NISAのロールオーバーとは?
制度の条件や対象、管理の方法などを解説

NISAには、ロールオーバーという制度があります。NISAの利用を検討している人も、ロールオーバーという言葉を聞いたことがあるかもしれません。では、ロールオーバーとはどのような制度なのでしょうか。今回は、NISAのロールオーバーの制度についてや、2024年から始まる新NISAではどうなるのかを解説します。
NISAのロールオーバーとは?

まずは、ロールオーバーとはどういった制度なのかを確認していきましょう。
非課税期間が終了した際に翌年の非課税投資枠に移行すること
ロールオーバーとは、非課税期間が終了した際に、保有する金融商品(株式や投資信託など)を翌年の非課税投資枠に移行することです。ロールオーバーできるのは1回のみで、対象は一般NISAとジュニアNISAです。
ロールオーバーするためには、同一の証券会社であるなどの条件があります。ロールオーバーすることで、値上がりが期待できる金融商品について最長10年間、運用できるメリットが得られるのです。
新NISAでは、ロールオーバー制度という特典がなくてもいいほどに生まれ変わります。次章で新NISAとロールオーバーについて詳しく解説していきます。
2024年からの新NISAはロールオーバーできる?

2024年からはこれまでのNISAが一新され、制度内容が大きく変わることになります。新NISAではロールオーバーがどうなるのか、確認していきましょう。
新NISAへのロールオーバーはできない
新NISAでは、ロールオーバーができません。現行NISAは2023年度まで、ロールオーバーは2022年度で終了しています。ただし、 2023年に購入した金融商品については、引き続き5年間の非課税投資枠を活用できます。
非課税期間終了後の選択肢
非課税期間が終了した場合、「課税口座への移管」か「年内の売却」のいずれかを選択します。
課税口座に移管する
課税口座に移管すると、課税対象となります。NISA口座での売却益は非課税ですが、損失はなかったものとなります。課税口座で損失が出た場合には、ほかの株式や投資信託と損益通算が可能です。
年内に売却する
保有する金融商品の価値が上がっているときに売却して、利益を確定する方法です。課税口座に移して売却すると、約20%の税金がかかります。しかし、年内の売却であれば、非課税で売却益の受け取りが可能です。
新NISAでの対応策と注意点

非課税期間終了後の選択肢の選び方は、含み益がある場合と含み損がある場合で異なります。新NISAへ向けて、対応策と注意点を確認しておきましょう。
含み益がある場合
含み益とは、すぐに金融商品を売却すると利益を得られる状態のことです。
売却する
含み益がある場合は売却して利益を確定させ、そのお金を新NISAで活用します。利益は非課税のため、最後にNISAの恩恵を受けられます。
メリット
● NISAの非課税制度を活用できる。
● 投資資金を捻出できる。
注意点
● 運用成果が良好な金融商品を手放すことになる。
2027年まで保有する
2023年に購入した金融商品は新NISAとの併用が可能で、2027年までNISA口座で保有できます。ただし、新NISAと併用する場合は、別途の投資資金が必要となります。投資資金に余裕がある人は、検討してみてください。
メリット
● 良好な運用成果を継続できる。
注意点
● 値下がりする可能性がある。
含み損がある場合
含み損とは、すぐに売却すると損失が発生する状態のことです。
売却する
含み損がある状態で売却すると損失が発生してしまいますが、投資資金を捻出できます。
ただし、課税口座に移管してから売却してしまうと、損失がある状態でも税金がかかってしまいます。含み損がある場合、非課税期間が終了してしまう前に売却しましょう。
メリット
● 投資資金を捻出できる。
● 損失発生のうえ、課税される可能性を防げる。
注意点
● 損失が確定する。
2027年まで保有する
含み損がある状態で2027年まで保有する場合、含み益の発生を期待できます。ただし、損失が発生するだけでなく、課税対象になる可能性があることに注意が必要です。
例えば、NISA口座で120万円で購入した金融商品が移管時に100万円になっていた場合、取得価格が100万円となります。この金融商品を110万円で売却すると、10万円(120万円-110万円)の損失が出てしまいます。さらに、10万円(110万円-100万円)に対して課税されるのです。
メリット
● 運用成績の好転を期待できる。
注意点
● さらに値下がりする可能性がある。
● 損失が発生するうえに、課税される可能性がある。
まとめ
NISAのロールオーバーは、一定の非課税期間が終了後、その投資枠を翌年に持ち越すことができる制度でした。現行のNISA制度においてはロールオーバーの適用はなくなりますが、2024年から導入される新しいNISA制度では、非課税期間が恒久的になることから、長期的な資産運用におけるメリットが増すことが期待されます。何か不明点や疑問点が生じた場合は、早めに金融機関にお問い合わせをし、正確な情報を取得しておくと安心です。

2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。