ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できる?
仕組みとメリット、注意点を解説

ふるさと納税と住宅ローン控除は、どちらも税金を計算する際に控除が受けられる制度です。ところで、この2つは併用できるのでしょうか?本記事では、ふるさと納税や住宅ローン控除の仕組み、併用の可否、注意事項等を説明します。
ふるさと納税と住宅ローン控除は併用可能

ふるさと納税と住宅ローン控除は、同時に利用が可能です。まずは、それぞれの制度の仕組みと併用できる理由を説明します。
ふるさと納税とは
出身地や居住地に関係なく、自分が応援したい自治体に寄付ができる制度です。ふるさと納税をした場合、所得税や住民税において、寄付金控除が受けられます。控除額は寄付金額から2000円を差し引きした金額になります。
ふるさと納税は寄付を利用して実質的に税金を先払いする制度で、節税効果があるものではありません。しかし、自治体から返礼品をもらえることが多く、2000円の自己負担で特産品などが手に入るお得な制度として知られています。
ふるさと納税で控除を受ける場合には、次の2つの方法があります。
ワンストップ特例を利用する方法
寄附金控除は年末調整では適用できないため、原則として確定申告が必要です。しかし、ワンストップ特例を利用すれば、確定申告なしで控除を受けられます。ワンストップ特例を申請した場合、所得税からの控除は行われず、控除額の全額が翌年の住民税から控除される仕組みになっています。
ワンストップ特例を受けるには、寄付した後、寄付先の自治体に申請書と必要書類を提出します。ワンストップ特例が利用できるのは、寄付した自治体が5つ以下の場合に限られます。
確定申告をする方法
ふるさと納税後に確定申告で寄附金控除を受けるのは問題ありません。他の理由で確定申告が必要な場合、ワンストップ特例は使えず、寄附金控除を申告で受ける必要があります。もしワンストップ特例を既に申請していた場合は無効になるので注意が必要です。
ふるさと納税をして確定申告をした場合には、所得税と住民税の両方から控除が行われます。所得税分はその年に納めた税金から還付され、住民税分は翌年の税額計算の際に控除が適用されます。
住宅ローン控除とは
住宅ローン返済中の人の税負担を軽くするために設けられている制度です。条件を満たす場合には、年末の住宅ローンの残高の0.7%を所得税から控除できます。控除期間は新築住宅13年、中古住宅10年となっています。
住宅ローン控除は、計算された税額から直接控除額を差し引きできる「税額控除」です。所得税から優先的に控除しますが、控除額が所得税額を上回る場合には、残りを住民税額から差し引きできます。
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用で節税メリットが拡大
ふるさと納税でワンストップ特例を利用した場合には、住民税から控除が行われます。一方、住宅ローン控除では、所得税から優先的に控除が受けられます。両方を併用すれば、所得税、住民税のそれぞれについて無駄なく控除を受けられるケースが多くなるのです。
ただし、申告方法によっては、住宅ローン控除の控除額を全額差し引けないケースがあります。ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合には、各制度の仕組みや注意点を知っておきましょう。
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合の注意点

ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合、確定申告するかどうかで控除額が変わることがあります。
確定申告する場合、控除ロスが発生する可能性がある
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用して確定申告すると、所得税から両方の控除が適用されます。控除の順序は、まず寄附金控除が適用され、その後に住宅ローン控除が適用されます。
住宅ローン控除については、所得税から引ききれない分は住民税から差し引きます。ここで、住民税からの控除額には、前年度課税所得金額の5%(最大9万7500円)という上限があります。つまり、控除額によっては、住民税から差し引けない分が発生する可能性があるのです。
控除ロスを発生させないためには、ふるさと納税でワンストップ特例を申請する必要があります。しかし、次に説明するようなケースでは、ワンストップ特例を申請できず、確定申告しなければなりません。
住宅ローン控除初年度は確定申告が必要
会社員が住宅ローン控除を受ける場合、2年目以降は年末調整してもらえますが、初年度は確定申告が必要です。住宅ローン控除初年度はワンストップ特例が利用できないため、両方の制度を併用するメリットが小さくなる可能性があります。
医療費控除等を利用する場合にも注意
年間10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超える医療費がかかった場合には、医療費控除が受けられます。医療費控除は年末調整で適用できないため、会社員も確定申告が必要です。医療費控除を受ける場合、ワンストップ特例の申請はできません。
併用した場合の控除額のシミュレーション
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する場合の控除額を、大まかにシミュレーションしてみましょう。ここでは、年収400万円、独身の会社員のケースで考えてみます。
- 給与所得控除後の金額:276万円
- 所得控除の合計額:108万円(基礎控除48万円、社会保険料控除60万円)
- 課税所得金額:168万円
- 所得税:課税所得×5%=8万4000円
- 住民税:所得割10%+均等割5000円=17万3000円
※ 前年度も課税所得金額は同じと仮定
※ 住宅ローン控除の額は16万8000円(住民税からの控除上限額は8万4000円)
※ ふるさと納税で控除上限額4万2000円を寄付(寄付金控除額4万円)
ワンストップ特例を利用する場合
住宅ローン控除の16万8000円のうち、所得税から引ききれない8万4000円は住民税から全額控除できます。寄附金控除の4万円も全額住民税から控除できるので、控除ロスは発生しません。控除後の税額は、次のようになります。
- 所得税:0円
- 住民税:17万3000円-8万4000円-4万円=4万9000円
確定申告する場合
ふるさと納税の寄付金控除について、所得税からの控除は「所得控除」なので、課税所得から4万円を差し引きます。所得税率が5%なので、寄付金控除で軽減される税金は2000円、所得税は8万2000円となります。
住宅ローン控除16万8000円のうち、所得税で引ききれない金額は8万6000円です。しかし、住民税からは8万4000円しか控除できないため、2000円の控除ロスが発生します。
ふるさと納税については、所得税から2000円が控除されたため、3万8000円が住民税から控除されます。その結果、以下のようになります。
- 所得税:0円
- 住民税:17万3000円-8万4000円-3万8000円=5万1000円
ふるさと納税と住宅ローンの併用で損しない方法

ふるさと納税と住宅ローンを併用する場合、損しないための注意点をまとめてみます。
住宅ローン控除2年目以降はワンストップ特例を利用
ふるさと納税と住宅ローンを併用する場合、確定申告をすると控除ロスが発生することがあります。ふるさと納税をするなら、ワンストップ特例を利用しましょう。なお、住宅ローン控除の初年度は、確定申告せざるを得ません。2年目以降は、可能ならワンストップ特例を申請しましょう。
控除ロスが出ても併用した方がメリットになる
ふるさと納税をして確定申告をする場合、住宅ローン控除で受けられる控除額が減ってしまうことがあります。しかし、控除ロスの金額はそれほど大きくはならないのが通常です。
ふるさと納税には、自己負担2000円で返礼品がもらえるメリットもあります。住宅ローン控除が受けられる人も、ふるさと納税を活用するのがおすすめです。
まとめ
ふるさと納税と住宅ローン控除は同時に利用できます。住宅ローンを返済中でも、ふるさと納税により、自己負担2000円で返礼品を受け取ることが可能です。しかし、これらを併用した際に確定申告をすると、住宅ローン控除の控除額が影響を受けることがあります。そのため、ふるさと納税を行った際には、確定申告の手間を省くワンストップ特例の申請が推奨されます。ただし、他の理由で確定申告が必要な場合は、この特例を利用できませんので注意が必要です。

大学卒業後、複数の法律事務所に勤務。30代で結婚、出産した後、5年間の専業主婦経験を経て仕事復帰。現在はAFP、行政書士、夫婦カウンセラーとして活動中。夫婦問題に悩む幅広い世代の男女にカウンセリングを行っており、離婚を考える人には手続きのサポート、生活設計や子育てについてのアドバイス、自分らしい生き方を見つけるコーチングを行っている。