リラックス投資術
第3回:「2020年を起点に日本は変わる!その1」

2020年東京オリンピック・パラリンピックも開催まで、あとわずかとなりました。今回以降のコラムでは、「2020年を起点にして日本が変わる!」をテーマに書いてみたいと思います。近代の日本の歴史において国創りを大きく変えた節目として明治維新と終戦があると思いますが、私は2020年が次の節目としてその後の日本を大きく変えていくのではないかと考えています。今を生きていると、あと2年で何か変わるのか?という感じかと思いますが、2050年くらいから振り返った時、きっと2020年を起点に日本は変わったと言われていると思うのです。
1.潮目は変化を始めている
何が大きな変化をもたらすのでしょうか。下記、2つの視点が大切だと考えています。
(1)人口動態
まずは、人口動態です。2020年以降も高齢化は続きますが、2020年を過ぎていくと世代が変わっていきます。年齢別の人口で最も多かった世代である団塊の世代から、団塊の世代ジュニアに中心は変わっていきます。日本の人口の中心世代がいわば、戦後初めて代替わりするのです。世代が変わって価値観や常識が変わらないはずがありませんし、人口の多い世代に向けて政治は政策がとられますので、政策にも変化が見られるはずです。世代が変わると価値観が変わる事例を一つ示しますと、2017年秋の衆議院選挙の時の年代別の内閣支持率があります。30歳代までの若い世代が安倍政権を支持する一方で、50歳代以降は不支持の態度を鮮明にしています。家族で同じ食卓を囲っていたとしても、親と子で全く価値観が違ったというわけです。

(2)現代における開国か?
次に、インバウンドです。ご存知の通り、訪日外国人数は急増しています。2010年は861万人でしたが、昨年2018年は3,119万人と10年弱で3.6倍にもなりました。政府は2020年の目標を4,000万人、訪日外国人の消費額を8兆円と試算しています(2030年の目標は、6,000万人で15兆円の消費額を試算)。ここで大切なのは、海外から訪日される外国人の方が増えているという単純なことではなく、その方々に満足いただけるように、言語の表示からはじまり接客、決済にいたるまでの対応が進んでいるということです。こうした変化は大都市からはじまり今や地方まで拡がっています。また、企業のグローバル化の進展も著しいです。企業の海外売上高比率も年々上昇し、職場における外国人の方の比率も上昇してきています。それは、新卒の採用においても同様となってきています。まさに、気がつけば現代版の開国を行ったようなインパクトになっているのではないでしょうか。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを起点にさらにこの流れは加速化していくと考えています。
2.1964年の東京オリンピックがもたらした日本の変化
前回の1964年の東京オリンピックは、戦後復興からの高度成長につながる貴重な大会となりました。多くの経営者が2020年の東京オリンピック・パラリンピックを事業の飛躍的な発展につなげようと積極的な取り組みをされています。今回も日本が新しいフェーズに入るきっかけの大会になるではと思っています。こうした国を挙げてのイベントは日本の企業経営者のパッションを高める効果があるのだと思います。
例えば、前回大会は、初めて電子計算機が導入され“科学のオリンピック”と言われたそうです。その大会でセイコーグループが初めてスイスメーカー以外で公式計時を担当し、当時セイコーグループであった「信州精機」も活躍されたそうです。その時の経験を活かし、信州精機から「EPSON」への社名変更の由来となった、世界初の小型軽量デジタルプリンターを開発し、大成功につなげたのでした。まさに東京オリンピックを契機に世界的なヒット商品を開発し、社名の変更にまで至ったケースだと考えています。
さらに、前回大会を契機に新しい産業を興した企業もあります。その企業はセコムです。当時、警備は世界的にも警察官の仕事でしたが、大会直前の1962年に起業し民間企業として選手村の警備を請け負った会社がセコムです。今や60万人近くの雇用を生む警備業界は、東京オリンピックを契機に生まれた産業でもあります。
私は、前回大会同様に2020年を契機に世界的なヒット商品を出す企業や新しい産業を興す企業が生まれるのではとワクワクしています。
3.2020年を起点に日本は変わる!
このように戦後初めての中心世代の代替わり、現代版開国、そして企業のイノベーション。私は長期的な視点での企業調査を通じて、こうした大きな潮目の変化を感じています。『投資は、未来を信じる力』のはずです。長期的な資産形成においてもこうした息吹を感じながらの資産形成は楽しいと思います。また、ニュースからだけではなく長期的な投資を通じて、こうした気づきを沢山得ることも大切だと思っています。
コモンズ投信株式会社
代表取締役社長兼最高運用責任者 伊井哲朗


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