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扶養のメリット・デメリットは?
「入る側」と「扶養する側」に分けて紹介

2025/01/09
(提供元:CyberKnot
扶養のメリット・デメリットは?「入る側」と「扶養する側」に分けて紹介

家族が扶養に入るかどうか検討する理由は、社会保険や税金などを抑えたいと考えてのことがほとんどでしょう。しかし、扶養の具体的なメリットとデメリットがわからない人もいます。この記事では、扶養のメリットとデメリットを解説します。働き方や節税を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも扶養とは?

そもそも扶養とは?

扶養とは、自分の収入で生計を立てられない人を家族・親族が支えることを指します。家族を扶養している人や家族に扶養されている人は、税金や社会保険について優遇があります。まずは、税金の扶養と社会保険の扶養について、制度の概要や両者の違いを説明します。

税金の扶養

所得税法上の扶養親族とは、次の4つの要件を満たす人のことを指します。

税法上の扶養親族の要件
  • 配偶者以外の親族や里子、養護を委託された老人である(6親等以内の血族及び3親等以内の姻族)
  • 納税者と生計が同一
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合、年収103万円以下)
  • 青色申告者の専従事業者としてその年一度も給与の支払いを受けていない(または白色申告者の専従事業者でない)

16歳以上の扶養親族がいる場合、納税者は扶養控除を受けられるため、課税所得が下がり、所得税や住民税を抑えることができます。

配偶者の扶養の条件は?

配偶者を扶養している場合には、扶養控除ではなく配偶者控除の対象になります。次の要件をみたす場合、配偶者控除が受けられます。

控除対象配偶者の要件
  • 民法上の配偶者(内縁関係は含まず)
  • 納税者と生計が同一
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合、年収103万円以下)
  • 青色申告者の専従事業者としてその年一度も給与の支払いを受けていない(または白色申告者の専従事業者でない)
配偶者控除を受けられる納税者の要件
  • 合計所得金額が1,000万円(給与のみの場合、年収1,195万円)以下

たとえば、年収103万円以下の妻を扶養している夫は配偶者控除を受けられます。年収103万円以下であれば妻に所得税はかからず、夫婦ともに税金を抑えられます。

なお、配偶者の所得が48万円を超えていても、201万円(給与所得者の場合、年収201万円)以下なら配偶者特別控除の対象になります。

社会保険の扶養

社会保険とは、病気やケガ、老齢などに備えるため、会社に勤める方の加入が義務付けられている公的保険のことです。健康保険や介護保険、厚生年金保険、労災保険や雇用保険が該当します。

被扶養者制度とは

社会保険のうち健康保険には、被扶養者の制度があります。「社会保険の扶養に入る」とは、基本的に「健康保険に加入している家族の被扶養者になる」という意味です。

健康保険に加入している人(被保険者)は、自分で生計を立てられない家族を被扶養者にできます。この場合、被扶養者は自分で公的医療保険に入る必要はありません。家族の健康保険で、3割負担(6歳以上70歳未満、70歳以上の現役並み所得者)で医療機関を受診できます。

健康保険の被扶養者の条件

健康保険の被扶養者になるには、被保険者によって生計を維持されていることが条件です。また、被扶養者の年収は130万円未満(60歳以上または障害年金を受けられる程度の障がい者の場合180万円未満)であることが要件です。

なお、被保険者と被扶養者が同居している場合と同居していない場合で、次のように要件が分かれます。

同居している場合 被扶養者の年収が被保険者の年収の原則2分の1未満
同居していない場合 被扶養者自身の収入が被保険者の援助による収入よりも少ない

たとえば、夫の年収200万円、妻の年収120万円の同居の夫婦の場合、妻の年収が夫の年収の2分の1を超えているため、妻は夫の被扶養者にはなれません。ただし、年間収入が2分の1以上でも、夫の年収が130万円未満であるなど、被扶養者として認められるケースもあります。

年金の扶養は配偶者のみ

配偶者の健康保険の被扶養者になった人は国民年金の第3号被保険者となり、国民年金保険料の納付義務がなくなります。たとえば、夫の扶養に入った妻は、健康保険料、年金保険料とも負担がありません。

一方、親や子など配偶者以外を健康保険の被扶養者にした場合、被扶養者自身の年金には影響がありません。被扶養者が20歳以上60歳未満なら、国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を払う必要があります。

扶養に入れられる人の範囲

健康保険の被扶養者に入れられる親族は、次の範囲の人です。

同居でも別居でも良い人 同居が要件になる人
配偶者(内縁・事実婚含む)、子、孫、兄弟姉妹、父母等の直系尊属 ①左記以外の3親等以内の親族
②配偶者(内縁・事実婚含む)の父母、連れ子
③②の配偶者死亡後の父母、連れ子

家族を扶養に入れるメリット・デメリット

家族を扶養に入れるメリット・デメリット

家族を扶養に入れた場合のメリット・デメリットをまとめます。

家族を扶養に入れるメリット

ここでは、扶養者が家族を扶養にするメリットを3つ紹介します。扶養するメリットを確認しておきましょう。

税負担が軽減する

家族を扶養に入れた場合、扶養する人の税金が抑えられるメリットがあります。配偶者を扶養している場合、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられます。親や子どもを扶養に入れれば、扶養控除を受けることが可能です。

扶養される人は、所得が一定額以下でなければなりません。所得が少なければ、税金の負担も少なくなります。扶養する人も扶養される人も、税負担が抑えられるのがメリットです。

扶養する人の社会保険料は増えない

健康保険では、被扶養者がいても被保険者の払う保険料は変わりません。配偶者を扶養に入れた場合でも厚生年金保険料が増えることはなく、家族単位での社会保険料の負担が抑えられるでしょう。

扶養手当を受けられることがある

勤務先によっては、扶養家族がいることで扶養手当が支給されるケースがあります。扶養手当がある企業に勤めている場合、扶養するメリットはさらに大きくなるでしょう。

家族を扶養に入れるデメリット

扶養者が家族を扶養とする場合のデメリットを紹介します。扶養することで発生するデメリットを理解しておきましょう。

医療費や介護サービス使用料の負担が増える可能性がある

特に高齢の親を扶養に入れる場合、医療費の自己負担限度額が上がる可能性があります。親の年収が低く、十分な貯蓄がなければ、医療費や介護サービス利用料を扶養者が負担する必要があります。

生活費の負担が増える可能性がある

親族を新たに扶養に迎えると、生活費全般の負担が増える可能性があります。特に、二世代・三世代で暮らす準備ができていない場合、新しい住まいなど初期費用がかかります。

扶養に入る配偶者や子どものメリット・デメリット

扶養に入る配偶者や子どものメリット・デメリット

扶養者のメリット・デメリットについて解説しましたが、ここでは被扶養者側のメリット・デメリットについてまとめます。

扶養に入る配偶者や子どものメリット

扶養に入ると、配偶者や子などはどのようなメリットがあるのでしょうか。

税金を支払わなくて済む

一般的に、所得税は年収103万円、住民税は96.5万円を超えると税金が発生します。年収の基準は人によって異なりますが、一定額以下であれば税金を支払う必要はありません。

社会保険料が免除になる

公的医療保険は強制加入です。会社などの健康保険に加入できない場合は、原則として国民健康保険に入って保険料を納める必要があります。家族の健康保険の被扶養者になれば、自分で保険料を払って公的医療保険に入る必要がなくなります。

配偶者の扶養に入ると、国民年金保険料も負担しなくてすみます。社会保険料を払わなくて済むのは大きなメリットです。

企業が提供する付加給付を受けられる

勤務先によっては、健康保険の独自給付を行う場合があります。扶養として保険料の負担がないだけでなく、健康保険や国民健康保険よりも充実した保障を受けられるのであれば、大きなメリットです。

扶養に入る配偶者や子どものデメリット

扶養に入ると、デメリットになることもあります。どのようなデメリットがあるのか知っておきましょう。

年金を増やせる機会を失う

配偶者がいる人がパートやアルバイトで働く場合、勤務先の社会保険に入らず、配偶者の扶養に入る選択肢があります。この場合、厚生年金に入らないことになり、年金を増やす機会を失います。国民年金のみでは満額でも月額6.6万円程度なので、老後の生活資金に不安が生じるでしょう。

病気・ケガで仕事を休んだときの保障がない

健康保険に入っていれば、病気やケガで仕事を休んだ際に、傷病手当金がもらえます。しかし、被扶養者の場合には、傷病手当金を受け取れません。扶養内で働く場合、病気やケガで仕事ができなくなると収入が途絶えてしまう可能性があります。

キャリア形成の機会が制限される

税法上の扶養や社会保険上の扶養の条件を満たすために、働く意欲があっても働けない状況が生まれます。短期的には税や保険料の負担を軽減できますが、キャリア形成や所得を増やす機会を自ら制限することになり、長期的には不利益を被る可能性があります。

まとめ

扶養には、税金や健康保険料、社会保険料などの負担が軽減されるメリットがあります。一方、生活費の負担や年金額を増やせないなど、いくつかのデメリットがあることも事実です。扶養に入る、入れることを検討する際には、しっかり家族間で話し合うことが大切です。



著者プロフィール

著者 藤 孝憲

CFP®・宅地建物取引士(未登録)・住宅ローンアドバイザー・証券外務員2種・DCプランナー2級・エクセルVBAエキスパートなど

2006年2月にファイナンシャルプランナー(FP)として独立、個人相談をはじめ、カルチャーセンター講師やFP資格講師・教材作成、サイト運営・執筆など、FPに関する業務に携わり15年以上経つ。商品販売をしない中立公正な立場で、相談者の夢や希望をお伺いし、ライフプランをもとにした住宅ローンや保険などの選び方や家計の見直しを得意とする。執筆でも、わかりやすく伝えることはもちろん、情報を精査し、消費者・生活者側の目線で書くことにこだわる。

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