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厚生年金保険料はどう計算する?
シミュレーションを交えてわかりやすく解説

2024/09/05
(提供元:CyberKnot
厚生年金保険料はどう計算する?シミュレーションを交えてわかりやすく解説

厚生年金保険料は老後の資金準備のための支出として重要ですが、「計算方法が複雑でわかりにくい」と感じる方も多いのではないでしょうか。毎月の給与から天引きされる厚生年金保険料が高いと感じているだけで、どのような仕組みで引かれているか詳しく知らないかもしれません。この記事では、厚生年金保険料の基本的な仕組みから具体的な計算方法まで、シミュレーションを交えてわかりやすく解説します。

厚生年金保険料の基本

厚生年金保険料の基本

厚生年金保険料とは、誰がどのくらい負担するのでしょうか。まずは、厚生年金保険料の定義と計算の基礎となる標準報酬月額、標準賞与額について解説します。

厚生年金保険料とは

厚生年金は会社員や公務員を対象にした年金で、1階の国民年金、2階の厚生年金、3階の私的年金の3階建て年金制度の2階部分に該当します。この厚生年金の加入者が支払うのが、厚生年金保険料です。厚生年金保険料は所得が高い人ほど納めるべき額が増え、納めた保険料に応じて将来受け取れる年金額は変動します。
この厚生年金保険料には、1階部分の国民年金(保険料)も含まれています。また保険料は労使折半(勤務している会社と自身での折半)で納付しているため、給与から差し引かれる保険料の同額を企業や団体も納めていることになるのです。
ただし、企業や団体は子ども・子育て拠出金として、厚生年金保険の標準報酬月額と標準賞与額に拠出金率(0.36%)をかけた金額を追加で負担しています。

標準報酬月額

標準報酬月額は、厚生年金保険料を計算する際の基準となる金額です。この金額は実際の給与を一定の幅で区分し、その区分ごとに定められています。そのため、実際の給与額とは多少異なる場合があります。
標準報酬月額には上限と下限が設けられており、上限は65万円、下限は8万8,000円です。
なお、標準報酬月額には、基本給、役職手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、早出残業手当などの現金・現物給付が含まれます。また、年4回以上支給される賞与も、標準報酬月額の対象です。

標準賞与額

標準賞与額は、ボーナスなどの賞与(年3回以下)に対する保険料を計算する際の基準となる金額です。標準賞与額の上限は150万円で、実際の支給額から1,000円未満を切り捨てた額が標準賞与額となります。
標準賞与額は、毎月の給与とは別枠で計算されます。ボーナス額に保険料率をかければ、実額に近い保険料を求められるでしょう。
なお、賞与やボーナスのほか、期末手当、年末手当、夏季・冬季手当、繁忙手当などの一時的に支払われる手当も標準賞与額の対象となります。

厚生年金保険料の仕組み

厚生年金保険料の仕組み

厚生年金保険は労使でその保険料を負担し、公的年金制度を支えています。この章では、毎月の給与から天引きされる保険料とボーナス(賞与)に対する保険料について、詳しく説明します。

毎月の給与から天引きされる保険料

厚生年金保険料を詳しく試算するためには、実際の標準報酬月額から厚生年金保険料を算出する仕組みを理解する必要があります。
厚生年金保険料は標準報酬月額に保険料率(18.3%)をかけて算出しますが、労使で折半するため実際の負担は半額です。標準報酬月額は給与を一定の幅で区分しており、その区分の一部が下記の表です。

等級 標準報酬月額 報酬月額の範囲 厚生年金保険料全額 厚生年金保険料折半額
17 20万円 19万5,000円 ~ 21万円 2万3,640円 1万1,820円
18 22万円 21万円 ~ 23万円 2万6,004円 1万3,002円
19 24万円 23万円 ~ 25万円 2万8,368円 1万4,184円
20 26万円 25万円 ~ 27万円 3万732円 1万5,366円
21 28万円 27万円 ~ 29万円 3万3,096円 1万6,548円
22 30万円 29万円 ~ 31万円 3万5,460円 1万7,730円
23 32万円 31万円 ~ 33万円 3万7,824円 1万8,912円
24 34万円 33万円 ~ 35万円 4万188円 2万94円
25 36万円 35万円 ~ 37万円 4万2,552円 2万1,276円
26 38万円 37万円 ~ 39万5,000円 4万4,916円 2万2,458円

出典元:令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)

例えば、給与の額が4月が30万円、5月が32万円、6月が28万円の場合の3ヶ月の平均額は30万円となり、上記の表に当てはめると22等級の30万円が標準報酬月額になります。この標準報酬月額に保険料率をかけた金額が、保険料の額となります。

ボーナス(賞与)から天引きされる保険料

一方、税引き前のボーナスが92万5,240円の場合、1,000円未満を切り捨てた92万5,000円が標準報酬額となります。これに、保険料率をかけて求めます。

厚生年金保険料の計算方法(シミュレーション)

厚生年金保険料の計算方法(シミュレーション)

ここでは、標準報酬月額が30万円、夏のボーナスが60万円、冬のボーナスが90万円のケースを例に、厚生年金保険料の計算方法を具体的に見ていきます。

毎月の給与に対する保険料

標準報酬月額が30万円の場合、月額の厚生年金保険料は以下のように算出します。

  • 30万円×18.300%(保険料率)= 5万4,900円
  • 5万4,900円÷2=2万7,450円(労働者の実際の負担額)

よって、毎月の給与から2万7,450円が天引きされます。

ボーナス(賞与)に対する保険料

ボーナスに対する保険料も算出してみましょう。それぞれのボーナスに対する保険料は、次のようになります。

  • 夏のボーナス(60万円)に対する保険料:60万円×18.300%= 10万9,800円
  • 夏のボーナス(60万円)に対する労働者負担:10万9,800円÷2=5万4,900円
  • 冬のボーナス(90万円)に対する保険料:90万円×18.300%=16万4,700円
  • 冬のボーナス(90万円)に対する労働者負担:16万4,700円÷2=8万2,350円

よって、ボーナスに対する年間の保険料の合計は27万4,500円、労働者負担の合計は13万7,250円となります。

年間保険料を算出

年間の保険料総額は、毎月の保険料12ヶ月分とボーナスの保険料を合算して計算します。

  • (5万4,900円 × 12ヶ月)+27万4,500円=93万3,300円

労働者の年間負担額は、この半分の46万6,650円となります。

まとめ

厚生年金保険料は、私たちの給与から毎月天引きされる金額のひとつです。保険料は労使折半で給与によって異なり、支払う保険料が多いほど将来受け取れる年金額は増えます。
厚生年金保険料の仕組みについて理解することは、自分で稼いだお金が何にどのように使われるかを把握し、将来の年金額により興味を持つきっかけになります。この記事を参考に、公的年金制度をはじめとする日本の社会保障制度について、理解を深めていきましょう。



著者プロフィール

著者 藤 孝憲

CFP®・宅地建物取引士(未登録)・住宅ローンアドバイザー・証券外務員2種・DCプランナー2級・エクセルVBAエキスパートなど

2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。

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