カラフルでインスタ映え抜群
シンガポールのプラナカン文化

「プラナカン」という言葉をご存知でしょうか。2022年に建国57年を迎えるシンガポールですが、実は何百年も前からこの地に暮らしていたプラナカンという人々がいます。彼らが独自の美意識で築き上げたスタイルは「プラナカン様式」や「プラナカン文化」と呼ばれ、今でも建築物をはじめとしたシンガポールの日常風景に溶け込んでいます。
今回はシンガポールに息づくプラナカン文化について、カラフルでインスタ映え抜群なプラナカン建築を中心にご紹介します。

プラナカンとは、15世紀後半から数世紀に渡りマレーシアやシンガポールに移ってきた中華系移民の子孫を指します。彼らは現地の人々と結婚し、中国とマレー文化が混じり合ったスタイルが徐々に育まれていきました。さらには東西交易の要衝であった歴史から、西洋文化までも融合させ生まれたのがプラナカン文化です。
プラナカンの人々がつくった建築物は「ショップハウス」と呼ばれており、一目でそれと分かるユニークな外観をしています。ショップハウスは日本の長屋のように数件が隣接している造りで、一階を店舗、二階を住居とします。パッと目を引く鮮やかなカラーを使用したものが多く、インスタ映えスポットとしても人気です。ネオ・ゴシック様式やバロック様式などの西洋建築のスタイルを取り入れ、窓枠や門にヨーロッパ風の凝った細工が施されているものも多くあります。
では、シンガポールのなかでも美しいショップハウスを楽しめるエリアを3つご紹介します。
インスタで大人気!プラナカンの中心地「カトン地区」

ショップハウスが多く集まるエリアとして最初に名が上がるのが、シンガポール東部に位置する「カトン地区」です。かつては多くのプランテーション(大規模農園)が集まる場所でしたが、20世紀初頭から郊外住宅地として開発され、多くのプラナカンの人々が住むようになりました。そのため今でも保存状態の良いショップハウスが数多く残っています。
カトン地区のなかでもインスタ映えスポットとして人気を博しているのが、「クーン・セン・ロード(Koon Seng Road)」にある華やかなショップハウス群です。道の両側には青空に映えるカラフルなショップハウスが軒を連ね、どこを切り取っても絵になります。

カトン地区は、シンガポール中心地からはやや離れた場所にあるためタクシーでの移動が便利。市内中心部からは通常15分ほどで到着します。MRT(地下鉄)も利用できますが、サークル線またはイースト・ウェスト線パヤ・レバ駅から徒歩20分の距離にあるため、炎天下での移動にはおすすめしません。
公共交通機関でのアクセスが抜群とはいえませんが、カトン地区はシンガポール屈指のグルメスポットとしても有名です。美味しいローカルフードに舌鼓をうちながら、華麗なショップハウスを堪能してみてはいかがでしょうか。
Koon Seng Road Colorful Houses
住所:287 Joo Chiat Road, 427540 Singapore
都会の真ん中でプラナカンを感じる「エメラルド・ヒル」

カトン地区まで行くのは遠い……という方におすすめしたいエリアが、ショッピングの中心地オーチャードに位置する「エメラルド・ヒル(Emerald Hill)」。オーチャード・ロードから1本小道に入った丘の上にあり、MRT(地下鉄)ノース・サウス線サマセット駅より徒歩約3分という抜群の立地です。
1901年から区画化されたエメラルド・ヒルは、かつてプラナカンのコミュニティがあったことから美しいショップハウスが立ち並ぶようになりました。その後1990年代より周囲に高級コンドミニアムの建設が進む中でも、エメラルド・ヒルだけは保存地区に指定されていたため、華やかなプラナカン建築を今に残しています。
現在では住宅街としてだけでなく、ショップハウスを改装したお洒落なバーが集まる場所としても知られており、観光客で溢れるオーチャード・ロードとはうってかわり、別世界のように落ち着いた雰囲気が漂います。オーチャードでショッピングを楽しんだ後、都会の喧騒から逃れ、エメラルド・ヒルの美しいプラナカン建築を堪能してみてはいかがでしょうか。
富裕層に愛された華やかな「ニール・ロード」

最後にご紹介するエリアは、市内中心部の金融街からほど近い「ニール・ロード(Neil Road)」。もともと裕福なプラナカンが多く暮らしていた地域で、ほかのエリアとは一味違う豪華な装飾が施されたショップハウスが並んでいます。
ショップハウスの装飾のなかでも注目してほしいのが、壁や床にぎっしりと敷き詰められた美しいレリーフ調のタイル。これらは「プラナカン・タイル」と呼ばれており、主に花をモチーフとしたヨーロッパ風のデザインで、ショップハウスの優雅な佇まいに彩りを添えています。

イギリスをはじめヨーロッパから輸入されたものが多いようですが、なかには日本製のプラナカン・タイルもあるのだとか。アンティークのプラナカン・タイルのコレクターもいるほど、注目を集めているアイテムです。
そんなニール・ロードは、市内中心部に位置していることからアクセスも良好。MRT(地下鉄)イースト・ウェスト線など3線が走るオートラム・パーク駅から徒歩約10分、観光地チャイナタウンからも徒歩10分ほどなので、天気が良い日に観光がてら散策するのに最適です。
なお今回紹介したエリア含め、多くの場合ショップハウスには現在でも人が住んでいます。撮影の際は、住民の方の迷惑にならないように配慮しましょう。
今もシンガポールに息づくプラナカン文化

日本人にはあまり馴染みのないプラナカン文化ですが、東洋と西洋の伝統を取り入れた独自のスタイルは、今でもシンガポールの日常にしっかりと息づいています。
今回ご紹介したエリア以外にも、シンガポールの至るところで目にするショップハウス。シンガポールの街を歩きながら、ぜひ美しいプラナカン文化を感じてみてください。