家族で楽しめる
愛媛のお気軽トレッキングスポット

愛媛県には西日本最高峰の石鎚山をはじめ、魅力的な山がたくさんあるが、体力に自信がない、子ども連れで登ってみたいという方にとっては少々敷居が高く感じるもの。しかし意外と気軽に山の醍醐味を味わえるスポットが、身近にたくさんあるのをご存じだろうか。今回は初心者でも安心してトレッキングが楽しめる、お薦めの2山をご紹介しよう。
淡路ヶ峠(松山市)

<基本情報>
標高:273m
比高約:240m
所要時間:60分
松山市中心部から東へ約4km、閑静な住宅街が広がる畑寺地区にそびえる淡路ヶ峠(あわじがとう)は、標高273mの、一見何の変哲もない低山だ。しかし、近年、地域住民の手により登山道が整備され、初心者でも快適に山歩きが楽しめるようになった。美しい眺望と意外な歴史に出合えるとあって、知る人ぞ知る人気のトレッキングスポットになっている。
登山ルートは複数あるが、お薦めは本格登山気分が楽しめる繁多寺裏から登るルートだ。繁多寺といえば、多くのお遍路さんでにぎわう四国霊場第50番札所。天平勝宝年間(749~57)に孝謙天皇の勅願寺として、行基が刻んだ薬師如来像を本尊として開基され、のちに弘法大師や時宗の開祖・一遍上人が修行したことでも有名で、江戸時代には徳川家の帰依を受けて再興された由緒ある古刹。ぜひ、トレッキング前に参拝しよう。
参拝を済ませたら、いざスタート。山門を出てすぐ右手にある小さな池のほとりを進み、ミカン畑へと通じる農道をしばらく歩けば、森の中へと続く登山道の入り口が現れる。クヌギなどの雑木が生い茂る森の中の小径は、最初は緩やかで歩きやすいが、しばらく進むと急斜面の岩場へ変わる。ルートに沿って張られたロープにしがみ付きつつ、息を切らせながら岩場を登れば、わずかな時間ではあるが本格的な登山気分が味わえる。
山頂には立派なウッドデッキの展望台が設けられており、眼下に松山城下が、彼方には伊予灘に浮かぶ山口県の島々も一望できる。ちなみに、ここには戦国時代に林淡路守通起という武将が城主を務めた淡路城という山城があった。通起から11代目の子孫が初代内閣総理大臣・伊藤博文で、道後温泉来湯の際「再訪の折には淡路ヶ峠で祖先の供養をしたい」と語ったことはあまり知られていない。明治の元勲も登りたがった淡路ヶ峠からの眺め、一見の価値ありだ。
源氏ヶ駄馬(西予市)

<基本情報>
標高:1402.9m
比高約:240m
所要時間:50分
標高1,402.9mと聞くと、相当険しい山を想像するだろうがご安心を。スタート地点は県内で最も標高の高い場所にある小学校、大野ヶ原小学校。標高は約1,160m、比高約240mで、ちょっとした遠足気分が楽しめる。また、小学校周辺は県内有数の酪農地帯とあって、新鮮な牛乳を使った各種スイーツが楽しめるカフェや商店が点在。山頂でいただくおやつの調達はもちろん、下山後の楽しみに取っておくのもよし。トレッキング以外の楽しみが充実しているのも、この山の魅力だ。
小学校前を出発し、県道36号を東へ約800m歩くと、右手にサイコロ形の公衆トイレが現れる。その奥に見える小さな森が源氏ヶ駄馬への登山口だ。森の中へと通じる未舗装の道を、落ち葉を踏みしめながら歩くと、すぐに視界が開け、牧草地が広がる急斜面が現れる。そして、目の前には山頂まで一直線に延びる登山道。標高が高く酸素が薄いためか、ゆっくり登っていても息が上がるが、広大な草原の中に彫刻作品のような石灰岩が点在する四国カルストならではの絶景を眺めながら歩けば、疲れなど吹っ飛ぶ。
急斜面の大草原の中を登り続けること約30分、尾根筋に出れば、すぐ山頂に到着だ。石造りの御堂が祀(まつ)られている山頂は360度の大パノラマが広がり、東に目を向ければ、四国カルストのなだらかな稜線や、高知県側に広がる打ち寄せる波のような山なみを一望できる。また、天候が良ければ石鎚山や太平洋も望むことができ、その雄大な景色にただただ感動!秋には眼下に広がるブナ林の紅葉、初冬には樹氷を楽しむこともできるなど、普通ではなかなかお目にかかることのできない四季折々の自然美を、初心者でも存分に堪能できるお薦めのトレッキングスポットだ。
関連リンク

この記事が気にいったら
シェアしよう
