夫婦の老後に必要な資金額は?
しっかりと資金計画を立てて将来に備えよう
夫婦2人世帯では、老後資金をいくら準備しておけば良いでしょうか。本記事では、主に日常生活費以外にかかる保健医療費などについて解説していきます。資金計画を立てるうえで、有効な資産形成方法についても紹介します。
生活費以外に必要な費用とは
老後資金を考える際、食費や光熱費など生活費とは別の出費について考えておく必要があります。まずは、どのような出費があるのかデータを基に解説していきます。
家計調査から見る生活費以外の支出
将来の生活費以外の支出を、二人世帯と単身世帯で分けて紹介します。以下からは、総務省統計局「家計調査結果・2020年(令和2年)」に記載されている、65歳以上無職世帯の一ヶ月の家計収支を参考にします。
参考:総務省統計局「家計調査結果・2020年(令和2年)」
夫婦二人世帯
同調査内で「65歳以上夫婦のみ無職世帯」の家計収支によると、可処分所得は約23万円です。そのうち食費や光熱費などの生活費以外の支出として「保健医療費・7.2%」「交通・通信費11.9%」「教養娯楽・8.8%」などがあります。それぞれ具体的な金額は、以下のとおりです。
●保健医療費…16,057円
●通信・交通費…26,795円
●教養娯楽…19,658円
単身世帯
同調査によると、65歳以上単身世帯の可処分所得は約13万円です。そのうち、生活費以外の支出として「保健医療費:6.2%」「通信・交通費:9.0%」「教養娯楽:9.7%」となっています。以下は、それぞれの金額です。
●保健医療費…8,246円
●通信・交通費…12,002円
●教養娯楽…12,910円
ポイントは医療や介護関係の費用
65歳以上の無職世帯とは、年金収入が主である世帯を指します。夫婦2人世帯であっても単身世帯であっても、主な支出項目は変わりません。なかでも老後資金を考えるうえで大事なポイントとなるのは、「保健医療費」の部分です。同調査における保健医療費とは、保健医療用品・器具、医療サービスなどの健康増進や医療に関する全般のことを指します。
健康寿命を意識した資金計画を
日本は長寿高齢化が進んでおり、2020年(令和2年)の厚生労働省調査によると男性の平均寿命は81.64歳、女性は87.74歳です。あわせて注目したいのは、健康寿命です。健康寿命は2000年(平成12年)にWHO(世界保健機関)が提唱したもので、「心身ともに自立し健康的に生活できる期間」を指します。つまり、健康寿命と平均寿命の差には「健康ではない期間」があるということです。平均寿命と健康寿命の差がある期間は保健医療費の出費がかさむことを想定し、これからの老後資金対策の目安にすると安心です。
●男性…約9年(平均寿命約81歳・健康寿命約72歳)
●女性…約13年(平均寿命約88歳・健康寿命約75歳)
参考:公益財団法人生命保険文化センター「健康寿命とはどのようなもの?」
老後のために貯蓄しておきたい金額の目安
ここからは、具体的に老後資金対策として備えておきたい金額の目安について解説していきます。
世帯の年金収入と予定支出を確認
老後資金を考えるうえで手元に準備したいのは、「ねんきん定期便」です。ねんきん定期便は、毎年誕生月に郵送で届きます。ねんきん定期便には、その時点での年金加入状況や積立額、将来の受取額が掲載されています。既にねんきんネットにIDやパスワードを登録している人は、これらの情報をWeb上で確認しましょう。
いくらもらえるか・いくら足りないか
まず、ねんきん定期便で世帯全体の年金収入を確認します。そのうえで平均的な支出を参考に、いくら足りないか算出してみましょう。総務省統計局「家計収支結果」によると、平均的な支出の目安は65歳以上無職世帯のうち二人世帯で224,390円、単身世帯で133,146円です。
足りない部分を早めに備える
ここまで参考に紹介してきた総務省統計局の結果は、平均の数値です。住居費として住宅ローンを75歳まで払い続ける場合は、この平均の数値に上乗せして備える必要があります。このように目安となる数値を参考にして、自身の世帯での出費の過不足についてすり合わせをしてみてください。そのうえで、将来受け取る年金額との差額について早めに備えましょう。
資金計画を明確にしよう
ここからは、老後資金に備えるための資金計画について明確にするための方法を紹介します。
主な資産形成の方法
資産形成の方法には、いろいろあります。しかし、老後資金のための資産形成となると「より資産を守りながら少しでも増やす」ことがポイントになります。元本の保証性が不確かなものではなく、安定して長期的に資産形成が可能な商品をメインに資産形成を進めていきましょう。
預貯金
老後資金のための資産形成では、すぐに使えるお金を準備しておくことも大事です。銀行の預貯金はいつでも引き出せるため、万が一大きな出費がある場合でも安心です。預貯金のなかでも普通預金と定期預金に資産を分けておくと、それぞれの金利の違いから少しでも増やせます。また、預貯金の最大のメリットは元本が守られる点です。夫婦二人世帯の場合は、それぞれ個人名義の口座へ預貯金を保有しておくと安心です。
税制優遇のある投資商品(iDeCo・NISAなど)
老後資金対策で取り入れたい資産形成の方法として、税制優遇のある投資商品があります。少しでも資産を増やしながら税制面のメリットも受けられる商品として、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と「NISA」があります。iDeCoは運用中の掛け金が全額控除となるほか、受け取り時にも税制面で優遇されます。NISAは毎年最大360万円(非課税保有限度額1,800万円)を無期限非課税で投資できる仕組みです。また、NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、特に「つみたて投資枠」の対象となる銘柄は金融庁が定めた一定の基準を満たしており、長期・分散・積立投資に適した一定の投資信託が購入できます。そのため、これまで資産運用など投資の経験がない人でも選びやすいというメリットがあります。
まとめ
老後資金に備える際には、まず自分が年金をいくらもらえるのか知る必要があります。そのうえで一般的な支出との差額を目安に資金計画を立てると、スムーズです。しかし、保健医療費や住居費などは世帯によって差があるため、自分の世帯ではどうなのか追加して検討することをおすすめします。
金融業界歴10年目、お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを開催している。