iyomemo(いよめも)
見つかる、つながる。伊予銀行のWebメディア

制度改正でiDeCoはどうなる?
3つの変更ポイントを知って長い老後に備えよう

2022/03/15

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、2017年(平成29年)から20歳以上のほとんどの人が加入できるようになりました。2022年(令和4年)には利用できる人や加入期間が拡大し、さらに利用しやすい制度になります。この記事では、iDeCoの3つの制度改正を解説します。

iDeCoのメリット

iDeCoのメリット

iDeCoは、公的年金の上乗せのための制度です。老後資金作りに特化した、特有のメリットがあります。

資産形成に適した仕組み

iDeCoは制度そのものが、まとまった老後資金を安定的に形成するための仕組みになっています。リスクを減らして安定的に運用する方法として、「長期投資」「積立投資」「分散投資」があります。iDeCoの運用は、「長期にわたって毎月一定の掛金で、さまざまな商品で運用する」ものです。加入者は特に意識しなくても、長期・積立・分散ができてしまうというわけです。

3つの税制優遇

iDeCoでは、加入者の自助努力をサポートするために、次のような税制優遇があります。

1.掛金が全額所得控除の対象になる
2.運用中の利益は非課税
3.受け取り時も所得控除の対象になる

特に1の掛金が全額所得控除の対象になる点は、iDeCoの強みです。ただし、手厚い税制優遇がある反面、原則として60歳まで引き出せないことに注意が必要です。

iDeCoの改正はいつから?スケジュールを確認

iDeCoの改正はいつから?スケジュールを確認

iDeCoの改正は3点ありますが、一斉には行われません。各改正の施行スケジュールは、以下のように予定されています。

受給開始年齢の延長 2022年(令和4年)4月1日
iDeCoに加入できる年齢の拡大 2022年(令和4年)5月1日
企業型確定拠出年金とiDeCoの併用の条件緩和 2022年(令和4年)10月1日

iDeCoの3つの改正ポイント

iDeCoの3つの改正ポイント

2022年(令和4年)に施行されるiDeCoの3つの改正について、個別に解説していきます。

【改正点1】加入できる年齢の拡大

  20歳以上60歳未満 60歳以上65歳未満
第1号被保険者・第3号被保険者 加入可 国民年金に任意加入すれば加入可
第2号被保険者 加入可 加入可
海外居住者 国民年金に任意加入すれば加入可 国民年金に任意加入すれば加入可

今まではiDeCoに加入できる年齢は20歳以上60歳未満でしたが、2022年(令和4年)5月1日からは原則65歳未満になります。ただし、加入期間の延長ができるのは、国民年金の任意加入者もしくは会社員・公務員などの第2号被保険者です。また、これまで加入できなかった海外居住者も、国民年金に任意加入すればiDeCoに加入できます。

第1号被保険者・第3号被保険者は国民年金の任意加入が必要

個人事業主・フリーランスなどの第1号被保険者は、国民年金に任意加入しなければ60歳以降iDeCoに加入できません。専業主婦(夫)などの第3号被保険者も同様です。また、iDeCoの老齢給付金を受給し始めた人、公的年金を65歳以前に繰上げ受給した人も対象外となります。

定年延長の会社員にメリット

改正の恩恵を受けるのは、主に会社員といえます。定年延長で60代前半でも働く会社員は、iDeCo加入で掛金の所得控除を受けながら老後資金を増やせるからです。また、iDeCoを60歳で受け取るには、通算加入者等期間が10年以上必要です。そのため、50歳以降で新規加入すると、受け取りまで掛金拠出のない据え置き期間が発生します。この改正では50代で加入した人でも、受給開始まで加入を継続して掛金を拠出できます。

【改正点2】企業型確定拠出年金とiDeCoの併用の条件緩和

今回の改正で、企業型DC(確定拠出年金)の加入者へのiDeCoの加入要件が緩和されます。現在も、ルール上は企業型DCの加入者でもiDeCoに加入できます。しかし、事業主掛金の上限引き下げの労使合意や規約の変更が必要でした。そのため、実際には企業型DC加入者で、iDeCoにも加入できる人はほとんどいなかったのです。2022年(令和4年)10月1日からは、本人の意思だけでiDeCoに加入できるようになります。

企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の拠出限度額

企業型DCとiDeCoを併用する場合、掛金の上限があります。掛金上限は、事業所の企業年金が企業型DCのみか、確定給付型企業年金などほかの制度を併用しているかで異なります。

  企業型DCのみ 企業型DCとほかの制度の併用
企業型DCの事業主掛金上限 月額5万5,000円 月額2万7,500円
iDeCoの掛金上限 月額5万5,000円-毎月の企業型DCの事業主掛金額
(月額2万円が上限)
月額2万7,500円-毎月の企業型DCの事業主掛金額
(月額1万2,000円が上限)

企業型DCのみとの併用で、企業型DCの事業主掛金が3万円であれば、iDeCoは2万円までとなります。事業主掛金が4万円であれば、iDeCoは1万5,000円までです。

マッチング拠出とiDeCo併用はどちらかを選択

企業型DCのマッチング拠出ができる事業所の場合、加入者はマッチング拠出とiDeCoのどちらかを選択しなくてはなりません。マッチング拠出とは、事業主が拠出する掛金に加えて加入者が上乗せして拠出できる制度です。マッチング拠出とiDeCoでは掛金上限が異なり、どちらが有利になるかはケースバイケースです。以下、企業型DC加入者のマッチング拠出とiDeCo併用を比較しました。

  マッチング拠出 企業型DCとiDeCo併用
掛金上限
※企業型DCの事業主掛金上限、iDeCoの掛金上限は上表参照
以下のいずれも満たす金額
・事業主掛金額以下
・事業主掛金とマッチング拠出の掛金合計が企業型DCの事業主掛金上限以下
以下のいずれも満たす金額
・iDeCoの掛金上限以下
・事業主掛金とiDeCoの掛金合計が企業型DCの事業主掛金上限以下
運営管理手数料等の費用負担 事業主負担 加入者負担
口座の管理 企業型DCだけを管理 企業型DCとiDeCoを別々に管理

企業型DCのみの事業主掛金が毎月1万円の場合、マッチング拠出は1万円まで、iDeCoは2万円までとなります。事業主掛金が3万円であれば、マッチング拠出は2万5,000円まで、iDeCoは2万円までです。

【改正点3】受給開始年齢の延長

60歳から70歳までだったiDeCoの受給開始年齢が、2022年(令和4年)4月から75歳までに延長されます。

受給開始時期の選択肢を拡大

この改正は公的年金の繰下げ受給が75歳まで延長となるため、それに合わせて延長されることになりました。据え置き期間中も非課税の運用は続けられるので、運用次第では年金資産を増やせる可能性があります。また、公的年金とiDeCoの受給開始時期の選択肢が増えると、老後の資金計画が柔軟に立てられます。

まとめ

今回のiDeCoの改正は定年延長や公的年金の受給開始年齢など、社会的な環境の変化に合わせた内容となっています。加入できなかった人が加入できたり、加入期間が延長されて老後資金の積み増しが可能になったりと、有益な改正といえるでしょう。まだ加入していない人や今まで加入できなかった人は、この機会にiDeCoを始めてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

著者 松田 聡子

群馬FP事務所代表、CFP®、証券外務員二種、DCアドバイザー

国内生保に法人コンサルティング営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには確定拠出年金の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAでの資産運用や確定拠出年金を有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングを行っている。

関連リンク

この記事が気にいったら
シェアしよう

iyomemo

合わせてよく読まれている記事

RECOMMENDATION

RANKING

TAG LIST

    • Digital-Human-Digital
    • 地元愛
    • LIFE PALETTE
    • IYOCA