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絵本セラピストが選ぶ
大人こそ読みたい絵本

2020/12/24

誰しも幼いころの絵本を読んだことがあるでしょう。しかし、絵本は子どもだけのものではありません。自宅で過ごすことが増えた今、大人の心に響く作品を絵本セラピスト協会認定 絵本セラピスト®の福井一恵さんに選んでもらいました。

■「むらの英雄:エチオピアのむかしばなし」

わたなべ しげお 文/にしむら しげお 絵
瑞雲舎

村の12人の男たちが町へ出かけました。その帰り道、ひとりが仲間を数えると11人しかいません。「たいへんだ!だれかがいないぞ!」「きっとヒョウにやられたに違いない」と噂になります。本当は、自分を数え忘れただけなのですが、人々の勝手な想像や噂話が本当のこととして語り伝えられていくのは、こういうことか、とクスッと笑いながらも考えさせられる話です。

福井さんおすすめポイント
今の社会ではSNSを中心に、本当のことも怪しい情報も、まことしやかに広まっていると感じることがあります。情報を発信している本人は「本当のこと」と信じて疑わず「いい話」として発言していたとしても、それは勘違いだったり、だれかの想像だったり。今も昔も、噂ってこうやって始まってこうやって語り伝えられていくのかもしれません。

■「パパのしごとはわるものです」

板橋雅弘 作/吉田尚令 絵
岩崎書店

「もっとあんな仕事がしたい」、「こんな仕事がしたい」、「認められたい」、そんな思いが強くなったときに読むと、自分の仕事や評価について違う視点で見直すきっかけになるような絵本です。「おとうさんのしごと」について調べようとした男の子の気持ちが動いていく様子にも注目です。

福井さんおすすめポイント
この本に登場する「わるもの」のお父さんは、自分の仕事を誇りに思っているからこそ息子としっかり向き合うことができたのだろうと思います。お父さんが本当は「正義の味方」通いと思いながら仕事をしていたら、息子の気持ちはこんな風に落ち着かなかっただろうなと。自分の評価や仕事について悩みがあるとき、読み返したい絵本です。

■「どうぶつさいばん ライオンのしごと」

竹田津 実 作・あべ弘士 絵
偕成社

母親を殺されたヌーがライオンを訴えます。丘の上で行われる裁判には、動物たちが集まり、それぞれの弁護士が証人を立てます。ライオンに食べられて数が増えないと訴えるバッファローや、ライオンは狩りが下手で動きがおかしい者や弱ったものしか食べないというハゲワシ、繰り返される双方の証言を元に判決が下されます。「いい裁判だった」と納得して帰って行く動物たち。それぞれの動物の証言や裁判の展開から、今の自分の生き方や社会の中で生きていくことについて思いを馳せることができます。

福井さんおすすめポイント
「らいおんのしごと」は、新型コロナウイルスの感染流行時期に出合いました。裁判では、強い動物が弱った動物を狙うことで病気の蔓延を防ぐ結果になっていたり、何者に狙われなくても病気で群れの多くが亡くなる証言があったり、感染症や病気、命、自然について深く考えさせられた絵本です。裁判ではライオンは無罪になりますが、裁判長は、「ただし…親を亡くしたヌーの気持ちはわかってあげましょう」と続けました。どんなに気をつけてもどうにもならないつらい話が多いこの頃。自然も病気も責めることはできないけど、つらい立場におかれた人の気持ちに寄り添うことはできることだと感じました。


さあ、絵本の世界へようこそ。大人も子どもも共に楽しみましょう。

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