扶養内の年収の計算方法とシミュレーション!
月収の目安や条件なども解説

扶養内で働きたいと思っても、年収をどれくらいにすればよいのかわからない方も多いでしょう。そこでこの記事では、扶養内となる年収の計算方法をシミュレーションと共に解説します。月収の目安や条件なども紹介するので、扶養に入っている方はぜひ参考にしてみてください。
扶養内の計算方法と条件

扶養に入るためには、収入や勤務状況などさまざまな条件があるため、複雑に感じるかもしれません。扶養の仕組みを理解するために、まずは、扶養の種類と計算方法、条件について解説します。
扶養の種類
自分の収入で生計を立てられない配偶者や子などを対象に、経済的に援助することを扶養といいます。「税」と「社会保険」とでは仕組みや条件が異なるため、区別して理解する必要があります。
税法上の扶養
税法上の扶養に該当すると、扶養する人(世帯主など)の給与等から、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除などの所得控除を差し引くことができます(扶養控除は配偶者以外の子や親族が対象)。これにより、税金の負担が軽減されます。
世帯主などの配偶者が一定の要件を満たせば、配偶者控除や配偶者特別控除が適用されます。一方、子や親族などの配偶者以外について、扶養控除の対象となるのは、6親等内の血族と3親等内の姻族(婚姻によってできた親族)です。対象には子だけでなく、叔父と叔母、祖父母の兄弟、従兄弟の孫、配偶者の兄弟の子も含まれます。
また、年末時点で年齢が16歳以上で、扶養する人と生計を同じくしていなければなりません。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養とは、健康保険や厚生年金の扶養を指します。健康保険を運営しているのは、協会けんぽと健康保険組合の2つですが、ここでは加入者数の多い協会けんぽを例に解説します。
扶養の対象は配偶者と子、孫、兄弟姉妹で、扶養する人の収入で生計を維持している、75歳未満の人です。75歳以上は後期高齢者医療制度へ加入するため、扶養には入れません。
一方、厚生年金には、直接的な扶養という考え方はありません。しかし、会社員や公務員の配偶者として扶養されている主夫(主婦)は第3号被保険者として、個人で保険料を支払わなくても将来、老齢基礎年金を受け取れます。また、一定の要件を満たせば、厚生年金被保険者が死亡した場合は遺族厚生年金、障害状態になった場合は障害厚生年金の対象となります。
年収の計算方法と扶養内となる年収額
扶養で計算する年収には、給与だけでなく副業の収入や株式の運用で得た配当、生命保険の一時金、年金収入も含まれます。収入が給与のみの場合は計算が単純ですが、株式の配当や生命保険の一時金を受け取る年は注意が必要です。
次章以降で詳しく解説しますが、表にまとめた扶養内となる年収のシミュレーションを参考にしてください。
年収 | 該当する制度 | 詳細 |
---|---|---|
100万円超 | 住民税 |
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103万円超 | 所得税・住民税 |
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106万円以上 130万円以上 (※) |
社会保険 |
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201万円超 | 所得税 |
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- ※被保険者が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円以上
なお、表中の年収基準は、基礎控除しかない単純なケースでの金額です。生命保険料を支払っている場合など、ほかの所得控除を適用できる場合は金額基準が緩和されます。そのため、100万円を超えたとしても、必ずしもすべての人が住民税を課税されるわけではありません。
社会保険における扶養の条件
社会保険の扶養になるためには、勤務先や収入、労働時間の条件があります。
勤務先の従業員数
パートやアルバイトの人が社会保険に加入する条件は、勤務先の従業員数によって異なります。
2024年10月からは、従業員数51人以上の企業等が対象です。ただし、従業員数50人以下の企業等でも、従業員と企業等が合意することで社会保険に加入できます。
従業員数が基準を超え、年収が106万円(月収8.8万円)以上になると、パートやアルバイトでも健康保険と厚生年金に加入します。手取りは減ってしまいますが、傷病手当金と出産手当金がもらえるようになり、老後の年金収入も増えます。
収入に含まれない手当等
扶養に入る条件としての収入は基本給及び諸手当で判断しますが、次の手当等は収入に含まれません。
- 通勤手当(交通費)
- 精皆勤手当
- 家族手当
- 時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
- 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
給与と同時にこれらの手当が支給されている場合、差し引いた収入でシミュレーションしましょう。
労働時間と雇用期間
社会保険に加入するためには、従業員数だけでなく、労働時間や雇用期間の基準も満たさなければなりません。1週間の労働時間が20時間以上あり、雇用期間が2ヶ月を超える見込みがある場合は、パートやアルバイトでも社会保険に加入する必要があります。
扶養内となる平均年収のシミュレーション

ここからは、扶養内となる平均年収をシミュレーションで解説します。
年収が100万円を超える場合
正確には年収96.5万円を超えると、住民税が課税されます。住民税には、所得に応じて課税される所得割と、一定額以上になると課税される均等割があります。住民税のシミュレーションは、次のとおりです。
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つまり、松山市在住で課税所得が41.5万円以下であれば、住民税(所得割・均等割とも)は課税されません。松山市以外なら38万円以下となります。なお、均等割は、年間4,700円(市民税3,000円、県民税1,000円、国税の森林環境税700円)です。
たとえば、主婦がパートでの年収が101万円(月収約8万4200円)だった場合、以下のとおりとなります。
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年収が100万円から101万円になると、住民税は3,000円増える計算となります。なお、住民税には調整控除として一定額を差し引くため、所得割額は上記より減額されます。
年収が103万円を超える場合
たとえば、年収が104万円だった場合、本人に課税される所得税の計算は次のとおりです。
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年収が104万円の場合、本人の所得税額は500円となります。年収104万円は、月収で8万6,700円程度です。
しかし、年収が103万円を超えると、扶養していた人の給与から扶養控除を適用できなくなります。特に、19歳から23歳未満の子が扶養から外れてしまうと、扶養している人の所得税の負担は大きくなります。
年収が106万円以上または130万円以上の場合
年収106万円以上で社会保険適用事業者として働いている場合、社会保険料を負担するため、手取りの金額が減る可能性があります。社会保険の加入条件については前述しましたが、改めてまとめると次のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 給与が月額8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 従業員数51人以上の企業で働いている
上記の要件はすべて満たす必要があります。
年収が130万円以上になると、月額や労働時間などは関係なく社会保険の扶養から外れ、社会保険料の支払いが必要になります。
健康保険に加入することで手取りは減りますが、傷病手当がもらえたり出産手当金がもらえたりするメリットがあります。また、厚生年金に加入できるため、将来受け取れる年金額も増えます。
ちなみに、月の給与が変動しやすいパートの場合は対象外になる(社会保険に加入しなくてよい)可能性があります。
年収が180万円以上の場合
年収が180万円以上になると、60歳以上または障がい者は扶養から外れ、社会保険の支払いが必要になります。年収が180万円の場合は、月収で15万円ほどです。年収180万円以上でも状況によっては扶養に入れる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
年収が201万円を超える場合
年収が201万円6,000円を超えると、扶養していた人が配偶者控除を受けられなくなります。この場合、扶養していた人の所得控除が減り、課税所得が増えて税金が高くなるため、注意が必要です。年収が201万6,000円は、月収にすると16万8,000円ほどです。
まとめ
年収を扶養内に収めるためには、月々の平均収入をシミュレーションする必要があります。扶養を外れるのかそのまま入り続けるのかは、家族の勤務状況などを考慮するのが大切です。扶養されている本人と世帯年収の合計などを、今回紹介した計算方法で確かめてみてください。

2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。