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暗号資産(仮想通貨)に確定申告は必要?
所得や税金について徹底解説

2021/11/24
(提供元:全研本社

暗号資産(仮想通貨)とは、インターネット上でやりとりできる電子データの「通貨」です。価格変動が激しいため投資先としてはリスクが大きいですが、大きな利益を上げる可能性を秘めていることから人気の投資対象となっています。この記事では、暗号資産(仮想通貨)にかかる税金や確定申告の必要性について解説します。

暗号資産(仮想通貨)の法制度

暗号資産の利用者を保護するため、2020年5月1日に「資金決済法」、「金融商品取引法」、「金融商品販売法」が改正されました。暗号資産の事業者に対しては、暗号資産の信託義務と流出リスクへの対応などが義務化され、投資者が安心して利用できるようなルール整備を目的としています。

「資金決済法」改正の概要

改正資金決済法では、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの呼称が「仮想通貨」から「暗号資産」に変更されました。また、今まで金融庁への登録が不要だった暗号資産の保管・管理(カストディ業務)を担う業者も、今後は金融庁へ事業登録を行なうことが定められました。この改正によって暗号通貨の信頼性が高まることで、利用者保護を促進する狙いがあります。

「金融商品取引法」改正の概要

暗号資産の新しい取引方法が誕生している背景を考慮し、暗号資産を使ったICOやSTOなどの資金調達方法、先物取引・オプション取引などの金融派生商品に関する規制が整備されました。このような取引を行う前には、金融商品取引業の登録申請や事前届が必要となります。また、暗号資産の取引で不正行為が多く見られたため、価格操作や風説の流布といった公平さを欠く行為も明確に禁止されました。

「金融商品販売法」改正の概要

改正金融商品販売法では、暗号資産交換事業者に対して損害賠償請求の説明義務を追加しました。今までは、利用者が暗号資産交換業者からの説明不足を理由に損害賠償請求を行おうとしても、まずは説明義務の存在があったかどうかを証明しなければなりませんでした。今回の改正により、暗号資産交換業者には損害賠償請求に対する説明義務が生じることが決定したため、利用者側の負担が軽減されます。

暗号資産(仮想通貨)に確定申告は必要?

給料以外の所得がなく、今までに確定申告を行ったことがないという方であっても、暗号資産の取引で20万円を超える利益が出た場合は、確定申告が必要になる可能性があります。「利益」が所得とみなされるのは口座に振り込まれるタイミングではなく、「暗号資産を売却したとき」や「暗号資産で支払いをしたとき」、あるいは「暗号資産同士を交換したとき」など、手持ちの暗号資産を手放したタイミングである点に注意しましょう。

基本的に、投資で得た利益は確定申告によって生じた収入分の所得税を納付しなければなりません。確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日まで)に得た所得金額に応じて税金の過不足を清算する手続きのこと。追加で税金を支払うための申告というマイナスのイメージがある方も多いですが、還付を受けて得をしたいという方にとっても重要な手続きです。

確定申告しなかった場合はどうなる?

暗号資産で利益が出ていると、わざわざ申告して税金を納めなくてはならないことに拒否感を覚えるという方も少なくありません。では、確定申告を無視した場合はどうなるのでしょうか。

基本的に、個人・法人を問わず収入の有無は税務署に把握されています。給料は会社から「給与支払報告書」が市区町村に提出されていますし、そのほかの報酬も「支払調書」が税務署に提出されているからです。また、税務署は、暗号資産の取引所に対して税務調査という名目で取引記録を閲覧できます。税逃れの手法としては親族・知人名義の口座を使うことも多く、取引記録から故意に売却益を隠そうとしたかどうかまで把握ができます。

「あまり稼いでないし大丈夫だろう」と思ってしまう方も多いのですが、国税庁では無申告の把握のため、定期的に重点調査を行っています。無申告は「脱税」という犯罪に直結する行為であり、簡単に見過せるものではないからです。とはいえ、無申告でいきなり逮捕されるわけではありません。確定申告をうっかり忘れていた場合は、修正申告によって税金を納付できます。このときには無申告加算税・延滞税といった追徴課税が課されるため、本来よりも多くの税金を納付することになります。

しかし、もし「意図的に所得を隠していた」とみなされると、無申告加算税・延滞税に重加算税が追加され、さらに高額な追徴課税を課されるというペナルティが発生します。2019年には個人・法人を合わせて少なくとも80件、総額100億円の申告漏れを指摘しており、2021年4月には、ビットコインの売却益を少なく申告していた男性にはじめて有罪判決が下りました。

また、国税庁や税務署は税務調査を委託するケースもあり、小さい利益を隠そうとする個人を調査するための組織も存在します。このように、税務署も「暗号資産は税逃れが横行している」とにらんで、利益の大きさを問わず積極的にメスを入れているのです。

税務署が「何も言ってこない」からといって、バレていないとは限りません。明らかに悪意があるとみなした場合、追徴課税が発生するタイミングで申告漏れを指摘することもあります。確定申告は手間のかかる手続きですが、無申告は割に合わないほどデメリットの大きい選択です。堂々と暗号資産で取引をするためにも、確定申告はしっかり済ませておきましょう。

暗号資産(仮想通貨)に課税される税金とは?

暗号資産には「所得税」が課されます。所得税は10種類に分けられますが、仮想通貨取引で得た利益はほとんど「雑所得」という項目に区分されます。所得は、例えば会社から得られる「給与所得」、事業で得られる「事業所得」、預貯金の利子となる「利子所得」など細かく9種類に分けられていますが、どの所得にも該当しない場合は「雑(その他)所得」に分類されます。もし事業の一環として暗号資産を保有している場合は事業所得に分類されますが、今回は「雑所得」に分類されるパターンを見てみましょう。雑所得の特徴は、以下4点です。

  • 総合課税
  • 累進課税
  • 損益通算の禁止
  • 損益の繰越控除の禁止

総合課税

他の所得と合算して計算する「総合課税」と、その所得だけ分離して計算する「分離課税」がありますが、暗号資産の利益は「総合課税」となります。同じ雑所得でもFX(外国為替証拠金取引)の場合は「分離課税」に該当するため、収入の種類に応じて所得計算の方法を確認することが大切です。なお、「総合課税」ではすべてを合算するわけではなく、個人の場合は山林所得、譲渡所得が除外されます。

累進課税

「累進課税」とは、収入額が高くなるほど税率も上がる制度です。所得が低いほど税率が高くなる「逆進課税」は存在しないため、消費税に代表されるような、課税額に関係なく税率が同じ「比例課税」が対となる制度といえます。所得税には最大45%の税率が設けられています。住民税の10%を含めると最大55%の税金が課されることになります。

<所得税の税率>
課税される所得額 税率 控除額
195万円未満 5% なし
195万円以上330万円未満 10% 9万7,500円
330万円以上695万円未満 20% 45万7,500円
695万円以上900万円未満 23% 63万6,000円
900万円以上1,800万円未満 33% 153万6,000円
1,800万円以上4,000万円未満 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」

損益通算の禁止

「損益通算」とは、一定期間内であれば利益と損失を相殺できる制度です。例えば、不動産や株式の運用では、不動産で利益が出ても株式で損失が出た場合、不動産で得た利益と株式で出た損失を合わせて所得を減らし、税金を減らすことができます。これを「損益通算」と言います。しかし、雑所得は他の所得と損益通算が認められていないのです。そのため、たとえ仮想通貨で損失が出ていても給与所得や配当所得と合算して相殺して課税所得を下げることはできません。

他の所得と損益の合算はできませんが、暗号資産同士であれば可能です。例えば、ビットコイン(BTC)で利益が出てイーサリアム(ETH)で損失が出た場合は、ビットコインの利益をイーサリアムの損失で相殺し、課税所得額を下げることは問題ありません。

損失の繰越控除の禁止

暗号資産の取引では「損失の繰越控除」も禁止されています。損失の繰越控除とは、1年間のうちに赤字が出た場合、3年間に渡って損失を繰り越せる制度です。不動産所得や事業所得などは損失の繰越が認められているため、もし翌年に黒字になった場合は、前年に繰り越した赤字と合わせて課税所得を減らすことができます。一方、雑所得では損失の繰越控除が認められていないため、翌年に黒字になっても前年の赤字を補填することはできません。

所得の計算方法

仮想通貨で得た雑所得は、1年分の合計を申告します。合計金額を計算する方法は「移動平均法」と「総平均法」の2種類です。「移動平均法」では、暗号資産を購入するたびに平均単価を出して計算します。一方、「総平均法」は1年間の購入総額と売却総額の差額から所得を計算します。暗号資産取引所から送られてくる「年間取引報告書」で所得計算をする場合は「総平均法」を用いるうえ計算も簡単なので、副業として暗号資産取引を行っている方は「総平均法」だけ覚えておくとよいでしょう。

暗号資産の「雑所得」の計算は、こちらの国税庁のホームページ「暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和3年6月)」に掲載されている「暗号資産の計算書」というExcelを使うと便利です。なお、計算したExcel表を確定申告に添付する必要はありません。

下記では、国税庁から発表されている「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」を参考に、所得計算の一例をご紹介します。なお、BTCは「ビットコイン」を、XRPは「リップル」を表しています。

暗号資産(仮想通貨)を売却した場合

  1. ①:4月2日に4BTCを400万円で購入した
  2. ②:4月20日に0.2BTCを21万円で売却した

このような条件で暗号資産を手放した場合、所得金額は1万円になります。保有する暗号資産を売却したときの所有金額は、基本的に「売却価格」と「購入価格」の差額です。

<計算式>
【売却額】-【譲渡原価(1BTCあたりの価格×売却した数量)】=所得金額
21万円-{(400万円÷4BTC)×0.2BTC}=1万円

暗号資産(仮想通貨)で商品を購入した場合

  1. ①:4月2日に、4BTCを400万円で購入した
  2. ②:10月5日に、0.3BTCで40万3,000円分の商品を決済した
  3. ③:②の交換レートは1BTC=135万円

このような条件で、暗号資産を決済の手段として用いたとき、所得金額は10万3,000円になります。商品を購入した場合は「暗号資産を譲渡した」として売却時と同じ扱いです。もし他の必要経費がある場合は、必要経費を差し引いた金額が「所得金額」になります。

<計算式>
【商品価格】-【譲渡原価(1BTCあたりの価格×支払った数量)】=所得金額
40万3,000円-{(400万円÷4BTC)×0.3BTC}=10万3,000円

暗号資産(仮想通貨)の交換を行った場合

  1. ①:4月2日に、4BTCを400万円で購入した
  2. ②:11月2日に、40XRPを購入するため、1BTCを支払った
  3. ③:②の交換レートは1XRP=3万円

上記のようにXRP(リップル)をBTC(ビットコイン)で購入するなど、暗号資産の交換を行うケースもあります。この場合、所得金額は20万円です。XRPを手持ちのBTCで「購入」した形になるため、XRPの購入価格から1BTC分の「譲渡原価」を差し引くという処理を行います。

<計算式>
【XRPの購入価格】-【譲渡原価(1BTCあたりの価格×支払った数量)】=所得金額
(3万円×40XRP)-{(400万円÷4BTC)×1BTC}=20万円

確定申告の流れ

国税庁が発表している「スマホで確定申告(暗号資産編)」を参考に、暗号資産の確定申告を行う流れを解説します。確定申告は、以下4ステップに分けられます。

<確定申告の流れ>
ステップ 内容
STEP ① 「年間取引報告書」を受け取る 暗号資産の特別口座を開設している場合、1月1日から12月31日までの取引状況を記載した「年間取引報告書」が暗号資産の取引所から交付されます。こちらを使うと「総平均法」による雑所得の計算が簡単にできますので、なくさないように取っておきしょう。
STEP ② 「暗号資産の計算書」を作成 年間取引報告書の交付を受けたら、国税庁のホームページから「暗号資産の計算書(総平均法)」を ダウンロードし、所得計算を行います。
なお、「年間取引報告書」を使う場合、移動平均法による所得計算はできないのでご注意ください。
STEP ③ 確定申告書を作成・提出 「暗号資産の計算書」で計算が済んだら、所得額を確定申告書に転記します。暗号資産の所得区分は「雑所得」になります。
なお、所得が2,000万円を超えており、財産価格が3億円以上または資産価額が1億円以上ある場合は「財産債務調書(ざいさんさいむちょうしょ)」という書類を併せて作成します。
確定申告書は、税務署に郵送あるいは電子申告(e-Tax)で提出します。e-Taxではスマホからの申告も可能です。
STEP ④ 納税 最後に、確定した税金を納付します。納付期限は確定申告提出期限と同じく翌年2月15日~3月15日に設定されるケースが多いですが、当日が土日祝日だった場合には変わることもありますので、早めに納付しましょう。
金融機関や税務署の窓口で現金による納付ができるほか、QRコードを発行してコンビニエンスストアで納付できます。また、e-Taxを使えばインターネット上で納付することも可能です。

暗号資産(仮想通貨)の確定申告は忘れなく

暗号資産は「雑所得」に分類され、所得が20万円を超えると確定申告が必要になるケースもあります。所得の計算については、前述の国税庁から共有されている「暗号資産の計算書」を使ってきちんと確定申告を行いましょう。

納税は国民の義務ですが、暗号資産の税逃れは問題視されており、税務署が注力している分野の1つです。国税庁は定期的に無申告の重点調査を行っていますし、税務署は暗号資産の取引記録を閲覧する術を持っているため、「個人でそこまで稼いでないからバレないだろう」と思って申告を怠るのは禁物です。利益がさほど出ていない個人の税務調査を担う機関も存在するため、利益の大きさを問わず税務署からの指摘を受ける可能性があります。

無申告を続けると高額な追徴課税を納付しなければならなくなるばかりか、裁判で有罪判決を下された事例も存在するのです。暗号資産の所得計算は複雑で、株式などにかかる「配当所得」と扱いが異なるため、はじめて確定申告を行う方にとっては難しいと感じるかもしれません。確定申告でミスが不安な方は、税理士に確定申告だけをスポットで依頼する方法もありますので、お近くの税務署か税理士事務所にご相談ください。

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