどいわい」
「よもだじゃね」
「いんでこうわい」
「もんたかや」
「しゃいだ」
順に訳すると、
「この机を持って移動させて」
「ボタンがとれてしまった」
「風邪をひいて咳がでるので辛いよ」
「お調子者だね」または、「ふざけた人だね」※変わった人、的な意味合いも含まれる。
「帰ります」※決して、戻ったりはしないのでご注意を。
「帰ってきましたか」
「ひいた」※重みをかけてつぶしたり、へこませたりした時にも使う。
全部分かれば、「がいな愛媛ツウ!」(南予地方の方言で、立派な愛媛ツウの意味)だ。
同じなのに、言いようで反対?
愛媛県には言葉の使いようや抑揚によって、反対の意味になる不思議な言葉がある。「おいきな」は、「はよ、おいきな」と言うと「早く行きなさい」の意味で、「もう、おいきな!」と言うと「もう行ってはダメ」となる。
同じような言葉に「おしな」がある。これも言いようによって「早く、おしな」と言うと「早く、しなさい」。「もう、おしな」と言うと「もう、してはダメ」ということになる。また、「お言いな」だと、「さっさとお言いな」は「さっさと言いなさい」で、「もう、お言いな」は「黙りなさい」となる。
地域の特徴は性格?
愛媛県では東予地方、南予地方、中予地方で、方言が微妙に異なって面白い。例えば、「遊びにきませんか」の意味合いを表すには、東予では「遊びにこんかい」、南予では「遊びにきさいや」または、「きんさいや」、中予では「遊びにおいでなさい」となる。語調も、東予はスッキリとしたシャキシャキ系。南予は時間が一瞬止まったかと思うようなゆるゆる感が特徴で、いやし系。中予はどちらつかずだけど、のんびり感が満載だ。
旅先で地元の人たちと会話をするときは、標準語より方言でしゃべってもらうと親近感がわくし、何より旅の思い出となる。積極的に話しかけてぜひ会話を楽しみたいものである。
最後にひとつクイズを出題。南予のある町では方言をそのままイベント名とした「でちこんか」(出ていらっしゃいの意味)という市民参加型イベントを開催している。たくさんの露店が並び、地元のキジ肉を使ったメニュー等も人気を呼ぶ名物イベントだ。さて、その町はどこだろう? ヒント、鬼で有名。
(答え:鬼北町=きほくちょう)