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「年収の壁」とは?
種類や扶養範囲内での働き方、超えた場合の変化をわかりやすく解説

2023/06/15
(提供元:CyberKnot

年収の壁とは、扶養範囲内で働きたいパートやアルバイト従業員の年収目安です。103万円の壁や130万円の壁など、年収に応じて種類がいくつかあります。年収いくらで扶養が外れるか知っておくことは、働き方を決める際の柱になるでしょう。この記事では年収の壁について、税制や社会保険制度の情報を交えながら解説します。

年収の壁とは

年収の壁とは

年収の壁とは、世帯主の扶養範囲内で働く場合の年収基準です。主婦・主夫がパートやアルバイトの短時間労働を行う際、年収の壁を超えると手取り収入が減ってしまいます。

年収の壁を超えるとどうなる?

年収の壁を超えると手取り収入が減ってしまうのは、なぜでしょうか。

税金を支払う必要がある

年収に応じて、住民税や所得税を支払わねばなりません。住民税のみ課税されるケースと、住民税・所得税の両方が課税されるケースとがあります。

社会保険に加入しなければならない

働き方や勤務先の事業規模により、社会保険制度への加入が義務づけられます。
社会保険制度とは、健康保険や厚生年金保険、雇用保険に加入することでより安心して働けるようにするものです。社会保険に加入することで社会保険料の支払いが発生し、給与から差し引かれます。

配偶者への影響もある

収入がある一定の金額になると、配偶者(世帯主)に適用される「配偶者特別控除」の額が段階的に減額されます。控除額が減ることで、世帯主の収入が減少する可能性もあります。
また、勤務先の福利厚生として「家族手当制度」がある場合、受け取る権利を失うケースもあるため注意しましょう。

「年収の壁」の種類

「年収の壁」の種類

年収の壁には、次の6種類があります。年収額と税制、社会保険制度との関係性に注目しながら見ていきましょう。

100万円の壁

年収100万円は、住民税に関するボーダーラインです。

  • 住民税:100万円を超えるとかかる
  • 所得税:かからない
  • 配偶者控除:対象
  • 社会保険への加入:必要なし
  • 世帯主の扶養:外れない

この時点では扶養の範囲内ですが、年収100万円を超えると住民税が課税されます。

103万円の壁

年収103万円は住民税に加えて、所得税が課税されるボーダーラインです。

  • 住民税:かかる
  • 所得税:103万円を超えるとかかる
  • 配偶者控除:103万円を超えると「配偶者特別控除」に切り替わる
  • 社会保険への加入:必要なし
  • 世帯主の扶養:外れない

年収103万円以下であれば、所得税はかかりません。
また、年収103万円超になると、これまで世帯主が受けていた「配偶者控除」が「配偶者特別控除」に切り替わります。配偶者控除と配偶者特別控除は、世帯主の合計所得金額が1,000万円以下の場合に適用されるものです。

「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の違い

配偶者控除と配偶者特別控除の違いには、控除を受けられる条件と控除額の2点があります。
配偶者控除は、パート・アルバイトで得た収入が103万円以下※の場合に対象です。控除額は世帯主(納税者)の所得に応じます。
配偶者特別控除は、年収103万円から150万円※の場合に受けられるものです。控除額は世帯主(納税者)と配偶者の所得に応じます。

※ここではわかりやすいように年収で換算していますが、実際には所得金額に応じて控除対象が決まります。

国税庁「配偶者特別控除とは」

106万円の壁

年収106万円になると、社会保険に関するボーダーラインが発生します。

  • 住民税:かかる
  • 所得税:かかる
  • 配偶者特別控除:対象
  • 社会保険への加入:106万円が加入条件の一つ
  • 世帯主の扶養:外れない

年収106万円以下であれば、社会保険への加入義務はありませんでした。しかし106万円を超えると、条件次第で加入しなければなりません。
年収106万円の場合、社会保険料は月12,500円かかります。

社会保険への加入条件

従業員数が101人以上の企業※で仕事をする人は、次の条件を満たす場合に社会保険の加入対象となります。

※2024年10月以降は従業員数51人以上の企業が対象

  • 所定労働時間が週20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用見込みがある
  • 学生ではない

政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ」

条件の一つにある「月額賃金8.8万円以上」は、年収に換算すると106万円になります。

130万円の壁

年収130万円は、扶養に関するボーダーラインです。

  • 住民税:かかる
  • 所得税:かかる
  • 配偶者特別控除:対象
  • 社会保険への加入:条件を満たすと必要
  • 世帯主の扶養:外れる(自身で健康保険・年金保険に入る)

年収が130万円を超えると、社会保険への加入条件を満たしていなくても配偶者の扶養から外れます。勤務先に社会保険料を支払わねばなりません。勤務先に社会保険制度がない場合は、自分で国民健康保険や国民年金保険へ加入する必要があります。
ただし、年収130万円以下でも、条件次第では社会保険への加入が必要になることがあります。

150万円の壁

年収150万円からは、配偶者特別控除の額に差が出てきます。

  • 住民税:かかる
  • 所得税:かかる
  • 配偶者特別控除:段階的に減額
  • 社会保険への加入:条件を満たすと必要
  • 世帯主の扶養:外れる(自身で健康保険・年金保険に入る)

年収150万円までは、配偶者特別控除を満額(38万円)受けられます。しかし年収150万円を超えると、収入の増加とともに控除額が段階的に減額されます。

201万円の壁

年収201万円を超えると、配偶者特別控除がゼロになります。

  • 住民税:かかる
  • 所得税:かかる
  • 配偶者特別控除:適用外になる
  • 社会保険への加入:条件を満たすと必要
  • 世帯主の扶養:外れる(自身で健康保険・年金保険に入る)

扶養範囲内での働き方

扶養範囲内での働き方

「年収の壁」を踏まえた扶養範囲内の働き方を見ていきましょう。

扶養範囲内で働くメリット

配偶者の扶養範囲内で働くメリットは、主に3つあります。

扶養する人(配偶者)の負担が軽くなる

配偶者控除・配偶者特別控除を受けられる分、世帯主である配偶者の税負担が軽くなります。

社会保険料がかからない

社会保険料がかかるボーダーラインである年収106万円の場合、年間15万円の社会保険料を支払うことになります。そして年収が増えれば、その分、社会保険料も増えるのです。
ただ、社会保険料を払うことで、万が一の際に受けられる保障や、将来受け取れる年金額が増えるメリットもあります。

健康保険や年金などの社会保障は受けられる

扶養範囲内であれば、世帯主の社会保険が適用されます。自分で保険料を支払わなくても、健康保険や年金などの社会保障を受けられます。

扶養範囲内で働くポイント

できるだけ扶養範囲内で働きたい場合、年収や月収の目安を知っておきましょう。

目安は「年収130万円」

年収130万円を超えると、健康保険料と年金保険料の支払いが発生します。新たに支払うお金が発生する「年収130万円」が、扶養範囲内で働く際の目安となるでしょう。

社会保険の扶養範囲内は月収いくら?

月収8万8,000円以内であれば、社会保険への加入義務はありません。この金額を目安に働き方を考えるのも一手です。
2023年5月現在、従業員100人以下の企業で働く場合は月収10万8,333円まで働いても社会保険の加入条件には当てはまりません。ただ、2024年10月からは条件が変わり、従業員51人以上の企業で月収8万8,000円が上限となりますので注意しましょう。

税制上の扶養範囲内は月収いくら?

税制上の扶養範囲内に収めるなら、月収16万7,500円(年収201万円)未満が基準となります。ここでいう「税制上の扶養範囲内」とは、配偶者控除・配偶者特別控除に関係するものです。

考え方によっては「年収の壁」を気にしなくていい

「年収の壁」においては支払う金額に目が行きがちですが、別の考え方もできます。

配偶者の所得金額をチェック

世帯主(配偶者)の年収が1,095万円(所得金額年900万円)以下においては、配偶者控除・配偶者特別控除ともに控除額は38万円です。
つまりこの条件下においては、配偶者特別控除が段階的に減っていく、パートやアルバイトの年収150万円までは配偶者への負担をあまり気にしなくてもいい、ともいえます。
世帯主の所得金額を確認し、控除額を算出してみましょう。

扶養外でも世帯年収アップにつながる可能性

年収が増えて扶養から外れ、税金や社会保険料の支払いが増えたとしても、世帯年収がアップすればいい、という考え方もできます。
社会保険料を支払うことで、得られるメリットもあります。健康保険に加入すれば、万が一の保障が充実し、要件に該当すれば傷病手当などの受け取りが可能です。また年金保険は、将来自分が受け取れる年金額を増やせるというメリットもあります。
中長期的な視点で見てプラスになることもあるのです。

まとめ

年収の壁には複数の種類があり、パート・アルバイトで働く人には気になるものです。たとえ扶養から外れても、条件次第では世帯収入を増やせることもあります。メリットだけでなくデメリットも考慮し、広い視野で判断することをおすすめします。



著者プロフィール

著者 もろふし ゆうこ

FP技能士2級、証券外務員会員一種

大手証券会社、銀行の個人営業職を経験した後、26歳で独立系ファイナンシャルプランナーとして独立。個人を対象に相談業務やセミナー・講演会の講師業、各種メディアへ出演し情報提供を行う。現在はFPの知識を活かした執筆活動を中心に活動している。

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