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認知症になると口座が凍結される?
親の資産管理に備える対策を知っておこう

2022/05/12

親が認知症になって判断能力が低下すると、親の代わりに資産を管理する必要があります。「認知症になると口座の出金が制限される」といわれますが、実際はどうなのでしょうか。
今回は、認知症で銀行口座の出金が制限されるケースや、高齢の親の資産管理に備える対策についてお伝えします。

親が認知症になると銀行口座の出金が制限されるって本当?

親が認知症になると銀行口座の出金が制限されるって本当?

家族でも認知症患者の預金は引き出せない

認知症になると、本人の銀行口座から預金を引き出せなくなります。本人の意思を確認するのが難しくなり、詐欺や横領などで財産を失う恐れがあるからです。
キャッシュカードの暗証番号を知っていればATMでの引き出しは可能です。しかし原則、家族であっても認知症患者の口座から預金は引き出せません。いざという時のために、認知症になる前に代理人カードの発行をしておくことも念頭に入れておきましょう。

認知症患者の保有資産は増加傾向にある

厚生労働省の資料によると高齢者の認知症は増加傾向にあり、2025年(令和7年)には約700万人に達すると推計されています。
認知症患者が保有する金融資産も増加しており、第一生命経済研究所のレポートによれば、2030年(令和12年)には215兆円(家計金融資産全体の1割)に達する見込みです。
認知症による親の口座の出金制限は決して他人事ではなく、誰にでも起こり得る身近な問題といえます。

参考:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について P4」

参考:第一生命経済研究所「認知症患者の金融資産200兆円の未来」

認知症になると起こり得るリスクや問題

認知症になると起こり得るリスクや問題

認知症になると、家族はどのようなことで困るのでしょうか。ここでは、親が認知症になったときに起こり得るリスクや問題を紹介します。

詐欺やトラブルに巻き込まれるリスク

認知症になって判断能力が低下すると、親が自身の財産管理を行うことが難しくなります。
老後は財産を計画的に使わないと、生活費が不足するかもしれません。また、契約内容を十分に理解しないまま、高額な商品・サービスを購入してしまうトラブルも考えられます。
詐欺にあってお金をだまし取られることもあるので、家族や周囲のサポートは不可欠といえるでしょう。

介護離職のリスク

認知症の症状が進行すると、介護が必要になってきます。仕事と介護の両立が困難になると、介護に専念するために退職を考えるかもしれません。
しかし、介護には経済的な負担がかかります。仕事を辞めてしまうと収入が減少し、介護費用や生活費を確保するのが難しくなるでしょう。
介護離職を避けるには、親の介護を1人で抱え込まないことが大切です。「介護サービスを利用する」「周囲に助けを求める」「勤務先の介護休暇制度を利用する」などの対策を検討しましょう。

介護費用の問題

「親の介護費用は親のお金で払う」と考えているかもしれません。しかし、親が認知症になれば銀行口座の出金が制限される可能性もあります。そうなれば施設入所や介護サービス費用の立て替えが必要になるかもしれません。
介護はいつまで続くかわからないものです。たとえ現在は十分な資金があっても、介護が長期化すれば資金が不足する恐れもあります。

認知症になった際の対策方法とは

認知症になった際の対策方法とは

認知症が疑われたら専門医を受診する

認知症は早く治療すれば進行を遅らせたり、症状を緩和できたりする可能性があります。認知症と似た症状を示す別の病気もあるので少しでも気になる症状があれば、早めに専門医を受診しましょう。また認知症は自覚しにくい傾向があるため、周囲からのサポートも必要です。スムーズに受診できるよう、家族みんなでのサポートが理想といえます。

成年後見制度で成年後見人を選定する

認知症による銀行口座の出金制限に備えるには、「成年後見制度」を利用する方法があります。成年後見制度とは、認知症などで判断能力が不十分な人を保護・支援する制度です。
判断能力が低下すると、預貯金の管理や介護サービスなどの契約への対応が難しくなります。また詐欺や悪徳商法などの被害の防止にも有効な制度です。成年後見制度は、大きく「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つに分けられます。

任意後見制度

本人が十分な判断能力を有するときに、任意後見人と委任する事務の内容(本人の生活や療養看護、財産管理など)を決めておける制度です。
たとえば子どもを任意後見人にしておけば、親が認知症になった際に子どもが本人の財産管理や運用、処分を行えます。
任意後見制度を利用するには、公証人が作成する公正証書で任意後見契約を締結しなくてはいけません。そして、本人の判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任申立てを行います。
任意後見制度は、親が認知症になってからでは利用できない点に注意が必要です。

法定後見制度

家庭裁判所によって選任された成年後見人が、認知症になった本人を法律的に支援する制度です。本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つの制度が用意されています。
法定後見制度を利用すれば、親が認知症になった後でも本人の口座から預金の引き出しが可能です。ただし、家庭裁判所が成年後見人を選定するため、親族以外の人(司法書士など)が成年後見人に選ばれる可能性もあります。

まとめ

親が認知症になると銀行口座の出金が制限され、生活や介護に必要なお金を引き出せなくなるケースがあります。ただし、認知症になってからでもきちんと対処すれば、手遅れにはなりません。
認知症が疑われるときは早めに専門医を受診し、必要に応じて成年後見制度の利用を検討しましょう。



著者プロフィール

著者 大西 勝士

AFP、2級FP技能士

会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より金融ライターとして活動。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数の金融メディアで執筆中。

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