ハイパーインフレに強い資産とは?
日本で起こる可能性や起こったときのリスクについて

ハイパーインフレの状況下では現金の価値は目減りするため、他の金融資産をもつことがおすすめです。この記事では、ハイパーインフレとはどのような状況を指すのか解説します。ハイパーインフレに強い資産も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそもハイパーインフレとは?

ハイパーインフレとは、物価が過度に上昇してしまうことを意味します。通常のインフレを超え、通貨が信用を失ってしまったときに起こりうる状態です。
ハイパーインフレが起こると物にありえないような値段が付き、札束もただの紙切れ同然の価値となります。例えば、パン1個に1万円の値段がつく、1万円札が感覚的に1円程度の価値になるといったイメージです。
ハイパーインフレにより物価が上がると家計を圧迫したり、通貨の均衡が取れず経済が狂ってしまったりするのが問題です。
日本でハイパーインフレが起こる可能性は?

日本でもここ1年間で物価上昇が続いており「日本もハイパーインフレになってしまうのでは」と心配する人もいるでしょう。しかし現状、日本でハイパーインフレが起こる可能性は低いと考える経済評論家が多いです。
ハイパーインフレが起こる条件として、国の信用力が失われることや極端な物不足に陥ることなどが挙げられます。このような条件が揃ったことにより、日本でも過去にハイパーインフレに近い状況が起こりました。
戦後の日本で起きたハイパーインフレ
日本は第二次世界大戦の敗戦後しばらく、ハイパーインフレだったとされています。戦後の1945年8月から1949年の間で、約70倍まで物価が上昇しました。
アメリカの政治家・銀行家であるジョセフ・ドッジにより、ハイパーインフレ解消に向けて財政均衡化政策が立案されました。この政策はドッジラインと呼ばれています。この財政均衡化政策により、戦後のハイパーインフレは1949年頃に解消されました。
出典:戦後ハイパー・インフレと中央銀行(日本銀行金融研究所)
ハイパーインフレではないという見方もある
経済学者であるフィリップ・ケーガンの定義にのっとると、ハイパーインフレ率は約130倍からとされています。この定義であれば、戦後の日本は約70倍だったため該当しません。
インフレとしては極めて高いけれどもハイパーインフレではない、という見方もできるでしょう。
ハイパーインフレに陥った他国の事例
日本以外にも、いくつかの国でハイパーインフレが発生しています。ここでは、ハイパーインフレが起きた3ヶ国の事例を紹介します。
ハンガリー
ハンガリーでは、日本と同時期にハイパーインフレが起こっていました。ハンガリーのハイパーインフレはかなり深刻な状況に陥り、世界でもっとも高額な紙幣が発行されるまでに至りました。発行された紙幣の額は、1垓(ガイ)ペンゲーとなります。
垓とは数の単位の1つで、以下の位置にあるものです。
1.一
2.十
3.百
4.千
5.万
6.億
7.兆
8.京
9.垓
ドイツ
ドイツでは第一次世界大戦後、ハイパーインフレが起こりました。ドイツは第一次世界大戦で他国への多額の賠償金が発生し、資金調達のため大量に紙幣を発行しました。それによりインフレが起きたとされています。
ジンバブエ
ジンバブエでは2000年頃からインフレが加速し、ハイパーインフレの状況に突入しました。ジンバブエ政府の政策が農業の崩壊や物不足を招き、物価が上昇したためです。通貨の供給量を減らさなかったことも、要因のひとつとなっています。
また、同時期に富裕層が海外へ脱出したことが、国自体の治安悪化も招きました。そのため、当時のジンバブエドルの価値が下がり、ハイパーインフレに拍車をかけた背景があります。
ハイパーインフレに強い資産4選

ハイパーインフレの状況下では、現金の価値は目減りしていきます。資産減少リスクを防ぐ方法として、複数の金融資産を保有しておくことがおすすめです。
金融資産の中でもデフレに強い資産・インフレに強い資産が存在します。ここでは、ハイパーインフレに備えるための資産を4種類紹介します。
強い資産1.株式・投資信託などの有価証券
ハイパーインフレに強い資産として、まずは株式や投資信託などの有価証券が挙げられます。株式・投資信託は現金と違い、価値が目減りすることはありません。企業の収益や経済が上向きならば、株式にも良い影響が生まれます。円とのリスク分散という意味では、輸出企業や海外大手企業などの株を保有するのも1つの手です。
投資信託に関しては、つみたてNISAのような個人でも始めやすい投信制度が整っています。早く始めれば複利効果も期待できるため、積極的に制度の利用を検討してみましょう。
強い資産2.外貨預金
「株式投資や投資信託は、よく分からないし怖い」と感じる人は、外貨預金から始めてみるのもおすすめです。外貨預金は、円の代わりに米ドルやユーロなど外国の通貨で資産を保有する方法です。預け入れ先通貨の為替変動に伴い、利益が出る場合があります。
また外貨預金の金利は、普通預金より高い傾向なのもお得な点です。預け入れた後はほとんど運用の必要はなく、資産運用初心者にもおすすめの方法です。
強い資産3.不動産
投資資金に余裕があれば、不動産を保有するのもリスク分散に繋がります。ハイパーインフレでは不動産の価値が値上がりします。例えばマンションを保有していれば、家賃を値上げしたり土地の価格を上げたりすることで、利益を得ることが可能です。
ただし、ハイパーインフレでも給料が上がっていない状況下では、賃料アップが難しいことがあります。また、賃貸需要の情報や毎月のコストなど知識も必要になるため、ある程度投資に慣れている中級者向けの資産運用となります。
強い資産4.コモディティ(金・エネルギーなど)
コモディティもハイパーインフレに強い資産です。コモディティは実物資産とも呼ばれ、次のような商品を指します。
・貴金属(金、プラチナなど)
・エネルギー資源(天然ガス、原油など)
・農産物(小麦、トウモロコシなど)
このような実物資産は、物価の高騰とともに値段が上がります。そのため、リスク分散という意味でおすすめの資産です。
注意点としては、値段変動の予測が難しいことがあります。また、商品先物取引の場合はリスクや手数料が比較的大きくなります。コモディティ投資を行う場合は、投資信託やETFなどから始めるのが良いでしょう。
まとめ
日本がハイパーインフレに突入する可能性は低いとはいえ、備えておくに越したことはありません。資産が減少するリスクを抑えるには、1つの資産を集中保有せず分散保有することです。現金や普通預金に資産が集中している人は、株式・投資信託・外貨預金なども検討してみましょう。

地方銀行へ入社し、貯金・ローンなど金融商品の販売に従事。 その後、不動産業界へ転職して社会保険や労務管理を担当しながらFP資格を取得。自身の経験から“お金を無駄にしないための”アドバイスをおこなう。