年末調整の書き方をわかりやすく解説!
対象者や必要な書類も知っておこう

年末調整は給与所得者の所得税を確定させる大切な手続きですが、内容がよくわからない人もいるでしょう。年末調整で申告する内容は個人ごとに異なるため、自分がどの申告書に何を記入すべきか知っておくと手続きがスムーズになります。この記事では、年末調整の各申告書の書き方をわかりやすく解説します。
年末調整の対象者と必要書類

年末調整は企業などに勤務する給与所得者が、源泉徴収されている所得税額の過不足を調整するための手続きです。
年末調整の対象者
年末調整の対象となるのは、以下のような人です。
- 1年を通じて企業などに勤務している人
- 年の途中で就職し、年末まで勤務している人
- 年の途中で退職した人のうち、「死亡退職」「心身の障害による退職で再就職が困難」「12月に給与の支払いを受けたあとに退職」「パートやアルバイトで給与総額103万円以下」のいずれかに該当する人
ただし、例外もあり、年間の給与収入が2,000万円を超える人などは年末調整の対象外です。
年末調整の申告書の種類
年末調整で提出する申告書の種類は、以下のとおりです。
- 給与所得者の扶養控除等申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(兼用様式の申告書)
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
年末調整で提出が必要になるその他の書類
年末調整では申告書に加えて、以下の書類などが必要になる場合があります。
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 国民年金保険料納付証明書
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金の支払いを証明する書類
- 住宅借入金等特別控除を受けるための書類(住宅ローンの年末残高証明書など)
これらの書類は年末調整の時期が近づいたら、早めに準備しておきましょう。
年末調整の各申告書の書き方

続いて、年末調整の各申告書の書き方を解説します。
「扶養控除等申告書」の書き方
扶養控除等申告書は扶養控除や障害者控除、勤労学生控除などを受けるための申告書です。適用される控除がない場合でも、必ず提出しなければなりません。

出典:国税庁「令和6年分扶養控除等(異動)申告書)」
源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族

出典:国税庁「《記載例》令和6年分扶養控除等申告書」
上記①の「源泉控除対象配偶者」とは本人と同一生計の配偶者で、その年の所得の見積額が95万円以下の人です。また、②の「控除対象扶養親族」とは本人と同一生計の16歳以上の扶養親族で、その年の合計所得の見積額が48万円以下の人です。
該当する配偶者や扶養親族がいる場合、氏名・個人番号などの項目を記入します。扶養親族が「老人扶養親族」「特定扶養親族」「非居住者である親族」に当てはまる場合、該当欄にチェックを入れます。
障害者、寡婦、ひとり親または勤労学生

出典:国税庁「《記載例》令和6年分扶養控除等申告書」
申告者本人または同一生計の配偶者や扶養親族が障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に該当する場合、①②③の該当項目や欄にチェックを付けます。扶養親族に該当者がいる場合、②の欄にある括弧内に人数を記入しましょう。
障害者・勤労学生に該当する場合は、④の欄に障害者である事実内容または勤労学生の氏名を記入します。
住民税に関する事項

出典:国税庁「《記載例》令和6年分扶養控除等申告書」
16歳未満の扶養親族①の欄に氏名・個人番号・続柄などを記入します。退職所得を除いた合計所得金額の見積額が133万円以下の配偶者、または扶養親族に源泉徴収された退職所得があった場合、③の各欄に記入します。
「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の書き方
「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」は基礎控除・配偶者控除・配偶者特別控除・所得金額調整控除を受けるための申告書で、3種類の申告書が1枚にまとまったものです。基礎控除は全納税者が対象であるため、必ず提出が必要です。

出典:国税庁「令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
給与所得者の基礎控除申告書

出典:国税庁「《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
基礎控除申告書では、年末調整を受ける本人に適用される基礎控除額を申告します。(1)の収入金額欄に給与明細などをもとに給与収入の合計を記入しましょう(アルバイトなどで複数の勤務先から給与を受けている場合は、合計額を記入します)。所得金額欄は、以下の表を参考に収入金額から所得金額を計算します。計算した所得金額をもとに判定欄にチェックを入れ、表の右側の控除額を「基礎控除の額」欄に記入します。配偶者控除または配偶者特別控除を受ける人は「区分I」欄への記入が必要です。

出典:国税庁「《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
給与所得者の配偶者控除等申告書

出典:国税庁「《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
配偶者控除または配偶者特別控除を受ける人は、配偶者控除等申告書に必要事項を記入します。②の収入金額欄は、基礎控除申告書を参考に配偶者の所得金額を計算し、それぞれの項目を記入しましょう。③の判定欄で当てはまる区分Ⅱを記入します。区分Ⅱと基礎控除申告書の区分Iを④の表に当てはめ、配偶者控除または配偶者特別控除の金額を⑤の欄に記入します。
所得金額調整控除申告書

出典:国税庁「《記載例》令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
所得金額調整控除のうち、子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除は年末調整で適用を受けられます。対象となるのは、その年の給与等の収入金額が850万円超で子ども・特別障害者である扶養親族などがいる人です。
所得金額調整控除を受ける場合、要件欄の該当箇所にチェックを入れ、②③の該当項目を記入します。
「保険料控除申告書」の書き方

出典:国税庁「令和5年分保険料控除申告書」
保険料控除申告書は、生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除・小規模共済等掛金控除を受けるための申告書です。
生命保険料控除額

出典:国税庁「《記載例》令和5年分保険料控除申告書」
一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の各明細欄に保険会社が発行する生命保険料控除証明書の内容を転記します。一般の生命保険料と個人年金保険料では新保険料と旧保険料の合計を分けて記入し、申告書に記載されている手順で計算しましょう。介護医療保険料には新旧の区分がなく、それ以外は一般の生命保険料と個人年金保険料と同様に記入します。
最終的な生命保険料控除額は、上記で求めた一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の合計(上限12万円)を⑤欄に記入します。
地震保険料控除額

出典:国税庁「《記載例》令和5年分保険料控除申告書」
地震保険料控除の欄には、地震保険料控除と旧長期傷害保険料控除を記入します。まずは保険会社発行の控除証明の内容を明細に転記しましょう。次に、保険料の合計額、控除額を申告書に記載されている手順で計算し、最終的な控除額を右下の欄に記入します。
社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除

出典:国税庁「《記載例》令和5年分保険料控除申告書」
社会保険料控除欄に記載するのは追納した国民年金保険料など、本人が直接支払った社会保険料です。給与から差し引かれる社会保険料は、年末調整の対象ではありません。
また、小規模企業共済等掛金控除欄に記載するのは主にiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金です。該当する場合はそれぞれの控除欄に必要項目を記入し、証明書類を添付します。
「住宅借入金等特別控除申告書」の書き方
住宅借入金等特別控除申告書は住宅を取得して、住宅ローン控除を適用したい人が提出する申告書です。住宅ローン控除は初年度のみ確定申告で、2年目以降は年末調整で受けられます。申告書は確定申告後に、税務署から送付されます。

出典:国税庁「《記載例》給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書の記載例」
金融機関から送付された年末残高証明書をもとに、①から⑤までを記入します。2024年現在、住宅ローン控除の控除率は複数存在するため、申告書に記載されている控除率を確認してから、⑥の控除額を計算しましょう。
まとめ
年末調整の時期は業務が多忙で、申告する内容をよく確認できない人もいるかもしれません。できれば、時間のあるうちに自分が受けられる控除や必要書類を確認しておくと安心です。申告書を記入する際は控除の適用もれなどがないようチェックし、期限を守って提出しましょう。

国内生保で法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングを行っている。