テレワークの現状と今後の課題
導入するメリットや問題点の解決方法を解説

新型コロナウイルスの影響により一気に普及したテレワークですが、現在の普及率が気になる人もいるのではないでしょうか。この記事ではテレワークの現状や、導入するメリット・デメリットを紹介します。また、テレワークが抱える課題の解決策も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
テレワークとは

テレワークとは、オフィス以外の場所からオンラインで仕事をすることです。リモートワークや在宅勤務なども、同義語として使われます。ネットワークが繋がれば自宅や好きな場所で仕事ができるため、育児や介護などで出社が難しい人でも無理せず働けます。テレワークは以前からある働き方でしたが、2020年(令和2年)の新型コロナウイルスの感染拡大により全国的に促進されました。
最大56.4%もの企業がテレワークを活用
新型コロナウイルスの影響により、これまでテレワークを実施していなかった企業でも導入するケースが増えました。総務省の調査によると、大企業と中小企業におけるテレワークの実施状況は、ピーク時で全国平均56.4%です。
また、内閣府による地域別の実施率調査によると、東京23区では55.2%、地方圏では23.5%がテレワークを実施しています[2021年(令和3年)9月~10月データ]。コロナ禍で緊急事態宣言などが出された時期に比べると落ち着いたものの、多くの企業が継続してテレワークを実施しています。
テレワークを導入するメリット

テレワークを導入することは、従業員と企業双方にとってメリットがあります。それぞれのメリットについて見ていきましょう。
従業員のメリット
従業員にとってテレワークは柔軟な働き方ができ、時間的・身体的に負担が少なくなります。
通勤の負担がなくなる
テレワークなら会社まで行く必要がなくなるため、通勤時間を削減できます。朝や夕方のラッシュ時は交通機関や道路が非常に混み合いやすく、時間もかかります。通勤がなくなることで電車に揺られたり運転したりする身体的負担がなくなり、プライベートの時間も確保しやすくなるでしょう。
育児や介護との両立がしやすくなる
自宅にいながら仕事ができれば、育児や介護との両立がしやすくなります。急に子どもが熱を出したとき、一人で留守番をさせてはおけません。自宅で仕事をしながら合間に子どもの様子を見られれば、会社を必ずしも休む必要がなくなります。「欠勤することで迷惑をかけてしまう」という精神的な負担も少なくなるでしょう。
また、職場が遠く状況的に短時間勤務しかできなかった人も、フルタイムで働く選択肢ができます。
企業のメリット
企業にとっては、テレワークが人手不足を解消する糸口やコスト削減につながります。
離職率の低下や人材確保を期待できる
従業員の働きやすさが向上するため、離職率の低下や優秀な人材の確保を期待できます。徳島県の株式会社カンマンの事例では、「在宅勤務可能」と載せた求人情報に、予想以上の応募が集まりました。テレワークを導入することで、中小企業でも柔軟な働き方を求める優秀な人材を確保するチャンスにつながります。
オフィスの省スペース化ができる
従業員が一箇所に集まって仕事をする大きなスペースが不要になり、最小限のオフィスで十分になります。高い賃料を払っているオフィスを小さくしたりなくしたりすれば、コスト削減になります。
香川県にある株式会社トリムクリでは賃料を削減し社員に還元する方が良いと考え、テレワークを導入しました。対面の打ち合わせが必要なときだけコワーキングスペースやレンタルオフィスを利用するため、コストを抑えることに成功しています。
テレワークを導入するデメリット

テレワークで働き方が向上する一方、デメリットもあります。デメリットを知っておくことで対処法も考えられるため、さっそく見ていきましょう。
従業員のデメリット
従業員にとってのデメリットは、主に金銭面での負担が増える可能性があることです。
パソコン周りの環境整備が必要
テレワークをするためには、インターネット回線やパソコンなどの購入・契約費用が掛かるのです。また、オンラインミーティングに使うマイクやカメラ、照明なども買う必要が出てくる可能性があります。テレワーク環境を整えるために、これまでは掛からなかった料金負担が増える人もいるでしょう。
電気代が以前より高くなる
出社していたときに比べ日中家にいる時間が増え、パソコンやエアコンの利用で電気代が高くなりやすいです。企業によっては「テレワーク手当」のような福利厚生を導入し、従業員の金銭的負担を援助している場合もあります。
企業のデメリット
企業にとってのデメリットは、これまでと仕事の勝手が変わることで従業員に目が届きにくくなることです。
従業員の管理が複雑になる
管理職や人事・総務部にとっては従業員の姿が直接見えず、勤怠管理がしにくくなります。チャットやビデオ通話によるコミュニケーションがメインとなるため、これまで以上に注意深くケアする必要が出てくるでしょう。また、社内のコミュニケーションが減ることで、チームワークを形成する難しさや帰属意識の低下を感じる可能性もあります。
セキュリティリスクが高まる
テレワークによりセキュリティリスクが高まる場合もあります。社外のネットワークや第三者が行き来するカフェやコワーキングスペースを利用して、情報のやり取りを行うためです。個人情報が記録されたUSBメモリの紛失や、システム認証情報への外部からの攻撃などのセキュリティ被害が起こりえます。
課題解決のために今後取り組むべきことは?

テレワークにはデメリットもありますが、注意点やリスクを把握しておけばあらかじめ対策ができます。ここでは、テレワークを導入する際に検討できる施策を紹介します。
リモートツールを活用する
テレワークの普及によって、リモートツールも発展しています。必要に応じてリモートツールを活用することで、テレワークでも苦労することなく業務に取り組めるでしょう。テレワークの代表的なリモートツールには、以下のような種類があります。
・コミュニケーションツール(Web会議システム)
・労務管理システム
・ペーパーレス化ツール
・クラウドツール
セキュリティ対策をする
情報漏洩リスクや外部からの攻撃を防ぐために、セキュリティ対策が必要です。基本的なセキュリティ対策としては、以下のようなものがあります。
・テレワーク時の行動ルールを定める
・データを暗号化する
・ウイルス対策ソフトを導入する
評価制度を見直す
従業員に直接目が届きにくくなった分、評価制度の見直しも重要です。テレワークにより評価が不明瞭だと、従業員が不満に感じる原因になります。
定期面談を実施したり業務スケジュールを共有したりするなど、従業員の仕事ぶりを確かめられる工夫をしましょう。また、評価制度は従業員に公開し、共通認識を持っておくことで正当に評価していることを示せます。
まとめ
コロナ禍をきっかけに浸透したテレワークは、ピーク時は平均56.4%の企業で実施されていました。現在もテレワークを導入する企業は多く、従業員・企業双方にとってメリットのあるワークスタイルです。テレワークを導入し、働き方改善に努めましょう。

地方銀行へ入社し、貯金・ローンなど金融商品の販売に従事。 その後、不動産業界へ転職して社会保険や労務管理を担当しながらFP資格を取得。自身の経験から“お金を無駄にしないための”アドバイスをおこなう。