産休・育休中の社会保険料について
免除期間や金額、手続きの流れが丸わかり!

産休・育休中に給料が出ない場合、社会保険料はどうなるのか気になる人もいるのではないでしょうか。社会保険料の支払いは、産休・育休中ともに免除されます。この記事では、産休・育休中の社会保険料の免除について、適用される期間や手続きを解説します。
産休・育休中の社会保険料免除について

多くの会社では従業員の産休・育休中には給料が出ませんが、手続きによって社会保険料が免除されます。
産休・育休中の社会保険料が免除される期間
産休・育休中で社会保険料が免除される期間は、以下のとおりです。
・産前6週間から産後8週間の産前産後休業期間中に、就労しなかった期間
・育児休業等を開始した月から、終了した日の翌日が属する月の前月までの期間
たとえば子どもの誕生日が8月10日で、産前6週間から1歳を迎える前の8月9日まで育休を取ったとします。この場合、7月までの社会保険料が免除されます。社会保険料は日割りをせず月単位で計算するルールのため、免除されるのも月単位です。
給付への影響は?
産休・育休のために社会保険料を免除されても、健康保険の給付は従来どおりです。また、将来の年金額にも影響はありません。
免除される合計金額
具体的に免除される社会保険料の金額(自己負担分)を試算してみましょう。前提条件は、以下のとおりです。
・愛媛県在住の20歳代
・免除対象期間13カ月
・報酬月額25万円
この場合、健康保険料の自己負担分の月額は1万3,338円、厚生年金保険料が2万3,790円です。1カ月の免除額は3万7,128円、13カ月分で48万2,664円の社会保険料が免除されます。
産休・育休中の税金は?
産休・育休中に無給の場合、所得税はかかりません。ただし、住民税は前年の所得に対してかかるので、産休・育休中でも徴収されます。
育休中の手取りは?
育休中に勤務先から給料がもらえなくても、雇用保険から育児休業給付金が受け取れます。もらえる金額の目安は、休業前6カ月の月給平均の67%(181日以降は50%)です。育児休業給付金に税金はかからず、社会保険料も免除されます。そのため、育休開始後6カ月は給料が出なくても、手取りの約80%がカバーされるのです。
社会保険料の免除を申請する手続きの流れ

ここでは、社会保険料免除が適用されるための手続きについて解説します。
被保険者から事業主への申し出
産休・育休の取得予定が決まったら、被保険者(従業員)から事業主にその旨を申し出ます。事業主所定の申請書の提出が必要な場合もあります。ここで伝えておくべきなのは、出産予定日や育児休業の取得期間です。
事業主が年金事務所に書類を提出
事業主は、被保険者の産前産後休業期間中に「産前産後休業取得者申出書」を年金事務所に提出します。また、育児休業の取得期間中に「育児休業等取得者申出書」を提出します。
保険料免除開始
社会保険料の免除期間は、産前休業を取得した月からスタートします。免除されるのは従業員の社会保険料だけでなく、事業主負担分も含まれます。以下は、保険料が免除される期間の一例です。
・出産予定日:8月10日
・産前休業:6月30日~8月10日
・産後休業:8月11日~10月5日
・育児休業:10月6日~翌年8月9日
産休で6月から9月、育休では10月から翌年7月の合計14カ月分の社会保険料が免除となります。
休業終了の届出(休業期間が変わった場合)
当初の育児休暇予定を切り上げて復職するケースでは、事業主が年金事務所に「育児休業等取得者終了届」を提出します。ただし、産休・育休のために代替となる人員を雇用している場合は、育休の切り上げが認められない可能性もあります。事前に勤務先の担当者に相談しましょう。
2022年(令和4年)10月からの社会保険料免除要件とは?

健康保険法の改正に伴い、2022年(令和4年)10月から育児休業中の社会保険料の免除要件が変更されます。
現行の社会保険料免除
現行法では、育児休業を開始した日が属する月から終了日の翌日の前月分までが免除とされています。月末日が育児休業期間中の場合、その月に支払われる給与または賞与にかかる社会保険料が免除となります。そのため、以下のように同じ育休日数でも免除になるケースとならないケースが発生していました。
ケース | 育休期間 | 免除 |
---|---|---|
① | 7月25日~8月7日(14日間) | 7月分社会保険料免除 |
② | 7月5日~7月18日(14日間) | 免除なし |
月をまたぐか否かで社会保険料免除の可否が決まります。そのため、月の途中に1カ月未満の育児休業を取得するケースでは、保険料が免除されません。特に育休取得期間の短い男性には不利であり、不公平な制度といえます。
また、賞与月の月末に育児休業を取得していると、賞与にかかる社会保険料が免除されます。そこで、賞与の保険料を免除するために、短期の育休を取得するケースも問題となりました。
改正後の社会保険料免除
以上の問題を踏まえ、2022年(令和4年)10月から育児休業期間中の保険料の免除条件が次のように見直されます。
月額保険料について
育児休業の開始月の末日が育児休業等期間中である場合だけでなく、その月に14日以上育児休業を取得した場合にも免除されます。
ケース | 育休期間 | 免除 |
---|---|---|
① | 7月25日~8月7日(14日間) | 7月分社会保険料免除 |
② | 7月5日~7月18日(14日間) | 7月分社会保険料免除 |
上記のケース②の場合、現行では社会保険料の免除は適用されませんでした。しかし、改正後は14日以上の要件を満たすため、免除されることになります。
賞与保険料について
賞与にかかる社会保険料は、1カ月超の育児休業等を取得した場合のみ免除されます。7月中に賞与が支給された場合、社会保険料の免除は以下のようになります。
ケース | 育休期間 | 免除 |
---|---|---|
③ | 7月25日~8月7日(14日間) | 免除なし |
④ | 7月5日~8月5日(1カ月超) | 7月分社会保険料免除 |
上記のケース③は、現行法では賞与分の社会保険料が免除されていました。しかし、改正後は育児休業期間が1カ月に満たないため、月末が育児休業にかかっていても社会保険料免除は適用されません。
まとめ
産休や育休の期間中は、勤務先から給料が支払われないだけではありません。出産や子育ての費用がかかるようになり、家計のやりくりに不安を感じる人も多いでしょう。産休・育休中の社会保険料免除のような国の支援策を可能な限り活用し、職場復帰までの収入減少を乗り切りましょう。

国内生保に法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングを行っている。