動物たちの癒しの楽園
愛媛県立とべ動物園

今年で開園30周年を迎えたとべ動物園の前身は、かつて道後公園内にあった道後動物園。動物にも人にもより良い環境を求め現在の場所へ移転し、「とべ動物園」として新たなスタートを切ったのが1988年春のことだ。
現在は緑豊かな丘陵地で約170種の動物たちが暮らし、ホッキョクグマの日本における人工哺育記録を更新し続けるなど、全国からも注目を集める動物園へと成長した。動物と人を繋ぎ、さまざまな命とともに歩み続けるとべ動物園の活動や魅力について紹介しよう。

飼育員が解説ラベルって?
とべ動物園が力を入れているのは、飼育員による、飼育員のことばで来園者に説明する動物ガイド。「飼育員が解説ラベル」として活動をしているため、あえて動物の解説板には最小限のことしか掲載していない。知りたいことは飼育員にどんどん質問してもらおうという意図だ。全国でも飼育員が積極的に質問に応じるという取り組みは珍しいそう。青い制服の飼育員を見かけたらぜひ声をかけ、質問してみよう。
個体ごとの性格の違い、人工哺育ならではの性格など、同じ動物でも個性はいろいろ。飼育員から話を聞いたあとは、「種類」から「個体」へと認識が変わってくるからおもしろい。例えばゾウと呼んでいたのがアフリカゾウになり、いつしか「リカ」と名前で呼ぶようになるのだ。個体について知ることで愛着や愛情が湧くため、子どもに命の大切さを知ってもらう機会にもなるだろう。
毎週日曜の11時30分から開催されるガイドイベント「ZOOタイム1130」では、毎回違う動物を担当飼育員が解説。基本的な話に加え、飼育員しか知らない話が聞けるのでこちらもおすすめだ。

ブリーディングローンで子孫繁栄
種の保存や生息域外保全も動物園の大事な役割。近年は外国からの輸入が難しくなり、アフリカゾウやピューマなどいつか国内で見られなくなる可能性のある動物が増えている。そのため全国の動物園では、繁殖を目的に動物を貸し借りする「ブリーディングローン」を行い、国内での繁殖に取り組んでいる。
よこはま動物園ズーラシアに貸し出され話題になったのが、ホッキョクグマのバリーバ。期間を終えとべ動物園に帰ってきたが、残念ながら子宝には恵まれなかった。現在園内ではピューマやキリンなど数多くの動物たちがペアリング中。「キリンのリュウキと杏子はうまくいきそう?」など、恋の行方を気にかけながら見学してみると、また違った発見ができるかもしれない。

自然に近い形での展示が持つ意味
とべ動物園の魅力のひとつに、行動展示型獣舎がある。2014年に完成したチンパンジーの森は、自然木を生かした大きなガラス張りの獣舎。行動展示型になっているが、実はこの獣舎の最大の目的は繁殖。チンパンジーは群れで暮らすことで繁殖を行う特性があるため、群れを作りやすい環境になるよう配慮されているのだ。
その願いは叶い、2016年にはミライとロッキー、2頭の異母姉弟が誕生した。木々が生い茂る獣舎にもすっかりなじみ、まだ幼さの残る2頭を中心にのびのびと過ごすチンパンジーたち。血の繋がりはない高齢のマリーも加わり、群れで子育てをする姿は人間の家族と重なる部分も多いだろう。知能の高さを観察できるイベント「チンパンジーのチャレンジタイム」は毎月第1・3土曜の13時30分から開催されている。

とべ動物園の「日本でココだけ」
アフリカゾウの親子は園内きっての人気者。当たり前の光景のようにも見えるのだが、実は親子で暮らすアフリカゾウに会えるのは、日本ではとべ動物園だけ。母親のリカは、媛・砥夢(とむ)・砥愛(とあ)の3頭を生み、唯一のオスである砥夢は現在ブリーディングローン先の多摩動物公園で元気に暮らしている。アフリカゾウの親子が仲睦まじく過ごす姿は、種の保存に励むとべ動物園を象徴する眺めとも言えるだろう。
そして、日本でココだけの少しマニアックな鳥もいる。パプアヒクイドリのセロムだ。黒い体に映える鮮やかな青い頭と赤い首が印象的だが、なんといってもその足の太さに驚く。ヒクイドリはこの太い足で抜群の破壊力を持つキックを放つため、世界一危険な鳥といわれることもある。日本で見られなくなる日が来るかもしれないので、国内で最後の1羽を訪れてみてはいかがだろうか。
のんびり眺めるだけでも癒やされる動物たちから学ぶことも多い。イベントに参加したり、飼育員に話しかけたり。動物たちに一歩近づくことで、また新たな動物園の魅力に出会えるだろう。
愛媛県立とべ動物園
☎089-962-6000
料金/大人500円、高校生・65歳以上200円、小・中学生100円、小学生未満無料
開園時間/9時~17時(入園は16時30分まで)
休園日/月曜(祝日の場合は開園)
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