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2023年の税制改正大綱を解説!
注目すべき4つの変化概要や今後への影響とは

2023/05/16
(提供元:CyberKnot

2023年度の税制改正大綱が決定しました。相続や贈与を中心に、さまざまな制度の見直しが行われています。では、今後の生活にどのような影響があるのでしょうか。今回は、2023年税制改正大綱で注目すべき4つの変更ポイントについて解説します。

2023年税制改正大綱のポイント①相続時精算課税で基礎控除の創設

2023年税制改正大綱のポイント①相続時精算課税で基礎控除の創設

2023年税制改正大綱では、相続時精算課税制度の見直しが行われました。基礎控除が創設されたことで、今後は使い勝手が大きく向上する可能性があります。

相続時精算課税とは

相続時精算課税は、贈与税の課税方法の1つです。60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に対して財産を贈与した場合に選択できます。贈与財産の合計額が2,500万円以内であれば、贈与税はかかりません。2,500万円を超えた部分は、一律20%の税率で贈与税額を計算します。

相続時精算課税が適用された贈与財産は、相続税の課税対象に含まれます。贈与税の負担は軽減されますが「税金の支払いを相続時に先送りしている」とも考えられます。そのため、相続時精算課税はこれまで節税効果を期待できませんでした。

2024年から年110万円の基礎控除の創設

しかし、2023年税制改正大綱において、相続時精算課税に基礎控除の創設が盛り込まれました。2024年1月1日以後の贈与については、毎年110万円まで贈与税がかからなくなります。相続税の課税対象にも含まれず、贈与税の申告も不要です。今後は、年110万円を超える部分の累計額について、特別控除額2,500万円が適用されます。

今回の制度見直しは早期の資産移転を促し、経済の活発化につなげる狙いがあります。基礎控除の創設により贈与税と相続税の節税効果が期待できるため、今後は利用者の増加が見込まれます。

2023年税制改正大綱のポイント②暦年課税の相続税加算期間が延長

2023年税制改正大綱のポイント②暦年課税の相続税加算期間が延長

2023年税制改正大綱では、相続時精算課税と合わせて暦年課税の見直しも行われました。贈与財産の相続税加算期間が延長されるため、今後は贈与税の負担が増える恐れがあります。

暦年課税とは

暦年課税も、贈与税の課税方法の1つです。1年間(1月1日〜12月31日)の贈与財産の合計額をもとに、贈与税額を計算します。贈与財産を取得した場合、相続時精算課税を選択しなければ暦年課税が適用されます。

暦年課税は、贈与額が基礎控除額年110万円の範囲内であれば贈与税がかかりません。年110万円を超える場合は、超える部分の金額に応じて10〜55%の税率で贈与税額を計算します。

ただし、贈与者の「死亡3年以内」に行われた贈与については、年110万円以内であっても相続税の課税対象に含まれます。

2024年から相続税加算期間が死亡前7年に延長

2023年税制改正大綱では、暦年課税の相続税加算期間が見直されました。2024年1月1日以後の贈与については、現行の「死亡前3年以内」から「死亡前7年以内」に延長されます。延長された4年間に受けた贈与のうち、総額100万円までは相続財産に加算されません。

暦年課税の相続税加算期間が4年間延長されたことで、今後は贈与税の負担が増える恐れがあります。相続時精算課税との関係を理解して、有利な課税方法を選択する必要があるでしょう。

2023年税制改正大綱のポイント③教育・結婚・子育て資金の一括贈与の期限延長

2023年税制改正大綱のポイント③教育・結婚・子育て資金の一括贈与の期限延長

教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与については、一定額まで贈与税が非課税になる特例があります。2023年税制改正大綱では、これらの特例の期限延長が盛り込まれました。一括贈与をうまく活用することで、贈与税の負担を軽減しながら子どもや孫に財産を渡せます。

教育資金の一括贈与は3年延長

教育資金の一括贈与は、祖父母などから教育資金の贈与をうけたときに、1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。2023年3月31日が適用期限でしたが、3年延長されます。

教育資金口座を開設し、金融機関経由で「教育資金非課税申告書」を提出することで非課税措置が適用されます。教育資金口座から払出しや支払が行われた場合は、領収書等の提出が必要です。入学金や授業料のほか、学習塾やスポーツなどの費用、通学定期代なども非課税の対象となります。

結婚・子育て資金の一括贈与は2年延長

結婚・子育て資金の一括贈与は、父母などから結婚・子育て資金の贈与をうけたときに1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。2023年3月31日が適用期限でしたが、2年延長されます。

結婚・子育て資金口座を開設し、金融機関経由で「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出することで非課税措置が適用されます。結婚・子育て資金口座から払出しや支払が行われた場合は、領収書等の提出が必要です。挙式費用や新居の家賃・敷金、出産費用、子どもの医療費・保育料などが非課税の対象となります。

住宅取得等資金の非課税は延長なし(2023年末で終了)

住宅取得等資金の非課税は、父母などから住宅取得のために資金援助を受けた場合に利用できる贈与税の非課税措置です。一定の要件を満たすと、最大1,000万円まで贈与税がかかりません。2023年12月31日が適用期限で延長の予定はなく、このまま制度終了となる見込みです。

マイホーム購入の予定があり、資金援助を得られる場合は、住宅取得等資金の非課税を利用するかを早期に検討しましょう。

2023年税制改正大綱のポイント④NISA制度の抜本的拡充・恒久化

2023年税制改正大綱のポイント④NISA制度の抜本的拡充・恒久化

NISAは、投資の利益に税金がかからないお得な制度です。2023年税制改正大綱において、NISA制度の抜本的拡充・恒久化が盛り込まれました。2024年からは、新しいNISA制度がスタートする予定です。

非課税保有期間が無期限化

新NISAでは、株式や投資信託などの非課税保有期間が無期限化されます。現行のつみたてNISAは最長20年間、一般NISAは最長5年間ですが、2024年以降は期限がなくなります。資金が必要になるまで、ずっと非課税で保有可能です。

つみたてNISAと一般NISAは併用可能に

新NISAは、つみたてと一般の併用が可能になるのも重要なポイントです。現行のつみたてNISAは「つみたて投資枠」一般NISAは「成長投資枠」に名称が変わります。年間投資枠は、つみたて投資枠が3倍の年120万円、成長投資枠が2倍の年240万円に拡大する予定です。両者は併用可能になるため、年360万円まで非課税で投資できます。

まとめ

2023年税制改正大綱では、相続や贈与、NISAなどの見直しが行われています。特に生前贈与を検討している場合は、相続時精算課税や暦年課税、一括贈与の特例の変更点を理解しておくことが大切です。税負担を軽減するためにも、今回紹介した4つの変更ポイントを押さえておきましょう。



著者プロフィール

著者 大西 勝士

AFP、2級FP技能士

会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より金融ライターとして活動。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数の金融メディアで執筆中。

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