相続税の計算方法!
対象となる財産やかかる際の手続きもあわせて解説

相続税は多くの人にとって馴染みが薄いかもしれませんが、突然直面する可能性のある重要な税金です。相続税についてしっかり理解することで、将来の相続に備えた適切な準備ができます。 この記事では、相続税の基本的な仕組みから計算方法、対象となる財産、申告手続きまでをわかりやすく解説します。
相続税の基本知識

相続税を正しく理解して適切に対応するためには、その定義や発生条件、手続きの流れなどの基本的な知識が不可欠です。
ここでは相続税の概要と、相続が発生してから申告・納付までの一連の流れについて解説します。
相続税とは
相続税は、亡くなった人が残した財産を相続した人に対して課せられる税金です。亡くなった人を被相続人、財産を相続する人を相続人とよびます。
必ず相続税が課せられるわけではなく、相続財産が一定額を超える場合にのみ発生するものです。相続税には基礎控除額という非課税枠が設けられているため、実際の相続税の課税対象者は全体の約10%となっています。
相続の手続き
相続税が発生する場合や特定の控除を適用したい場合は、手続きが必要です。相続人は相続の開始を知った日から10ヶ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に相続税の申告書を提出し、同時に税金を納付する必要があります。
相続の手続きをスムーズに行うためには、この10ヶ月以内に次の点を実施する必要があります。
- 相続人の確定:法定相続人を特定し、遺言書がある場合はその内容を確認する。
- 相続財産の把握:被相続人の全ての財産(預貯金、不動産、有価証券など)を調査し、財産目録を作成する。
- 相続財産の評価:各財産の相続税評価額を算出する。
- 遺産分割協議:相続人間で遺産の分割方法を協議し、遺産分割協議書を作成する。
- 必要書類の収集:戸籍謄本、財産の評価に必要な書類(固定資産評価証明書など)を取得する。
- 相続税の試算:相続税の概算額を計算し、納税資金の準備を行う。
- 専門家への相談:税理士や弁護士など、必要に応じて専門家に相談する。
- 相続税申告書の作成:収集した情報をもとに、相続税申告書を作成する。
- 申告と納税:作成した申告書を提出し、算出された相続税を納付する。
どのような財産が相続税の課税対象となるのか、次の章で詳しくみていきましょう。
相続税の対象となる財産

相続税の正確な計算と適切な申告のためには、課税対象となる財産の種類や評価方法、非課税財産について正しく理解することが重要です。ここでは、相続税の対象となる財産の概要と、その評価方法について詳しく解説します。
課税対象となる財産の種類
基本的に相続税の課税対象となるのは、被相続人が所有していた全ての財産です。おもな相続財産として、以下のようなものが挙げられます。
- 不動産
- 預貯金
- 有価証券
- 現金
- 美術品
- 宝飾品
- 自動車
- ゴルフ会員権
また、被相続人が加入していた生命保険の死亡保険金や退職金も、一定額を超える場合は相続財産に含まれます。
非課税財産
非課税財産は、相続税が課せられない財産です。代表的なものとして、生命保険金や死亡退職金があります。生命保険金や死亡退職金には非課税枠が設けられており、「500万円×法定相続人の数」の範囲内であれば非課税です。
また、墓地や仏壇、国や地方公共団体に寄付した財産なども非課税財産とされています。
財産の評価方法
相続税における財産の評価は種類によって異なり、原則として相続開始時の時価によって行われます。
不動産は路線価方式や倍率方式を用いて評価され、通常は実勢価格よりも低く評価されます。上場株式は原則として相続開始時の終値で評価されますが、取引相場のない株式は会社の規模や業績に基づいて評価されるものです。預貯金や現金は額面通りの評価となります。
このように財産の種類ごとに評価方法が異なっており、相続税の課税の有無、課税額に影響するため、専門家のアドバイスやサポートが欠かせません。
相続税の計算方法

相続税の計算は一見複雑に思えるかもしれませんが、基本的な手順を理解すれば把握しやすくなります。ここでは、相続税の計算手順とともに、計算に必要な基礎控除額や税率表、配偶者の税額軽減特例について具体的に説明します。
計算の基本ステップ
相続税の計算の基本ステップは、以下のとおりです。
- 課税遺産総額の算出:相続財産の総額から債務や葬式費用を差し引き、相続時精算課税制度を適用して贈与した財産の価額を加算します。
- 基礎控除額の計算:法定相続人の数に応じて基礎控除額を算出し、課税遺産総額から差し引きます。
- 相続税の総額計算:課税遺産総額から基礎控除額を引いた金額に対して、法定相続分に応じて法定相続人ごとに税額を計算し、それらを合計して相続税の総額を求めます。
- 各相続人の税額計算:相続税の総額を、実際の相続分に応じて各相続人に按分し、それぞれの納付税額を算出します。
相続税の計算手順のうち、ポイントとなる「基礎控除額」「税率」「配偶者の税額控除」について、もう少し詳しくみておきましょう。
基礎控除額
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で求められます。例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3=4,800万円」となります。この金額未満の相続財産については、相続税が課税されません。
税率
相続税は累進課税方式を採用しており、相続税額が大きくなるほど高い税率が適用されます。
相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典元:国税庁「No.4155 相続税の税率」
この表を使用することで、相続税額を簡単に計算できます。例えば、法定相続分に応じた取得金額が5,000万円の場合、税率は20%で控除額は200万円です。したがって、相続税額は「5,000万円×20%-200万円=800万円」と計算されます。
配偶者の税額軽減
配偶者が相続する場合、要件を満たせば「配偶者の税額軽減」という特例を適用できます。この特例により、配偶者は法定相続分相当額か1億6,000万円のいずれか大きい額まで非課税となるのです。
まとめ
相続税は、被相続人の財産を相続した際に課せられる税金ですが、全ての相続で発生するわけではありません。相続税の正確な計算と適切な申告は、相続人の義務であると同時に、不要な税負担を避けられます。個々の状況に応じた適切な対応が求められるため、税理士などの専門家に相談しましょう。

2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。