【夫婦向け】年金の平均受給額は?
老後に必要な資金の目安も知っておこう

老後の生活設計において、年金受給額と生活費の目安を把握することは重要です。この記事では、さまざまな統計データをもとに、年金の平均受給額と老後の必要生活資金を紹介します。老後の生活資金準備のために必要な情報も提供するため、ぜひ参考にしてください。
夫婦ふたりの年金はどのくらい?

夫婦ふたりの年金受給額は、それぞれの加入履歴や保険料納付状況によって異なります。また、一般的な会社員夫婦の場合と、自営業者夫婦の場合でも大きく金額が変わってきます。
まずは、典型的なパターンごとの年金受給額の目安と、老後30年間での総受給額について見ていきましょう。
会社員の平均年金額はひとり14.5万円
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金のみの受給者の場合、平均月額は約5万6,000万円です。また、国民年金と厚生年金の両方を受け取れる場合、平均月額は約14万5,000万円となっています。
会社員や公務員の場合は国民年金と厚生年金の両方を受け取れますが、自営業者や専業主婦などは国民年金のみとなります。
出典元:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」
年金額は年金の種類や所得額によって変わる
ここで、簡単に年金制度について確認しておきましょう。日本の年金制度は3階建てで、1階が国民年金、2階が厚生年金、3階が私的年金(個人年金)で構成されています。
国民年金は所得に関係なく毎月一定額を納付し、480月納めると満額の受け取りが可能です。480月に満たない場合は、満額から減額されます。満額は、令和6年度で年額81万6,000円です。
一方、厚生年金は会社員や公務員が給与や賞与から厚生年金保険料として天引きされており、保険料の額は所得によって異なります。所得が高い人ほど多くの保険料を納め、受け取れる年金額が増えます。また、厚生年金保険料には国民年金保険料も含まれているのです。
3階部分の私的年金は確定拠出年金や確定給付年金などを指し、本人の希望で拠出額や投資先、運用方法を判断します。国民年金や厚生年金だけでは不十分な場合など、個々の状況に応じて自由に活用できる年金です。
夫婦の年金パターン
夫婦で年金を受け取る場合、大きく分けて次の3パターンがあります。
- 夫婦ともに厚生年金
- どちらかが厚生年金、もう一方が国民年金
- 夫婦ともに国民年金
夫婦ともに会社員や公務員で厚生年金に加入していれば、ふたりとも「国民年金+厚生年金」を受け取れます。また、夫(妻)が会社員で、妻(夫)が専業主婦(夫)やパートなどの場合は、どちらかが「国民年金+厚生年金」、もう一方が国民年金のみとなります。
夫婦ともに自営業者の場合や自営業者と専業主婦(夫)の場合などでは、ふたりとも国民年金のみとなるのです。
年金の種類や所得によって年金額が変わりますが、夫婦の年金パターンによっても世帯で受け取れる年金額は変わってきます。
老後30年間の年金受給額は?
受け取れる年金額は物価変動による影響を受けるため、毎年変わるものです。ここでは、65歳から30年間、年金を受け取った場合の年金受給額を算出します。
- 夫婦ともに国民年金+厚生年金の場合:14万5,000円×12ヶ月×30年×2人=1億440万円
- 夫婦の一方が国民年金のみの場合:(14万5,000円×12ヶ月×30年)+(5万6,000円×12ヶ月×30年)=7,236万円
- 夫婦ともに国民年金のみの場合:5万6,000万円×12ヶ月×30年×2人=4,032万円
上記の金額で十分かどうかは、老後に必要な生活費がどれくらいかで決まります。
老後に必要な生活費の目安

老後に必要な生活費は、個人や夫婦の生活スタイルによって大きく異なります。
ここでは、最低限の生活を送る場合と、よりゆとりのある生活を送る場合の月々の必要生活費の目安を紹介します。これらの生活費が30年間でどの程度の総額になるかについても触れますので、老後の資金計画を立てる際の参考にしてください。
月々の必要生活費
月々の必要生活費については、生命保険文化センター「生活保障に関する調査」で確認しましょう。この調査によると、夫婦ふたりの生活費について、最低限必要な生活費は月平均23万2,000円、ゆとりある老後生活費は月平均37万9,000万円となっています。ゆとりある老後生活費には、旅行や趣味などの費用が含まれています。
以下は、単純計算で30年間の生活費を算出したものです。
- 最低限必要な生活費:23.2万円 × 12ヶ月 × 30年 = 8,352万円
- ゆとりある老後生活費:37.9万円 × 12ヶ月 × 30年 = 13,644万円
出典元:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」
生活内容によって必要生活費は変わる
老後の生活費は、どのような生活をしたいのかによって変わってきます。調査結果や現在の生活費などを参考に、まずは毎月必要になる生活費を算出してみましょう。
また、毎月の生活費に加え、旅行代や冠婚葬祭費用など一時的に必要な費用もあります。インフレによる物価上昇や予期せぬ出費なども考慮して、老後の資金計画を立てる必要があります。
老後に向けた資金準備

老後に向けた資金準備は、将来の安定した生活を確保するために重要となります。年金だけでは十分な生活費をまかなえない可能性があるため、自己資金による準備が必要不可欠です。老後の生活スタイルや希望する生活水準に応じて、必要な資金を計画的に積み立てていくことが求められます。
早めに資金計画を立てる
老後の資金準備においては、早めに資金計画を立てることが重要になります。準備期間が長いほど、家計への影響を軽減できるためです。
早めに将来の生活設計を考えて必要な資金を試算し、それに向けて計画的に貯蓄や投資を始めることで時間を味方につけられます。また、早期に準備を始めることでより柔軟な資金計画が可能になり、予期せぬ出来事にも対応しやすくなります。
定期的に計画を見直し、調整することも大切です。
資産運用を活用する
資産運用の活用は、インフレに負けない資産形成のために重要な手段です。単純な貯蓄だけでなく、分散投資やリスク管理を考慮しつつ、株式、債券、投資信託などの金融商品を利用することで、より効果的な資産増加が期待できます。
ただし、投資にはリスクが伴うため、自身の知識や経験、リスク許容度に応じた運用方法を選択することが大切です。長期的な視点を持ち、複利効果を活用しながら、着実に資産を育てていくことが老後の資金準備には有効となります。
まとめ
年金受給額は、個人の職歴や保険料の納付状況によって異なります。夫婦の年金受給額は、両者が厚生年金加入者の場合が最も多く、一方のみが厚生年金加入者の場合がそれに続きます。しかし、年金だけでは十分な老後生活費をまかなえない可能性があるため、個人での資金準備が必要です。
老後の生活設計は、個人や夫婦の価値観によって異なります。そのため、自分たちに合った計画を立てて計画に沿って準備していくことが、安心できる老後生活への近道となるでしょう。

2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。