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特集 あまったうどんや湯けむりも燃料に!?

ご当地エネルギーの取り組み

2016/09/29
(写真=PIXTA)

 農産物の地産地消が注目を集めるなか、電力においても同様の動きが出ています。電力会社に頼ることなく、地域に必要な電力を小電力発電によって供給し、安定的な売電収入と地域の活性化を進めようという試みです。その好例として、香川県の「うどん発電」と大分の「湯けむり発電」を紹介します。

■うどんで電気をつくる?!

香川県は日本一のうどんの生産と消費量を誇る「うどん県」として有名です。総務省の家計調査(二人以上の世帯)の消費量ランキング「生そば・うどん」の項目で、香川県高松市は一世帯の年間の消費量21.6キロにのぼり、廃棄されるうどんの量は年間推計6,000トン(小麦粉換算)以上といわれています。

大量の廃棄麺を有効活用したいという思いが集まって、2012年1月、産学民官の協働プロジェクトとしてスタートしたのが「うどんまるごと循環プロジェクト」です。とくに2013年からは「うどんをまるごと循環させる」というコンセプトのもと、「うどん発電」を行っています。「うどん発電」の仕組みはいわゆるバイオマス発電で、生物・植物由来の廃物を発酵させて燃料とし発電するというものです。うどんの残渣からメタンガスを発生させ、これを燃料としてタービンを回し、発電を行います。二酸化炭素を増加させないため環境に優しく、また農作物の残渣や家畜の排泄物、建築廃材などが原料となるため、廃棄物が減るなどのメリットがあります。「うどんをまるごと循環させる」とは、うどん発電のバイオガス生成後の残渣から液肥を作り、その液肥を利用して小麦を生産し、その小麦から再びうどんをつくるという取組みです。

すでに1日約2.5トンの廃棄麺を処理しており、年間で18万キロワットを発電しているそうです。また発電だけでなく、うどん液肥で育てた無農薬栽培の地元産小麦「さぬきの夢2009」を収穫したり、この小麦を使ってうどん手打ち体験を実施したり、さらに環境教育を開催したりするなど、活用は多方面に広がっています。

■温泉地から生まれた、世界初の湯けむり発電

日本一の源泉数と湧出量を誇る別府温泉では、温泉の蒸気と熱水を利用した「湯けむり発電」に挑戦しています。

大分県の企業グループにより実用化に成功した「湯けむり発電」は、小型で低コストな発電方式です。「湯けむり発電」は温泉の熱水に加え蒸気も活用するトータルフロー発電という方法により、理論的には地熱発電の約1.6倍の発電量を可能にしたのです。また、以下の利点があります。

  • ・ 既存の温泉井戸を利用するため新たに井戸を掘る必要がない
  • ・ 温度が高温である必要がない(150度以下の熱水が使用可能)
  • ・ 圧力が1気圧以下の熱水が使用可能
  • ・ 発電に利用した熱水はそのまま給湯として使用可能
  • ・ コストが安い(小型でシンプルな設計)
本格スタートした「湯けむり発電」は、観光資源だけでなく農地や工場での利用など、さまざまな分野への応用も期待されています。

■目指すは、地産地消の地球にやさしい新エネルギー

「うどんまるごと循環プロジェクト」が長期的に目指しているのは、ゼロ・エミッションです。廃棄物をゼロにし、環境を汚さずにエネルギーを開発しようとしています。

この試みは、うどんだけではなくすべての食品廃棄物への応用が期待されます。日本全国の農産地にこの循環型の発電方式を広げれば、地域のエネルギーコストは大幅に削減され、将来的には食品廃棄物はゼロになるかもしれません。

また、日本は世界有数の温泉国です。「湯けむり発電」が全国各地の温泉地に普及すれば、エネルギーの地産地消が促進され、各温泉街の経済効率性の向上に寄与するだけでなく、新たな観光資源としての魅力も増すことが期待されます。

現状の問題点はやはりコストです。とくに最初のインフラ整備には費用がかかるため、当面は国や自治体の支援が必要な状況です。事実、「うどん発電」は地球環境基金助成金を受けており、「湯けむり発電」も県から設置のための資金を投じられました。

両者のような地産地消エネルギーへの試みは、地域の安定的な収入に道を開き、既存の農業や観光業の活性化にも新しい可能性を開きます。全国に普及していけば、やがてコストの問題も解決されるでしょう。当面は、官民一体となった努力を続けていき、本格的な稼働となった暁には新しいエネルギー時代の到来を呼び寄せるものとして、その将来に大いに期待したいところです。

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