家の購入時に必要な頭金はいくら?
平均相場や金額を決めるときのポイントを解説
家を購入する際は、購入代金の一部を頭金として自己資金で用意するのが一般的です。では、頭金はいくら用意すればよいのでしょうか。今回は、頭金の平均相場を解説します。頭金を用意するメリットとデメリットも紹介するので、金額を検討する際の参考にしてみてください。
家を購入するときの頭金の相場
住宅ローンを利用して家を購入するとき、いくらくらい頭金を用意している人が多いのでしょうか。
頭金の相場
日本住宅金融支援機構が実施した調査によると、家の購入代金に占める頭金(自己資金・手持金)の割合の平均は次のとおりです。
全国 | 首都圏 | 近畿圏 | 東海圏 | その他 の地域 |
|
---|---|---|---|---|---|
注文住宅 | 16.7% | 18.9% | 17.9% | 15.9% | 15.5% |
土地付注文住宅 | 9.3% | 9.9% | 9.2% | 8.6% | 8.9% |
建売住宅 | 7.5% | 7.9% | 7.9% | 5.7% | 7.2% |
マンション | 17.4% | 17.9% | 17.7% | 12.6% | 17.4% |
中古戸建 | 8.2% | 9.2% | 6.9% | 6.2% | 8.0% |
中古マンション | 13.8% | 14.1% | 13.8% | 11.1% | 13.7% |
出典:2021年度 フラット35利用者調査(日本金融支援機構)、資金調達内訳の手持金の割合をもとに筆者作成
頭金の割合は、一戸建てやマンションといった取得する家の種類だけでなく地域によっても差があることがわかります。全国平均では、家の購入代金の約7〜17%が相場です。
用意しておきたい金額の目安は家の購入代金の10〜20%
家を購入するときは土地の購入代のほか、さまざまな手数料や税金がかかります。家の取得にかかるこれらの諸費用は、基本的に現金で支払わなければなりません。諸費用の目安は、家の購入代金の5〜10%です。
諸費用まで含めると、家の購入代金の10〜20%が家を購入する時点で用意しておきたい金額の目安となります。
家を購入するときの頭金の金額を決めるポイント
実際に頭金をいくらにするかは、それぞれの事情を考慮して決めるべきものです。考慮すべきポイントとしては、主に次のようなものがあります。
借入可能額
借入可能額(融資限度額)は、年収に占める年間返済額の割合(返済比率)などをもとに金融機関の審査によって決まります。
借入可能額が家の購入代金を下回る場合、その差額は頭金として用意しなければなりません。場合によっては購入する物件の見直しも必要になるでしょう。
月々の返済額
返済期間や適用金利などの条件が同じ場合、月々の返済額は頭金を増やすほど減り、頭金を減らすほど増えます。無理なく返済を続けられるように、月々の返済額とのバランスを考えて頭金の金額を決めましょう。
適用金利
頭金の割合によって適用金利が変わる場合もあります。
例えばフラット35の場合、頭金の割合が1割未満(融資率9割超)になると適用金利が高く設定されます。
頭金の割合(融資率) | 適用金利(借入金利) |
---|---|
1割以上(9割以下) | 年1.480% |
1割未満(9割超) | 年1.740% |
※伊予銀行・長期固定金利住宅ローン(住構買取型)<【フラット35】返済期間:21年以上35年以下>(2022年10月適用金利)
頭金の割合で金利が変わる場合、頭金を増やして低い金利の適用を受けたほうが返済額(利息額)は減るため、一般的には有利です。
諸費用
家を購入するときには、以下のような諸費用がかかります。
- 住宅ローンの融資手数料や保証料
- 仲介手数料(中古物件の場合)
- 登記費用
- 不動産取得税
- 火災保険料 など
諸費用は現金ですぐに支払う必要があり、頭金よりも優先順位の高い資金です。まずは諸費用の支払いに必要な資金を確保した後で、頭金に充てる金額を決めましょう。
手元に残しておきたい金額
すぐに使う必要がないからといって、手元にある資金すべてを頭金にしてしまうのはおすすめできません。
生活防衛資金の確保
住宅ローンの返済は、長期にわたるものです。そのため、返済の途中で急な病気や失業などでまとまったお金が必要になったり、収入が減少したりすることが考えられます。
このような事態に備えるためにも「生活防衛資金」を確保しておく必要があります。生活費の半年〜1年分は、すぐに使える預金で手元に残しておきましょう。
近いうちに必要な資金の確保
子どもの教育資金や車の購入資金といった、住宅ローンの返済期間中に必要となる資金も確保しておかなければなりません。住宅ローンは、他のローンに比べて金利が低いという特徴があります。そのため、お金が足りなくなる心配がある場合には、頭金を減らして住宅ローンの借り入れを増やす方法がおすすめです。手元に残しておいたお金を使うことで、他のローンを利用するよりも負担を抑えられます。
頭金を増やすメリット
頭金を増やすと、次のようなメリットが期待できます。
利息負担が軽減される
頭金を増やすと借入額が減るため、利息負担が軽減されます。
返済期間が同じ場合、利息が減れば月々の返済額も抑えられます。月々の返済額を変えずに、返済期間の短縮も可能です。
適用金利が下がる
頭金の割合(融資率)に応じて適用金利が決まる住宅ローンの場合、頭金を増やすことで適用金利が下がります。
購入できる物件の選択肢が広がる
頭金を増やせば住宅ローンの借入可能額以上であっても購入できるため、物件の選択肢が広がります。
頭金を増やすデメリット
頭金を増やすと将来の返済負担を減らせる反面、次のようなデメリットもあります。
頭金を用意するための時間がかかる
もともと十分な資産を持っている人を除けば、頭金を増やそうとすればするほど、その用意に多くの時間がかかります。頭金の用意に時間がかかって住宅の購入時期が遅れると、希望する物件を購入できなくなるかもしれません。また、ローンの返済計画やライフプランが狂ってしまう可能性もあります。
賃貸住宅に住んでいる場合は住宅を購入するまでの間、家賃を払いながら頭金を貯めていかなければならず、生活が苦しくなるかもしれません。
手元資金が減る
手元資金のほとんどを頭金に使ってしまうと、いざというときにお金が足りなくなるおそれがあります。
利息負担を軽減するには、繰り上げ返済という方法もあります。繰り上げ返済であれば家計の状況に合わせて自分の好きなタイミングと金額で行えるため、無理なく返済を進められるでしょう。
住宅ローン控除額が減る
住宅ローン控除とは、住宅ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除できる制度です。住宅ローン控除額は住宅ローン残高に比例することから、借入額が多いほど控除額は増えます。
例えば住宅ローンの適用金利が控除率を下回るケースでは、支払う利息よりも控除される税金が多くなることがあります。この場合、頭金を増やすと住宅ローン控除額が減るためデメリットとなってしまうのです。
まとめ
家の購入に必要な金額の目安は、頭金と諸費用を含めた「家の購入代金の10〜20%」です。この金額の目安は、一人一人の状況に応じて異なります。頭金を増やすメリットやデメリットをよく確認して決めるのがおすすめです。不安な場合は、自身の条件に合わせたシミュレーションや、銀行の担当者やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみましょう。
証券会社・生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。