税金の計算方法をご存知ですか?
所得税と住民税の仕組みの違いや節税ポイントまで
所得税と住民税は、どちらも所得に応じて課税される税金です。会社員は給与から天引きされるため、税金計算の仕組みはよくわからないのではないでしょうか。会社員も節税が可能なので、所得税や住民税について理解を深めておくことが大切です。今回は、所得税と住民税の違いや計算方法、節税ポイントについて解説します。
所得税と住民税の仕組みの違い
税金は、国に納める「国税」と地方自治体に納める「地方税」の2つに分けられます。所得税は国税、住民税は地方税です。所得税と地方税は管轄が異なるため、税金の計算方法や納付方法に違いがあります。
所得税の納付方法
所得税の納付方法は、会社員と会社員以外で異なります。
会社員は給与・賞与から天引きされ、年末調整を受けられます。自分で税額を計算したり、納付手続きを行ったりする必要はありません。
一方、個人事業主やフリーランスのように給与以外の収入を得ている人は、自分で確定申告を行い、所得税を納付します(申告納税方式)。
住民税の納付方法
住民税も給与・賞与から天引きされるので、会社員は税額の計算や納付手続きは必要ありません。
個人事業主やフリーランスは、地方自治体から送付される納付書を使って住民税を納付します。所得税の確定申告の内容をもとに、自治体が税額を計算する仕組みになっています。
所得税の計算方法
ここからは、所得税額の計算について確認していきましょう。
所得金額の計算(収入-給与所得控除)
まずは、給与等の収入額から必要経費を差し引いて所得金額を計算しましょう。会社員の場合、給与所得控除が必要経費に相当します。給与所得控除額は、給与額に応じて以下のように決まります。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
162万5,000円以下 | 55万円 |
162万5,000円超180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
年収500万円の場合、給与所得控除額は144万円(500万円×20%+44万円)です。
課税所得金額の計算(所得金額-所得控除)
次に、所得税の課税対象となる課税所得金額を計算します。課税所得金額は、先ほど求めた所得金額から各種所得控除を差し引いて算出します。
所得控除は、各納税者の個人的事情を考慮して税負担の軽減を図るための制度です。主な所得控除をまとめました。
・医療費控除
・生命保険料控除
・社会保険料控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・基礎控除
所得控除が多いほど課税所得金額が減り、所得税額が軽減されます。
所得税額の計算(課税所得金額×所得税率)
課税所得金額を求めたら、所得税率を掛けて所得税額を計算しましょう。
年収が増えるほど所得税率は上がる
所得税率は5~45%の7段階に区分されており、年収(課税所得金額)が増えるほど税率も高くなります。所得税の速算表は、以下のとおりです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
課税所得金額が500万円の場合、所得税額は57万2,500円(500万円×20%-42万7,500円)となります。
納める税額の計算(所得税額-税額控除)
最後に、所得税額から税額控除を差し引いて納める税額を計算しましょう。代表的な税額控除は、住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)です。
2037年(令和19年)までは、所得税のほかに復興特別所得税もかかります。復興特別所得税は、基準所得税額(所得税額から税額控除を差し引いたもの)に2.1%の税率を掛けて計算します。
住民税の計算方法
住民税も、所得税と同じように所得に対して課税される税金です。ただし、課税の仕組みや税額の計算方法は所得税と異なる部分があります。
均等割と所得割の2種類がある
住民税には、定額で課税される「均等割」と前年の所得金額に応じて課税される「所得割」の2種類があります。
均等割の税額は、通常5,000円(市町村民税3,500円、都道府県民税1,500円)です。所得割の税率は、一律10%とされています。ただし、地方自治体によって異なる可能性もあるので、居住地の自治体に確認しましょう。
住民税額は自治体が計算する
住民税額(所得割)の計算方法は、基本的に所得税と同じです。ただし、適用される所得控除額などが異なる場合があります。
所得割と均等割を足したものが、納めるべき住民税額です。所得税とは異なり、住民税は自治体が税額を計算して納税者に通知する「賦課課税方式」が採用されています。
所得税と住民税の節税ポイント
節税は、「個人事業主やフリーランスが行うもの」というイメージがあるかもしれません。しかし、状況によっては会社員も節税が可能です。ここでは、所得税と住民税の節税ポイントを紹介します。
年末調整で所得控除を受ける
会社員が節税するには、年末調整で所得控除の適用を受けることが大切です。生命保険料控除や配偶者控除など、多くの所得控除は年末調整の対象となっています。控除証明書などの必要書類は紛失しないように保管し、年末調整を受けるのを忘れないようにしましょう。
確定申告をする
年末調整対象外の所得控除がある場合は、確定申告をすると納めすぎた税金が還付されます。具体的には、以下のような控除があります。
住宅ローン減税(初年度のみ)
住宅ローンの年末残高の一定割合が、所得税から控除される制度です。住宅ローンを組んでマイホームを購入し、一定の要件を満たすと住宅ローン減税が適用されます。
控除を受ける最初の年は、「借入金の年末残高等証明書」などの必要書類を添付して確定申告をしなくてはなりません。2年目以降は、年末調整で控除を受けられます。住宅ローン減税は節税効果が高いので、初年度は忘れずに確定申告を行いましょう。
医療費控除
まとまった医療費を支払ったときに適用される所得控除です。1年間に支払った医療費のうち、10万円(または総所得金額等の5%)を超える部分の金額が所得から控除されます(最高200万円)。
医療費控除の適用を受けるには、領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作成して確定申告を行います。生計を一にする配偶者やその他親族の医療費を支払った場合も控除対象となるので、領収書を保管しておきましょう。
寄附金控除
国や地方自治体などに「特定寄附金」を支出した場合に受けられる所得控除です。特定寄附金の額(または総所得金額等の40%相当額)から2,000円を差し引いた金額が、所得から控除されます。寄附金控除を受ける場合は、寄附金の受領証を添付して確定申告を行いましょう。
個人事業主・フリーランスは青色申告をする
青色申告は、一定水準の記帳をして正しく申告する場合に、税務上の特典を受けられる制度です。「複式簿記で帳簿書類を作成して一定期間保存する」などの要件を満たすと、以下の特典が適用されます。
・青色申告特別控除
・青色事業専従者給与
・貸倒引当金
・純損失の繰越しと繰戻し
青色申告特別控除は、55万円(e-taxの場合は65万円)が所得から控除されます。また、親族に支払った給与や貸倒引当金が必要経費として認められ、赤字の場合は翌年以降に繰り越して各年分の所得から控除できます。
青色申告をするには、所轄税務署に「青色申告承認申請書」を提出してください。節税効果が高いので、個人事業主・フリーランスは青色申告を検討しましょう。
まとめ
会社員は給与から所得税や住民税が天引きされるので、基本的に確定申告は不要です。ただし、確定申告をすれば納めすぎた税金が返ってくるケースもあります。所得控除や税額控除を受けられる場合は、確定申告をして所得税や住民税を節税しましょう。
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