投資信託の積立で成功させるには?
運用の目的や必要な対応などをわかりやすく解説

「投資を始めたいけれど知識もないし、まとまったお金もない」と最初の一歩を踏み出せない人もいるのではないでしょうか。そのような人には、初心者でも取り組みやすい投資信託の積立がおすすめです。この記事では投資信託の積立の仕組みや、成功するためのポイントについて解説します。
投資信託の積立とは?

最初に、投資信託の積立の特徴を知っておきましょう。
投資信託の積立の仕組み
投資信託の積立は、毎月一定額を買い付けながら積み立てていくやり方です。たとえば、毎月1万円のように金額と投資信託を決め、決めた金額で購入できる口数分の投資信託を購入し、積み立てていきます。投資信託の1口あたりの価格が10円であれば1,000口、5円であれば2,000口買えます。
投資信託の積立に適した運用の目的
投資信託の積立は、長期の資産形成に向いています。そのため、老後資金や教育資金のように10年以上の時間をかけての準備が運用目的として適しています。
投資信託の積立のシミュレーション
投資信託の積立の効果を試算してみましょう。毎月2万円ずつ利回り2%(年率)で積み立てた場合の元利合計は、積み立てた期間によって以下のようになります。なお、資産には金融庁の資産運用シミュレーションを使用します。
元本 | 運用益 | 元利合計 | |
10年 | 240万円 | 25万4,393円 | 265万4,393円 |
20年 | 480万円 | 109万5,937円 | 585万5,937円 |
30年 | 720万円 | 265万4,508円 | 985万4,508円 |
出典:金融庁「資産運用シミュレーション」
積立期間によって元本は10年で240万円、20年で480万円、30年で720万円と、20年後は10年後の2倍、30年後は3倍となります。しかし、20年後の運用益は10年後の約4倍、30年後は約10倍です。
このように長期になるほど運用益が増えるのは、投資信託の積立では運用益を元本に加えながら運用していくためです。期間の経過ごとに元本が増え、得られる利益も増えていきます。
ただし、これはあくまで試算であり、将来の運用の成果は確実ではない点に注意しましょう。
投資信託の積立のメリット・デメリット

投資信託の積立は初心者にも取り組みやすい投資ですが、注意すべき点もあります。ここでは、投資信託の積立のメリットとデメリットを解説します。
投資信託の積立のメリット
まずは、投資信託の積立のメリットを見ていきましょう。
まとまったお金がなくても投資できる
積立投資は一括投資のようにまとまったお金がなくても、少額から気軽に取り組めます。投資信託の最低の購入金額は金融機関によって異なりますが、月々1,000円程度から始められる場合もあります。積立額の変更はいつでもできるので、家計の状況に合わせて調整が可能です。
初心者でも取り組みやすい
投資信託は投資についての知識や経験があまり必要ないため、初心者にも取り組みやすいといえます。経験豊富な投資の専門家が、投資家から集めたお金で株式や債券のような有価証券を運用するためです。銘柄を選んだり、売買のタイミングを図ったりを専門家に「お任せ」できるため、安心して始められます。
自動で買付が行われ、手間がかからない
積立投資は一括投資に比べて、取引の手間がかかりません。積み立てる銘柄と積立日を選んでおくと、自動的に投資信託の買付が行われるためです。値動きを追って買いのタイミングを見極める必要はなく、買い忘れの心配もありません。仕事や育児で忙しい人でも取り組みやすい投資です。
購入時期の分散によるリスク軽減を期待できる
投資信託を毎月一定の金額で購入し続けると、価格変動のリスクを抑える効果があるといわれています。以下の図は、毎月1万円ずつある投資信託を12回に分けて購入した例です。

画像出典:金融庁「投資の基本」より
この例では1月に1口10円だった価格が下がり続け、10月から値上がりし始めましたが、12月時点では5円です。しかし、12月時点で保有する投資信託の価額は、13万5,615円(5円×2万7,123口)と投資額の12万円を上回っています。
これは購入時期の分散により、買付価格が平均化されたためです。どんな場合でも必ず利益が出るとはいえませんが、積立のリスク軽減効果を知っておきましょう。
投資信託の積立のデメリット
投資信託の積立をするなら、以下のようなデメリットも知っておきましょう。
元本保証ではない
投資信託は預貯金のような元本を保証された運用商品ではないため、損をする可能性もあります。ただし、積立は価格変動を抑える仕組みであるため、長く続けることで元本割れリスクを抑える効果を期待できます。
短期間で大きな利益を狙えない
投資信託の積立では、短期間で元本が2倍になるような大きな利益を狙えません。少額の元手を積み上げて、時間をかけてリスクを軽減する仕組みであるためです。短期での値上がり益を得たい人は、株式現物のような投資と投資信託の積立を併用するとよいでしょう。
投資信託の積立を成功させるポイント

最後に、投資のリスクを抑えて投資信託の積立で利益を得るためのポイントを解説します。
少額から始める
初心者が投資信託の積立を始める場合、最初は少額で始めましょう。初心者はまず投資信託の値動きに慣れることが大切で、値下がりも経験してみる必要があります。投資信託の値動きが理解できたら、いくら積立にお金を回せるかを検討して無理のない金額で続けていくとよいでしょう。
長期運用に適したファンドを選ぶ
投資信託にはさまざまな種類がありますが、積立をするなら長期運用に向いたファンド選びが大切です。長期運用に適したファンドの条件には、以下のようなものがあります。
長期運用に適したファンド
●信託期間が無期限または20年以上
●販売手数料や信託報酬などのコストが低い
●毎月分配型でない
分散投資を心がける
投資信託の積立でリスクを抑えるには、投資対象の分散も大切です。投資信託はもともと分散投資のための運用商品ですが、国内外のように地域を分散したり、株式や債券など複数の資産に対象を分散したりしてリスクを上手に抑えましょう。
値動きに関係なく積立を続ける
投資信託の積立は、長期間の継続が効果的です。値動きに関係なく積立を続けることで、いつの間にか資産が育っていく仕組みです。経済変動で一時的に大きく値下がりがあっても慌てずに、積立を続けましょう。
積み立てるファンドを変えない
投資信託の積立では、積み立てるファンドをむやみに変えないようにしましょう。同じ銘柄を毎月異なる価格で買い付けることで、価格変動のリスクを抑える仕組みだからです。
しばらく価格が低迷したとしても、その間に口数は増えています。値下がりをチャンスと考え、同じ商品を買い続けましょう。
iDeCoやNISAを活用する
投資信託の積立はNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を通じてもできるので、活用しましょう。特定口座などで投資信託の積立をすると、利益に対して20.315%の税金がかかります。しかし、NISAやiDeCoにはそれぞれ税制優遇制度があり、運用益には課税されません。
iDeCoとNISAの特徴
iDeCoは私的な年金制度で、加入者自身が掛金を運用します。iDeCoには掛金拠出時、運用中、受け取り時それぞれに税制メリットがあります。ただし、60歳までは引き出しができないため、無理のない掛金で利用するとよいでしょう。
NISAは2024年から大幅に拡充され、非課税で投資できる金額も増えます。引き出しも自由にできるため、教育資金や老後資金のようなさまざまなライフイベントの資金準備に対応できます。
まとめ
投資信託の積立は、たとえ少額でも長く積み立てることで大きな資産形成も期待できる投資方法です。積立の設定をするだけで自動的に月々の買付が行われるため、 忙しい人でも手間をかけずに投資できます。始める前に仕組みを理解し、値下がりしても気にせずにコツコツ続けるようにしましょう。

国内生保で法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングを行っている。