【2023年度最新版】住宅税制改正のポイント
マイホーム新築・購入時に使える税制とは?
2023年度の住宅税制改正は、2022年度と比べると大幅な変更はありませんでした。しかしマイホームを新築・購入する際は、延長・継続される住宅税制の内容・適用期限や、税制改正のポイントを理解しておくことが重要です。今回は2023年度の住宅税制改正のポイントについて解説します。マイホームの資金計画に影響を及ぼす住宅税制も多いため、しっかりと理解を深めていきましょう。
2023年度も延長・継続された住宅税制
「住宅ローン減税制度」や「住宅購入資金贈与の非課税枠」など、マイホームの新築・購入に使える税制の多くは、2023年度も延長や継続となりました。以下の項目からは延長・継続された住宅税制について詳しく解説します。
住宅ローン減税制度
住宅ローン減税制度は、住宅ローンを利用してマイホームを新築・購入した場合に、所得税の負担を軽減できる住宅税制です。住宅ローン減税制度を利用すると、年末のローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除できます。
2022年度の税制改正では住宅ローン減税制度の適用期限や控除率、控除期間などが大幅に見直されました。適用期限は2021年末から4年間延長され、2025年末までにマイホームを購入して入居した方が対象です。控除率については0.7%に引き下げられ、控除期間は新築の場合13年となっています。借入限度額については、住宅の環境性能によって異なります。
住宅ローン減税制度は2023年も利用できますが、2024年以降は最大限活用できない可能性が高いです。省エネ基準を満たさない「その他の住宅」は2024年以降に建築確認を受けた場合、住宅ローン減税制度の対象外となります。省エネ基準を満たす住宅であっても、2024年以降に入居すると借入限度額が縮小してしまいます。住宅ローン減税制度を最大限活用したい方は、早めの入居を検討しましょう。
住宅の環境性能等 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 | |
2022・2023年入居 | 2024・2025年入居 | |||
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 0.7% | 13年間※1 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | ||
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | ||
その他の住宅 | 3,000万円 | 0円※1 |
- ※1:その他の住宅は2024年以降に建築確認を受けた場合は原則住宅ローン減税制度の対象外ですが、2023年末までに建築確認を受けた場合は借入限度額2,000万円・控除期間10年となります。
住宅購入資金贈与の非課税枠
成人されている方がマイホームを購入するとき親や祖父母から資金援助を受けた場合に、一定額まで贈与税がかからない制度です。本特例を利用すれば最大1,000万円までは非課税となります。非課税枠は省エネ等住宅が1,000万円まで、省エネ住宅以外が500万円までとなります。贈与税は税率が高く負担が大きいため、住宅購入資金贈与を受ける場合は積極的に利用しましょう。
対象となる住宅 | 非課税枠 |
省エネ等住宅 | 1,000万円 |
上記以外の住宅 | 500万円 |
本特例は2023年も継続となりますが、適用期限が2023年12月31日までの贈与です。2024年以降は変更となる可能性があるため、今後の動きを注視していく必要があります。親や祖父母から住宅購入資金の援助を受ける予定の方は、マイホームを購入する時期に注意が必要です。
その他延長となる住宅税制
2023年度の税制改正では、マイホーム購入時に使える特例の延長も盛り込まれています。次の項目からは延長となる住宅税制について解説します。
固定資産税の減額措置
固定資産税の減額措置は、2023年も引き続き利用できます。固定資産税の減額措置は、新築一戸建て住宅の固定資産税を3年間、1/2に減額する措置です。マンションの場合は5年間、1/2に減額されます。本措置の適用期限は2022年度税制改正で2年間延長され、2024年3月31日までです。
本措置を利用するためには、居住部分の床面積が50m2以上280m2以下であるなど、適用要件を満たさなければなりません。さらにマイホームを購入した翌年の1月31日までに、自ら申告手続きをおこなう必要があります。
住宅に係る登録免許税の軽減措置
新築住宅の所有権保存・移転登記、抵当権設定登記にかかる登録免許税を軽減する措置です。2023年度の税制改正によって、適用期限が2024年3月31日まで延長されました。
本則税率 | 軽減税率 | |
所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% |
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% |
抵当権設定登記 | 0.4% | 0.1% |
認定長期優良住宅の特例措置
認定長期優良住宅は、耐震性、耐久性、可変性に優れ、適切な維持保全が確保される住宅です。一定の認定長期優良住宅を新築または購入した場合、登録免許税、不動産取得税、固定資産税などが軽減されます。
建物の所有権保存登記の登録免許税は、通常0.15%に軽減されるところ、長期優良住宅では0.1%に軽減されます。建物の不動産取得税の課税価格から控除できる金額は、通常より100万円多い1,300万円です。固定資産税は控除期間が通常より2年長い5年になります。軽減税率の適用期限は2024年3月31日までです。
認定低炭素住宅の特例措置
一定の認定低炭素住宅の新築または取得をおこなった場合、登録免許税が軽減される措置です。認定低炭素住宅とは、省エネルギー性能や低炭素化促進のための対策がとられていることなど一定の基準を満たし、二酸化炭素の排出を抑制した環境に優しい住宅です。
マイホームを新築・購入したときは所有権保存登記に伴う登録免許税が発生します。一般住宅の場合は登録免許税の軽減措置が適用されるため、所有権保存登記の登録免許税率は本則の0.4%より低い0.15%です。認定低炭素住宅の場合はさらに引き下げられ、登録免許税率は0.1%になります。本特例措置は2024年3月31日までに住宅を購入した方が対象です。
譲渡所得買換え特例
住宅の買換えで売却益が出た場合に、譲渡所得税の課税を繰り延べられる特例です。マイホームを2023年12月31日までに売却して新しいマイホームに買換えた場合が適用対象です。
「所有期間が10年を超えていること」「居住期間が10年以上であること」「譲渡対価が1億円までであること」など、譲渡する資産や買換え先資産についても適用要件を満たさなければなりません。
譲渡損失損益通算および繰越控除
マイホームの買換え・売却で譲渡損失が出た場合に、損益通算や繰越控除ができる特例です。損益通算を利用すれば、譲渡損失を他の所得と相殺できます。適用した年で損益通算しきれない場合は、売却した翌年以降の最大3年間にわたって繰り越せます。
譲渡損失損益通算および繰越控除についても、2023年12月31日までにマイホームを売却して、新しいマイホームに買換えた場合などが適用対象です。
土地の売買等に係る登録免許税の特例
土地を購入して所有権を移転登記する際の税率が2%から1.5%に軽減される特例です。2023年の税制改正によって適用期限が3年延長され、2026年3月31日までの時限措置となっています。
本則税率 | 軽減税率 | |
土地の売買による所有権移転登記 | 2.0% | 1.5% |
土地の所有権の信託登記 | 0.4% | 0.3% |
固定資産税 地価上昇時の税負担増緩和措置
通常、土地の固定資産税評価額は3年ごとに見直されます。しかし地価が高騰すると、納税者の負担も増えることから、税負担を緩和する措置が講じられています。
現在講じられている負担調整措置は、地価が上昇した際の課税標準額について、評価額の5%ずつを上限に加算するというルールです。2022年度は商業地についてはコロナ禍の影響を踏まえ、課税標準額の増加幅を評価額の5%から2.5%に抑制していましたが、2022年度末で終了しました。
2023年度住宅税制の変更
2023年度の税制改正では、相続税や贈与税に関する税制を中心に以下の変更点があります。相続税や贈与税は、親や祖父母などから資産を受け取る際に課税される税金です。次の項目からは2023年度住宅税制の変更点について解説します。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の親または祖父母などから受けた最大2,500万円までの生前贈与について、贈与税が非課税になる制度です。ただし控除された最大2,500万円の生前贈与は、贈与者が死亡した時点で相続財産に合算されます。生前贈与のタイミングでは贈与税はかかりませんが、相続発生時に相続財産としてカウントされ、相続税がかかる仕組みです。なお、2,500万円を超える贈与については、一律20%の贈与税が課せられます。
2023年度の税制改正では、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。以前は相続時精算課税制度を選択すると、年間110万円の基礎控除は受けられませんでした。しかし2024年度以降は相続時精算課税制度を選択しても、贈与額が年間110万円以下の場合は申告不要です。基礎控除の範囲内の贈与については、相続財産として加算されず相続税もかかりません。
暦年課税の新制度
暦年課税についても、2023年度に税制改正がありました。暦年課税とは1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与額に応じて贈与税を計算する方法です。暦年課税も基礎控除が設定されているため、年間110万円までの贈与であれば税金がかかりません。ただし相続開始3年以内の生前贈与は、相続財産に加算されて相続税がかかります。
暦年課税に関する2023年度の税制改正点は、生前贈与が相続財産に加算される期間が3年から7年に延長されたことです。つまり相続開始時から遡って7年以内に贈与された財産は、相続財産に加算され相続税の課税対象となります。4年〜7年以内の贈与については、相続財産の合計額から100万円が控除されますが、早めの生前贈与を心がけたほうが良いでしょう。
加算期間の延長は、2024年1月1日以降の贈与から適用されます。2026年に相続が発生した場合の加算期間は3年間で、2027年は4年間、2028年は5年間と徐々に延長される予定です。2031年1月1日以降は、加算期間が7年になります。
相続空き家の3,000万円控除
相続空き家の3000万円控除とは空き家を一定期間内に譲渡した場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できる制度です。近年は相続後にだれも利用しなくなり、空き家になるケースが増えている状況です。本制度によって空き家の売買取引が活発になり、空き家の発生を抑制することが期待されます。
2023年度の税制改正では、本制度の適用対象が拡充されています。改正前は売却前に売主が家屋を取り壊して更地にするか、耐震リフォームをおこなった場合が適用対象でした。改正後は、売却した翌年の2月15日までに取り壊しか耐震リフォームをおこなえば、適用対象になります。適用期間についても4年延長され、適用期限は2027年12月31日までです。適用対象の拡充と適用期間の延長によって、本制度を利用しやすくなるでしょう。
マンション長寿命化促進税制
2023年度の税制改正には新しく「マンション長寿命化促進税制」が盛り込まれています。マンションが一定の長寿命化工事を実施した場合に、工事翌年の固定資産税を一定割合減額するという特例措置です。減額割合は1/6~1/2の範囲で、市町村ごとに定めます。固定資産税の減額により修繕積立金を確保し、マンションの適切な修繕を後押しすることを目的に新設されました。
本特例措置の対象は築20年以上経過している10戸以上のマンションです。長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していて、必要な修繕積立金を確保しているマンションが対象になります。適用期間については、2023年4月1日から2025年3月31日までの間に完了した工事が対象です。
2023年の新築住宅購入で利用できる補助金制度
マイホームの新築・購入時は、条件を満たせば利用できる補助金制度があります。主な補助金制度は、以下の通りです。
- こどもエコ住まい支援事業
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)補助金
- 地域型住宅グリーン化事業
- LCCM住宅整備推進事業
- 各自治体の補助金制度
以下の項目からは、各補助金制度について詳しく解説します。
こどもエコ住まい支援事業
こどもエコ住まい支援事業では、子育て世帯または若者夫婦世帯が高い省エネ性能を有する住宅を新築・購入する場合に、1戸あたり100万円の補助金を受け取れます。
注文住宅を新築する方は、こどもエコすまい支援事業者と工事請負契約を締結することが必要です。新築分譲住宅を購入する方は、こどもエコすまい支援事業者と不動産売買契約を締結します。
補助金の交付申請手続きについては、こどもエコすまい支援事業者が代行するため自分で手続きをする必要はありません。交付申請期間は2023年3月31日~予算上限に達するまでとなっていて、遅くとも2023年12月31日までには終了します。さらに戸建て住宅の場合は交付決定~2024年7月31日までに完了報告が必要です。
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)補助金
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)補助金は、経済産業省・環境省による補助金制度で、ZEHまたはZEH+の対象となる住宅を建築・購入した場合に交付されます。
ZEHとは、太陽光発電などによるエネルギー創出と消費エネルギーの削減によって、エネルギー消費量をゼロにする住宅を指します。補助金の額は性能要件によって異なり、「ZEH」に認定された場合は55万円、より高性能な「ZEH+」に認定された場合は100万円となります。
補助金の申し込み手続きは、ZEHビルダーまたはプランナー(ハウスメーカー・工務店)がおこないます。公募期間が定められていて、申請は先着順です。予算に達したら終了するため、早めに応募しないと補助金を受け取れない可能性があります。
地域型住宅グリーン化事業
地域型住宅グリーン化事業は国土交通省による補助金制度です。省エネルギー性や耐久性が高い住宅を購入した場合に、補助金を受け取ることができます。地域型住宅グリーン化事業登録グループに所属する工務店に新築工事を発注する必要があります。
補助金の上限額は長期優良住宅が135万円、高度省エネ型(認定低炭素住宅)が110万円、ゼロ・エネルギー住宅が140万円です。事業者に補助金が交付され、施主は建築費が下がることによって間接的に恩恵を受けることができます。
LCCM住宅整備推進事業
LCCM住宅を建築した場合に補助金が交付されます。LCCM住宅とは、ZEHよりさらに省CO2化を進めた先進的な脱炭素化住宅のことです。家の建設から廃棄にわたるまで、ライフサイクルを通して二酸化炭素の収支をマイナスにします。
補助金の上限は1戸あたり140万円/戸かつ、設計費または補助対象工事の掛かり増し費用1/2以内です。掛かり増し費用とは、LCCM住宅の性能基準を満たすために一般的な住宅仕様をランクアップするのにかかった費用を指します。
LCCM住宅整備推進事業では、新築工事をおこなう事業者が補助金の申請をします。補助金を受け取れるのは竣工・引き渡しの後です。引渡し時に建築費用を立て替える必要がある点に注意しましょう。
各自治体の補助金制度
自治体の補助金制度を利用できる場合もあります。マイホームを新築・購入する予定の自治体のホームページなどを見て、補助金制度の内容を確認しましょう。
たとえば愛媛県には「地域材利用木造住宅利子補給制度」があります。本制度は住宅の主要部材に50%以上の地域材を利用し指定金融機関から融資を受ける場合に、最長5年間にわたって利子補給を受けられる制度です。三世代同居住宅を新築する場合は、利子補給の適用利率が0.2%プラスされます。
まとめ
2023年度の税制改正は相続税・贈与税に関する改正がポイントです。一方で「住宅ローン減税制度」や「住宅購入資金贈与の非課税枠」などは、2023年にマイホームの新築・購入する場合も引き続き利用できます。ただし適用期限が迫っているものもあるため、今後も延長されるのか廃止されるのかは注視していく必要があります。
税制や補助金の適用条件を満たしているのか判断が難しい場合は、1人で悩まずに専門家に相談するのがおすすめです。伊予銀行ではマイホームを新築・購入に関する相談を受け付けています。税制や補助金についてわからないことがあれば、お気軽にご相談ください。
大学卒業後、難しい用語を使わずに分かりやすくお金の知識を伝えたいと考え、独立系のFP事務所、保険会社での勤務を経てファイナンシャル・プランナー/ライターとして独立。現在はクレジットカード、保険の記事を中心とした執筆活動を行っている。