奨学金と教育ローンの違いは?
それぞれのメリット・デメリットを知っておこう

高等教育にかかる費用を準備する方法として、奨学金と教育ローンがあります。これらの仕組みや特徴を理解することで、自分の状況に合った選択ができるようになります。 この記事では、奨学金と教育ローンの違い、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説し、適切な教育資金の準備方法を選ぶための情報をお伝えします。
奨学金とは?教育ローンとは?

奨学金と教育ローンの特徴を知ることで、家庭に合った準備方法を選びやすくなります。まずは、奨学金と教育ローンについて解説します
奨学金は日本学生支援機構が取り扱う制度
奨学金の代表例として、日本学生支援機構が取り扱う奨学金があります。日本学生支援機構の奨学金には、返済不要の給付型と返済が必要な貸与型があります。
さらに貸与型は、利息が付かない第一種奨学金と利息が付く第二種奨学金に分かれているのです。それぞれ学力基準と家計基準があり、奨学金の基準は給付型が最も厳しく、次に第一種奨学金、第二種奨学金の順となります。
奨学金はまとめて支払われるのではなく、あらかじめ決められた金額が毎月支払われる形式です。卒業した後、学生本人が返済します。金利は、固定金利で1.110%、変動金利で0.5%となっており、教育ローンと比べると低く設定されています。なお、奨学金には企業や団体が取り扱う制度もあります。
※出典:日本学生支援機構「令和6年度 貸与利率一覧(令和6年9月)」
教育ローンは日本政策金融公庫が取り扱うローン
教育ローンの代表例として、日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)があります。国の教育ローンは保護者が借りるもので、子どもの人数に応じた世帯年収の上限内であれば利用できます。
融資限度額は子ども一人につき350万円(自宅外通学などは450万円)で、固定金利のみです。金利は年2.4%(令和6年5月1日現在)で、保証会社を利用する場合は別途、保証料が必要です(保証料は融資額から差し引かれます)。
なお、教育ローンには金融機関が取り扱う独自の商品もあります。
出典元:日本政策金融公庫「ご利用条件や金利・ご返済方法」
奨学金と教育ローンの主な違い

次に、奨学金と教育ローンの違いを確認してみましょう。それぞれの違いを理解することで、利用する目的が明確になります。
返済に関する違い
奨学金のうち、給付型は返済義務がありません。貸与型の第一種奨学金は無利子で借りられ、第二種奨学金と教育ローンは元本に利子を加えて返済しなければなりません。
また、奨学金は学生本人が返済するのに対して、教育ローンは親などの保護者が借り入れて返済します。
条件に関する違い
奨学金と教育ローンには、それぞれ条件が設けられています。奨学金は学生本人の学業成績や家計状況などが基準になりますが、教育ローンは、返済能力が基準となります。
また奨学金は、毎年、在学確認や学業成績などの審査が行われるのが一般的です。一方、教育ローンは借入時の審査のみで、借りた後は毎月返済するだけです。
比較項目 | 奨学金 | 教育ローン |
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返済義務 |
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金利 |
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選考・審査基準 |
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申請者 |
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金額の柔軟性 |
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継続条件 |
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奨学金と教育ローンのメリット・デメリット

奨学金と教育ローンには、それぞれメリット・デメリットがあります。ここでは主なメリット・デメリットを紹介します。
奨学金のメリット
奨学金のメリットは、奨学金を選択する主な理由にもなるでしょう。
返済不要の奨学金がある
給付型は要件を満たせば返済不要なため、大学への進学を積極的に検討しやすくなります。ただし、在学中も学業成績などの要件を満たす必要があるため、学ぶ意欲が十分あることが前提です。
経済的負担の軽減
どの種類の奨学金も経済的負担を軽減し、学ぶ環境を提供することを目的としています。ただし、貸与型は卒業後に学生本人が返済しなければならないため、借り過ぎには注意が必要です。
無利子または低金利
貸与型の第一種は無利子、第二種は利子を負担しますが低金利となっています。第二種は返済期間中も利率が変わらない利率固定方式と利率が変動する利率見直し方式があり、金利タイプを選べる点も特徴です。
奨学金のデメリット
奨学金にはデメリットもあります。しっかり確認して、利用を検討しましょう。
学生に将来の返済負担
奨学金は、学生本人が返済しなければなりません。就職前に長期の返済義務を負うため、自由な職業選択や転職ができない可能性があります。
競争率が高い場合がある
奨学金は、人数制限を設けている場合があります。人数制限によって競争率が高くなり、奨学金を受けられないこともあるでしょう。
特に企業や団体が募集する奨学金制度の人数は少ないため、競争率は高くなりがちです。奨学金の審査状況によって進学できるかどうかが変わるため、不安定な状況に陥る可能性があります。
成績維持が必要
奨学金は、勉強したくても経済的な理由で諦めかけている学生のための制度です。そのため、奨学金の目的に合っているかどうかを確認するため、学業成績を報告するのが一般的です。進学目的があやふやで一定の成績を取れない場合は、在学中に奨学金を受け取れなくなる可能性もあるため注意してください。
教育ローンのメリット
教育ローンにも、奨学金にはないメリットがあります。
比較的容易に申し込める
教育ローンは、一定以上の所得がある場合を除き、幅広い層で活用できます。審査に一定の期間を要しますが、資金が不足したときに申し込めるため、状況に合わせて柔軟に利用できます。
必要な金額をまとめて借りられる
教育ローンは、必要な資金をまとめて借りられます。そのため、毎月の通学費や教材費を目的とするだけでなく、まとまった資金が必要となる入学金や授業料の支払時期でも対応できます。
親などの保護者が申し込める
一定の収入がある保護者が申し込んで返済するため、収支が把握しやすく、計画的に利用できます。奨学金と併用できるため、子どもの返済負担を軽減したい場合にも活用できます。
教育ローンのデメリット
教育ローンの主なデメリットを確認しておきましょう。
利子がかかる
教育ローンは、ある程度の金利がかかります。借入金額が多く、返済期間が長くなると、金利負担が重くなることがあるため注意が必要です。
返済義務がある
教育ローンは、保護者に返済義務があります。無理して借りてしまうと返済が厳しくなり、教育費の支払に影響が出る可能性もあります。利用する前に、返済計画を立てましょう。
返済が長期にわたり負担になる可能性がある
教育ローンの返済が、借入金額によっては長期にわたることがあります。保護者は教育ローンだけでなく、自身の生活設計や老後の資金準備も必要です。返済に厳しさを感じた場合は、奨学金や子どものアルバイトと併用することも検討しましょう。
まとめ
奨学金と教育ローンは、どちらも高等教育の費用をまかなうための選択肢です。
どちらを選択するかは、家庭の経済状況や学生の学業計画、将来の返済能力などを総合的に考慮して判断することが大切です。両者の特徴を上手く生かして、家庭の状況にあった組み合わせを検討しましょう。

2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。