退職後は任意継続と国民健康保険どっちがお得?
メリットとデメリットを解説

退職後に選べる健康保険は、任意継続被保険者制度と国民健康保険です。それぞれの制度にはメリットとデメリットがあり、保険料の負担額や加入期間、扶養家族の扱いなどが異なります。この記事では、任意継続被保険者制度と国民健康保険の特徴を比較し、どちらが自分に合っているかを判断するためのポイントを解説します。
退職後の健康保険の選択肢

会社を退職すると、健康保険の取り扱いが変わってきます。退職後には、「任意継続被保険者制度」か「国民健康保険」のどちらかを選択するのが一般的です。それぞれの特徴を理解し、自分に合った選択をすることが重要になります。
任意継続とは
任意継続とは健康保険の任意継続制度のことで、任継(にんけい)とも呼ばれています。この制度では退職などで会社を辞めたあとでも、一定期間であれば従前の健康保険を継続できます。
任意継続を希望する場合は、2ヶ月以上の被保険者期間が条件で、退職日の翌日から20日以内に手続きすれば、退職前と同じ健康保険に最長2年間の加入が可能です。
ただし、任意継続では保険料を労使折半ではなく全額負担する必要があります。また、出産手当金や傷病手当金の給付を受けられなくなる点に注意が必要です。
国民健康保険とは
国民健康保険は、職場の健康保険に加入していない、自営業者やフリーランス、無職の人などを対象とした公的医療保険制度です。会社を退職したあとに任意継続を選択しなければ、一部を除き国民健康保険に加入することになります。
任意継続のメリットとデメリット

前述のとおり任意継続被保険者制度は、退職後でも一定期間であれば従前の健康保険に加入し続けられる制度です。ここでは、任意継続のメリット・デメリットをまとめます。
メリット
退職後に任意継続を選択するメリットとして、次のような点があります。
任意継続のメリット
- 在職中に加入していた健康保険で独自給付を行っている場合、引き続き独自給付を含めた従前の健康保険の給付を受けられる
- 扶養家族も引き続き同じ健康保険に加入できるため、保険料の負担を抑えられる
- 退職に係るほかの手続きとまとめて申請できる
特に独自給付を利用する可能性が高い場合は、任意継続のメリットが大きいといえるでしょう。
デメリット
次に、任意継続を利用する場合のデメリットを挙げます。
任意継続のデメリット
- 保険料を会社と従業員で折半できずに全額を負担することになる
- 任意継続の加入期間は最長でも退職後2年間と限定的で、他の健康保険に加入し直す必要がある
- 退職後20日以内に手続きしなければならないため、検討する期間が少ない
- 特に、保険料の負担には留意する必要があります。退職後の収入によっては、この点が任意継続を選ぶかどうかのポイントになるでしょう。
国民健康保険のメリットとデメリット

国民健康保険は、一般的に自営業者や無職の人が加入する社会保険制度です。ここでは、国民健康保険のメリット・デメリットを紹介します。
メリット
任意継続を選択せず、国民健康保険に加入するメリットを3つ紹介します。
国民健康保険のメリット
- 加入期間の制限がない
- 保険料は前年度の所得に基づいて決定されるため、収入が減少すると保険料も下がる
- 退職後、収入の減少に特別な事情がある場合、保険料の減免申請を行える
任意継続を選択できるとしても、いつかは国民健康保険に加入しなければなりません。任意継続を選択するメリットがなければ、国民健康保険に加入するのがおすすめです。
デメリット
最後に、国民健康保険のデメリットを3つ紹介します。
国民健康保険のデメリット
- 退職後1年目の収入が増える場合、その翌年の保険料も上がる可能性がある
- これまでの健康保険で扶養として加入していた家族は個別で国民健康保険に加入しなければならないため、世帯全体では保険料が上がる可能性がある
- 任意継続と同じく、出産手当金や傷病手当金による給付がない
上記のうち、扶養家族が各自で国民健康保険に加入しなければならない点は、考慮する必要があります。
任意継続と国民健康保険の比較

ここまでの任意継続と国民健康保険のそれぞれの特徴をまとめたものが、次の表です。
項目 | 任意継続 | 国民健康保険 |
---|---|---|
保険料 | 退職時の標準報酬月額を基に算出 全額自己負担(会社負担分も含め) 最長2年間は一定の保険料 |
前年の所得に基づいて算出 全額自己負担 所得によって大幅に変動する可能性あり |
継続期間 | 最長2年間 | 期間制限なし |
扶養家族の範囲 | 退職前と同じ扶養家族も継続して加入できる | 扶養家族も個別に国民健康保険に加入する必要がある |
手続き | 退退職後20日以内に手続き必要 一連の退職手続きと一緒に処理できる |
届出期間は2週間以内 市区町村の窓口での手続きが必要 扶養家族も別途手続きが必要 |
特に、保険料の額や扶養家族の範囲による違いで、金銭的負担の軽いほうを選ぶのが一般的です。退職後1年目に大幅な減収となる場合、前年の所得に基づいて算出される国民健康保険のほうが、保険料は抑えられます。任意継続は、2年目も退職時の標準報酬月額を基に算出されるため、保険料は変わりません。
まとめ
退職後の健康保険の選択肢である任意継続と国民健康保険には、それぞれメリットとデメリットがあります。保険料の負担額や加入期間、扶養家族の扱いなどを比較し、自身の状況に合わせて選択することが重要です。
特に、退職後1年目に大幅な減収となる場合は、2年目以降の保険料負担を考慮すると、国民健康保険のほうが有利になる可能性があります。ただし、保険料以外の要因も考慮し、総合的に判断することが必要です。

2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。