グリーンボンドとは?
知っておきたい概要から投資のメリット・デメリットを深堀り!

さまざまな投資方法や商品があるなかでもグリーンボンドの市場が拡大しており、注目を浴びています。持続可能な開発目標(SDGs)に関連する話題が増えてきた影響で、環境への配慮や改善活動が活発です。今回は、グリーンボンドの概要から投資のメリットとデメリットについて深堀りして説明します。
グリーンボンドの概要

投資の方法としては、個別銘柄の株式や債券、投資信託などが主流です。グリーンボンドはどの分野に当てはまるのか、概要について説明します。
資金調達のために発行する債券
グリーンボンドは、企業や自治体が資金調達を目的として発行する債券です。調達した資金は、環境改善活動(グリーンプロジェクト)のみに使われます。代表的な取り組みは、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を目指す太陽光発電や風力発電の推進です。省エネルギー化や環境汚染の防止、水資源問題、温室効果ガスの排出や気候変動など、環境問題は多岐に渡ります。持続可能な開発目標(SDGs)により企業が取り組むべき活動としてESGが注目され、グリーンボンドの市場が拡大しました。
グリーンボンドの原則
環境や社会、ガバナンスの要素を重視するESG投資における債券の1つが、グリーンボンドです。グリーンボンドは法律などで定義されておらず、発行者による自己申告で成り立っています。そのため、ガイドラインとしてグリーンボンド原則(GBP)が定められているのです。GBPの中心となる4つの要素について説明します。
資金の使い方が限定される
グリーンボンドで調達した資金は、環境改善活動での利用に限定されます。適格性のあるプロジェクトは、気候変動緩和策、気候変動適応策、自然環境保全、生物多様性保全、汚染対策の5つです。これらの環境目的に資するものとして規定されています。
プロジェクトの選定と評価
環境改善活動を選定するための基準やプロセスについて、投資家に伝達すべき以下の事項が規定されています。
・環境面での持続可能性に関わる目標
・グリーンプロジェクトの決定プロセス
・環境・社会リスク特定・管理のプロセスに関する補足情報
調達した資金は管理・追跡される
環境改善活動のために資金を活用したことを示すため、調達資金は別勘定で管理し、透明性を確保することが規定されています。発行する企業のほかの事業活動に関わる費用などと分けて、プロジェクトに充てた資金と残高を管理するのです。投資家は、資金が環境改善活動に使われているか確認できます。
レポーティング
資金の使い方、プロジェクト選定と評価、資金の管理について定期的に投資家に説明すべきと規定されています。また、独立性や専門性を補完するため、外部レビューのガイドラインでセカンドパーティ・オピニオンの取得が推奨されています。これによって、プロジェクトの内容がGBPと整合しているか確認されるのです。
グリーンボンドの特徴

資金の使い方が明確で、発行体が債務不履行しない限り元本は満期に全額返済される点が特徴です。グリーンボンドで調達した資金は環境改善活動のみに使われるため、投資家の社会に貢献したい考え方が反映されます。債券に投資することは発行者へ資金を貸し出すかわりに、定期的に金利を受け取る権利を所有します。そして、満期になると元本が全額返済されるのです。
株式投資は、株主として資金の使い方に意見はできますが決定や限定はできないことが、グリーンボンドと異なります。また、元本の額は株式売却時の株価によるため、元本割れする可能性があり債券よりリスクが高いです。
グリーンボンドの種類
資金の使い方が環境改善活動に限定されている点は共通ですが、償還方法の違いによって4種類に分けられます。償還とは、債券に投資された元本を満期日に払い戻すことです。
標準的グリーンボンド
特定の財源に限定せず、発行者の財源全体を原資として償還します。
グリーンレベニュー債
公的な環境改善活動や公共施設での利用料、特別税などを原資として償還します。例えば、汚染の防止における排水処理場や廃棄物処理場です。
グリーンプロジェクト債
単一または複数の環境改善活動のキャッシュフローを、原資として償還します。
グリーン証券化債
環境改善活動に関わる資産を担保として、これらの資産から生じるキャッシュフローを原資として償還します。例えば、太陽光発電や省エネ性能の高い設備機器、電気自動車や水素自動車などの資産担保証券です。
グリーンボンドの発行と投資
債券を発行する主体と投資する投資家について説明します。
グリーンボンドを発行する主体
環境改善活動のために資金を調達したい企業や金融機関、地方自治体が発行する主体です。企業は一般事業者で、主な事業内容と切り離す場合は特別目的会社(SPC)を設立することがあります。
グリーンボンドへ投資する投資家
ESG投資を取り入れると表明している年金基金や保険会社などの機関投資家、運用を受託する運用機関が投資します。また、ESGに関心を持つ個人投資家からも投資できます。日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資を取り入れて、世界から注目されました。
グリーンボンド投資のメリットとデメリット

発行する企業のメリットとデメリット
グリーンボンドを発行して環境改善活動をするメリットとデメリットについて説明します。
メリット
グリーンボンドを発行することで、企業や自治体のイメージアップになる点がメリットです。世界的に注目されている環境問題の解決に向けて積極的に活動しているというアピールができ、好感度が上がります。環境改善活動が消費者や住民に興味を抱かせるキッカケになり、認知度の向上が期待できるのです。また、ESGの観点を持つ投資家が増えているため、業界や主な事業内容以外にも支持を得るチャンスが広がります。
デメリット
GBPで規定されているとおり、調達した資金が環境改善活動にしか利用できないのがデメリットです。グリーンボンドは資金の使い方や管理について透明性が高く、第3者機関での確認もあるため制限が強くなります。調達した資金を自由に使いたい場合や透明性を担保できない場合は、扱いにくい資金調達方法です。
投資家のメリットとデメリット
環境改善活動に関心を持つグリーンボンドへの投資家のメリットとデメリットについて説明します。
メリット
グリーンボンドへ投資することで、投資家のイメージアップが図れます。発行する企業や自治体と同じように、投資家にとっても社会からの評価は重要です。投資家の利益だけでなく、環境問題へ貢献することも重視しているアピールになります。また、グリーンボンドは債券であるため、株式より低リスクな点がメリットです。より長期的な運用で分散投資をしたい投資家にとって、リスクヘッジは重要な要素となります。
デメリット
グリーンボンドは法律による定義がないため、適切な内容か投資家自身で判断する必要があります。発行者が明記している活動が環境改善に有効なのか、資金の使い方が不適切になっていないかなどを見極める力が必要です。これらが満たされていないグリーンウォッシュ債券に、注意しましょう。
まとめ
グリーンボンドは注目されている投資方法で、今後市場が広がっていく期待も高いです。投資としてのメリットとデメリットを理解したうえで、グリーンボンドを活用することが重要となります。自分が投資したことで環境問題が解決したり、社会がよくなったりしていくのは投資家としての喜びも大きいでしょう。

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