【中級者向け】外貨で資産を増やす
始める前におさらいしよう

将来に向けた資産形成の手段として人気の高い外貨預金。「日本円預金よりも金利が高い」という点が注目されているものの、その仕組みを十分に理解できていない人も少なくありません。そこでこの記事では、外貨預金の特徴やメリット・注意点などを解説します。外貨預金の仕組みをしっかりと理解し、上手に活用していきましょう。
そもそも外貨預金ってなんだっけ?

外貨預金は日本円預金とは異なった特徴を持つ預金です。大きな違いには「金利」と「為替」が挙げられます。この2つを十分に理解して、外貨預金の効果を上手く引き出しましょう。ここでは、外貨預金の仕組みと特徴について解説します。
外貨預金とは
外国の通貨で預金することです。代表的な通貨にはアメリカの米ドル、ヨーロッパのユーロ、オーストラリアの豪ドルなどが挙げられます。
両替した外貨を預金口座に預け入れて一定期間運用したのち、再び日本円に両替して引き出す形が一般的です。
日本円よりも高い「金利」が魅力
外貨が注目されているのは日本円よりも金利が高く、増える効果があると見込まれているからです。
各国の通貨によって金利は異なるものの、外貨預金は日本円の金利水準よりも高い場合が多い点が魅力といえます。
「為替」の変動に注意が必
外貨預金において特に注意すべき点は為替の変動です。為替とは、異なる国同士の通貨を交換することです。テレビのニュース番組で流れる円高・円安という話題は、為替レートの変動を表しています。為替レート(為替相場)とは交換比率のことを指します。
また、日本円の価値が外貨よりも高くなることを円高、安くなることを円安といいます。
外貨預金で積み立てた資産を日本円に戻す際に、当初の為替レートよりも円高なら両替後の預金額は減少し、円安なら増加します。
為替レートの変動は様々な要因で決まる
ここでは、為替レートに変動を及ぼす3つの要因を解説します。
貿易収支
輸出と輸入のバランスで日本の貿易収支が黒字になれば、日本円の需要が高まり円高になる傾向があります。
景気
国内の景気が良くなると日本企業の株価が上昇し、海外の投資家が日本企業へ投資するため円高になる傾向があります。
金利
日本よりも外国の金利が高くなると日本円の魅力が低下し、金融資産が外国にシフトするため円安になる傾向があります。
外貨預金リスクとメリット・デメリットのおさらい

大切な資産を守るためにも、外貨預金のメリット・デメリットをしっかりと把握しておきましょう。
外貨預金の3つのメリット
外貨預金のメリットは以下の3つです。
メリット①:円預金よりも金利が高い
各国の通貨によって異なりますが、外貨預金は日本円預金よりも金利が高い傾向があります。そのため、資産形成の効果をより高めることが可能です。
株式の配当等とは異なり、金利収入は確実に受け取ることができます。将来受け取れる資産を外貨ベースで把握できるため、目標をもって続けられるのです。
金融機関によっては、定期的に金利優遇キャンペーンなどを行っています。対象期間に預け入れることで、さらに高い金利収入を目指せます。
メリット②:為替差益によって資産が増える可能性がある
為替の変動はリスクでもあります。しかし、預け入れた時点よりも円安に推移していれば、外貨を日本円に交換したときの資産を増やせます。外貨を日本円に戻すタイミングは自由です。円高であればそのまま据え置き、円安になったタイミングで両替するなど、為替リスクは個人でコントロールできます。
メリット③:通貨分散によって資産を守れる
為替レートはさまざまな要因で変動しますが、保有している資産を複数の通貨に分けることで、為替変動のリスクを分散できます。
日本円しか保有していない場合に、日本の景気が悪化し円安に移行すれば、物価が上がり生活に大きなダメージを与えてしまいます。外貨を保有していれば、円安によって外貨の価値が上がり資産を守れるのです。
外貨預金の3つのデメリット
メリットがある反面、注意すべきデメリットもあります。
デメリット①:為替レートの変動によって資産が減る可能性がある
外貨預金の最大のリスクは、為替が変動して資産が減少することです。預け入れ時よりも円高に推移していれば、日本円に交換したときの資産は目減りする可能性があります。
為替レートが円高・円安のどちらに推移するかは誰にも読めません。こうした不確実性が、外貨預金のリスクです。
デメリット②:為替手数料のコストがかかる
日本円を外貨に、または外貨を日本円に両替する際は、それぞれ為替手数料が必要です。日本円預金とは違い、こうしたコストが必要になってしまう点も外貨預金のデメリットです。
為替手数料は通貨の種類だけでなく、金融機関によっても異なります。そのため、為替手数料が安い金融機関を選択することも大切なポイントです。
デメリット③:預金保険制度(ペイオフ制度)の対象外
預金保険制度(ペイオフ制度)とは、金融機関が破綻した場合、元本1,000万円とその利息が保護される制度です。外貨預金はこの制度の対象外であるため、まとまった外貨資産を1つの金融機関に偏って預け入れるのはリスクが大きいといえます。リスクを減らすためにも安全性の高い、信頼をおける複数の金融機関に外貨資産を分けておきましょう。
コロナが落ち着いたら海外旅行に行きたい!

外貨預金が役立つのは、将来に向けた資産形成の目的だけではありません。外貨を持っておけば、海外に渡航した場合に大いに役立ちます。
海外旅行に行きたいと考えている人や、海外留学を検討している人は、早めに外貨預金の準備をしておくのがおすすめです。
両替手数料を節約できる
海外に行く際は、日本円をその国の通貨に両替する必要があります。また帰国した際には、その国の通貨を日本円に両替するでしょう。
海外旅行のたびに両替を行っていると、その都度手数料を支払うことになります。資産として外貨を保有しておけば、毎回両替を行う必要がありません。保有している外貨預金で、買い物や旅行を楽しめるのです。
グローバル化の流れにより、海外留学希望者は増加傾向
日本経済の活力増進のため、世界規模で活躍できる人材の育成が課題となっています。国の政策では、文部科学省によって「長期海外留学支援」の政策が進められています。
自分の子どもが海外留学を希望した場合、学費の支払いに加えて、海外での生活資金も必要です。将来の子どものためにも、早いうちから外貨で準備しておくことが得策といえます。
実際いくら増えるの?

最後に、外貨預金によって実際にどれくらいの資産が増えるのかを解説します。
外貨預金には「金利」と「為替」が影響し、為替手数料などのコストも必要です。また、増えたお金には税金もかかります。
こうした点も視野に入れながら、自分に合った資産形成を検討しましょう。
外貨預金利回りシミュレーション
●外貨の種類:米ドル
●預け入れ円貨額:100万円
●預入日の為替相場(TTM):110円
●預入時の適用相場(TTS):TTM+50銭
●支払時の適用相場(TTB):TTM-50銭
●換算外貨額:9,049.78ドル
●預け入れ期間:1年間(365日)
●税率:20.315%
外貨預金金利(%) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
1.5 | 2.0 | 2.5 | |||||
税引き後 受取円貨額(円) |
実質 利回り (%) |
税引き後 受取円貨額(円) |
実質 利回り (%) |
税引き後 受取円貨額(円) |
実質 利回り (%) |
||
満期日の 為替相場 (TTM) |
105円 (-5円) |
957,005 | -4.30% | 960,774 | -3.92% | 964,541 | -3.55% |
110円 (0円) |
1,002,795 | 0.28% | 1,006,744 | 0.67% | 1,010,691 | 1.07% | |
115円 (+5円) |
1,048,585 | 4.86% | 1,052,714 | 5.27% | 1,056,841 | 5.68% |
外貨預金で100万円を1年間運用した場合金利が2.0%、為替レートが同じなら、日本円で6,744円の利益を出せます。
金利が高ければ、それだけ得られる利益が大きくなります。また、満期日の為替相場に応じて、日本円で受け取れる利益額が大幅に変わる点にも注意しましょう。
まとめ
外貨預金は日本円よりも高い金利で資産運用ができる反面、為替変動のリスクにも十分な注意が必要な資産形成手段です。ただし、上手に活用すれば将来に向けた資産準備や、海外旅行などの資金準備も効率的に進められます。

大手小売業の経営コンサルティングを経て、ファイナンシャルプランナーへ転身。 年間200組以上を担当し、家計や保険、住宅ローン、相続や資産運用など、顧客の資産を最善化するカウンセリングを行っている。