iyomemo(いよめも)
見つかる、つながる。伊予銀行のWebメディア

癌の治療費が払えないときの対処法は?
利用できる制度や金額を知っておこう

2024/12/3
(提供元:CyberKnot
癌の治療費が払えないときの対処法は?利用できる制度や金額を知っておこう

癌になると、さまざまな不安を抱えます。精神面や生活面だけでなく、お金に関する不安も小さくはないでしょう。治療には時間と費用がかかり、仕事が続けられず収入が減ってしまう可能性もあります。そこで、本記事では癌の治療費はどのくらいかかるのか、払えない場合の対処法について解説します。

癌を治療するのにかかる費用

癌を治療するのにかかる費用

癌の種類により異なりますが、治療には入院や手術が必要になることもあります。ここでは、入院でかかる治療費と入院外でかかる治療費、その他の費用に分けて、それぞれの内容についてまとめました。

入院でかかる治療費

1件当たりの日数 1件あたりの診療費
協会(一般) 10.14日 796,619円
組合健保 9.75日 824,174円
共済組合 9.77日 835,654円
国民健康保険 10.77日 749,380円
後期高齢者医療 12.56日 668,621円
平均 10.60日 774,890円

参考元:厚生労働省「医療給付実態調査(令和3年度)」

厚生労働省が2021年に行った調査では、癌で入院による1件あたりの診療費平均額は774,890円、平均日数は10.6日となっています。

これは保険適用前の金額となるため、実際の患者の自己負担額は1割~3割です。3割負担の場合、入院治療費は232,467円となります。目安として、10日前後の入院で約24万円かかると考えるとよいでしょう。

入院外でかかる治療費

1件当たりの日数 1件あたりの診療費
協会(一般) 1.55日 67,090円
組合健保 1.56日 68,320円
共済組合 1.56日 69,331円
国民健康保険 1.61日 76,118円
後期高齢者医療 1.59日 56,128円
平均 1.57日 67,397円

参考元:厚生労働省「医療給付実態調査(令和3年度)」

癌の治療では、通院や検査、薬代といった入院以外にかかる費用もあります。厚生労働省の調査によると、入院外での1件あたりの診療費平均は67,397円です。3割負担の場合は20,219円ですが、治療が長引けばその分増えていきます。

入院にかかる治療費が約24万円、入院外にかかる費用が約2万円だとすると、統計上では約30万円を目安に考えるとよいでしょう。しかし、この数字には保険適用外のものが含まれていないことに注意しなければなりません。

その他・自己負担となる費用

保険の対象外となるのは、試験的な治療や薬などです。先進医療による癌の治療を受ける場合は保険適用外のため、全額自己負担となります。例えば、総医療費100万円の中で20万円が先進医療だとすると、保険給付の対象は80万円になります。
その他にも、以下のものは保険の対象外です。

  • 差額ベッド代
  • 入院時の食費
  • 病院までの交通費
  • 日用品購入費
  • 診断書作成費 など

先進医療を受けない場合でも、治療費以外に間接的にかかる費用があることを頭に入れておきましょう。

癌の治療費が払えない場合はどうしたらよい?

癌の治療費が払えない場合はどうしたらよい?

日本では国民全員を保障する国民皆保険制度により、癌の治療にかかる費用負担は軽減されます。それでも払えない場合、どうすればよいのでしょうか。ここでは、癌の治療費が払えない場合の対処法を紹介します。

負担を軽くする公的制度を利用

公的医療保険に加入していると、被保険者の治療費負担を軽減するさまざまな公的制度が利用できます。以下に紹介する制度を活用すれば、支払いが難しいと思っていた治療も進めることが可能です。

高額療養費制度

高額な医療費を支払った場合に、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が後で払い戻される制度です。上限の金額は年齢や所得に応じて定められており、癌に限らず医療費が高額になってしまったときに利用できます。

利用するには、医療機関で支払いをした後に、市区町村の窓口で入手した高額療養費の申請書の提出が必要です。自己負担限度額を詳しく知りたい場合は、各健康保険組合や協会、国民健康保険などの公式サイトで確認してみてください。

限度額適用認定証

事前に癌の治療費が高額になることがわかっている場合は、限度額適用認定証を申請しておきましょう。この認定証と保険証を医療機関に提示すれば、ひと月の支払額が自己負担の上限額までとなるからです。

限度額適用認定証があれば、高額療養費制度での一時的な立て替え払いや払い戻し申請が不要になります。また、マイナ保険証がある場合は、医療機関で限度額適用認定証がなくても限度額を超える支払いが免除されるので安心です。

高額療養費貸付制度

高額療養費が支給されるまでの間、利用できる無利子の貸付制度です。高額療養費は申請すれば支給されますが、医療機関から提出されたレセプト(診療報酬明細書)の審査があるため、請求から支給されるまで約3ヶ月かかります。

限度額適用認定証がない場合、一時的でも高額な医療費の支払いが発生します。そのため、各保険者は支払いに充てる資金を無利子で貸付を行っているのです。手続きは各保険者が用意する申請書に必要書類を添えて提出するだけなので、難しくありません。。

無料低額診療事業

低所得者や要保護者など生活困難者を対象にした、低額または無料で診療を受けられる事業です。社会福祉法第2条第3項第9号の規定に基づき、経済的な理由で必要な医療を受ける機会を制限されないようにするため実施されます。

本人と社会福祉協議会・福祉事務所など関係機関の相談員が面談し、適合と判定されると無料(低額)診療券が交付される仕組みです。本人がその診療券を持って受診することで、窓口払いが減免されます。

参考元:e-GOV「社会福祉法」

医療ローンを利用

民間企業が提供している目的別ローンの一つで、医療行為を受けた際の支払いに利用できます。人間ドックや保険適用外の高額医療費にも使用でき、先進医療の治療費の分割払いも可能です。

医療ローンは、銀行や信用機関などの金融機関系と、病院やクリニックと提携している信販会社系に分かれています。金融機関系は、審査が厳しい代わりに金利は低めです。信販会社系は金利が高めですが、提携する医療機関の窓口から直接申請できるメリットがあります。

払えないことを病院に相談

高額な医療費が払えないとわかっている場合は、あらかじめ病院に事情を話して相談するという対処法もあります。医療機関によっては分割払いや支払いを先延ばしに応じてもらえる可能性があるからです。

また、大きな病院では病気に関連したさまざまな相談ができる窓口が設けられていることがあります。支払いが困難な場合の解決方法のアドバイスも受けられるので、利用してみてください。

事前にできる治療費の備え

事前にできる治療費の備え

事前に準備をしておけば、いざというとき心配することはありません。ここでは癌の治療が始まる前にできることや、治療費の支払いに悩まないための対処法について紹介します。

がん相談支援センターに相談

全国のがん診療連携拠点病院や地域がん診療病院などに、癌に関する相談窓口として設置されているのが「がん相談支援センター」です。癌の疑いがあるといわれたときや、治療や費用に不安があるときなどに無料で相談できます。

看護師やソーシャルワーカーなどが相談員として話を聞いてくれるため、どうしてよいかわからないときに利用すれば心強く感じるでしょう。また、相談内容は同意なく他の人に知られることはないので安心です。

民間保険に加入

公的医療保険ではカバーしきれない医療費の自己負担分の支払いをサポートするのが、民間保険です。一般的な医療保険の他に、癌に特化したがん保険もあります。各人の事情に合わせて保障が手厚い保険商品を選べるのが特徴です。

民間保険に加入していれば給付金が出ますが、これから保険に加入する場合、条件によっては保険料が高くなってしまうので要注意です。貯蓄が十分になく、癌になったときの不安がある人は検討してみるとよいでしょう。

治療費に充てるための貯蓄

十分な貯蓄があれば、民間保険は不要という考え方があります。では、どの程度の貯蓄があると安心できるのでしょうか。
公的医療保険が適用される場合、入院・治療費の自己負担額は30万円程度ですが、それ以外にも費用は発生します。医療費以外に食事代や日用品などの生活費、入院すれば差額ベッド代など自己負担分もあるからです。また、保険が適用されない自由診療の可能性や仕事を休むことによる収入減などを考えると、必要な貯蓄額として200万~300万円が目安となります。

まとめ

日本では公的医療保険が整備されているおかげで、癌で高額な治療費がかかっても負担が軽減される仕組みになっています。とはいえ、保険が適用されないものもあるため安心はできません。いざというとき払えないと慌てることがないように、貯蓄などの備えや情報収集をしっかりしておきましょう。



著者プロフィール

著者 髙井 美智彦

2級FP技能士

大学卒業後、システムエンジニアを経て通信機器商社の経営戦略室で新規事業の立ち上げに参画。退社後はシステム会社の代表取締役に就任し、パソコン通信サービスを展開。1996年に著書『わかる!イントラネット』執筆後はフリーランスとして活動。事業経験とFP資格を活かしビジネス系ライターとして複数メディアで執筆中。

RECOMMENDATION

RANKING

TAG LIST

    • Digital-Human-Digital
    • 地元愛
    • LIFE PALETTE
    • IYOCA